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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編

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22 掃除と巡回

 リーナは五時半に起きた。


 今日から新しい仕事が始まる。


 まずは身支度を済ませて六時から六時半まで朝食。


 朝の食堂は非常に混んでいるがゆっくりする者はいない。できるだけ早く食べて席を空けるため、回転が速い。


 だが、席が空く間に立ったまま食べてしまう者もいる。


 リーナもその一人だった。


 朝食後はすぐに巡回の仕事に向かった。


 巡回は一番の化粧室から順番から。侍女の休憩室の隣だけに場所がわかりやすかった。


 朝一であるにも関わらず、化粧室はすでに使用された形跡があり、トイレットペーパーもかなり減っている。評価は一。


 この時間は清掃部に誰もいない。報告できない。そもそもバインダーもない。


 掃除部に報告するとしても、通常勤務が始まったばかり。


 掃除しているわけがない。これからするはずだ。


 急いで報告する必要はないとリーナは思った。


 そして、昨日買ったばかりの時計を見る。


「借金が増えそう……」


 リーナが呟いたのは時刻ではなく本心。


 購買部で最も安いものにしたが、リーナにとっては高級品だ。


 本当にこれが最安なのか確認したが、そもそも時計を買うのは高給取りの侍女で召使いは買わないと言われてしまった。


 リーナもそうだろうと思ったが、買わないわけにはいかない。


 仕事で必要だ。上司に買うように指示されてしまった。


 ペンも女性用らしい色で装飾がある。可愛い。良い品なのだろうと思う。


 だが、見た目はどうでもいいため、とにかく安いものが欲しいというのが本音だ。


「仕事に集中しないと!」 


 リーナは二番目の化粧室に向かった。


 ここは固定値、簡単だ。


 三番目は一番と同じような状態。評価は一。


 これから掃除されるので報告は後回し。


 四番、五番と順番に確認していく。


 確認して記入するだけ。固定値を記入すればいい場所もある。


 思っていたよりも簡単だとリーナは感じてホッとした。


 ある程度終えたところでリーナは時計を見た。


 月給で約二カ月分だと思うと、ため息が自然と出てしまう。


 それより時間……。


 もうすぐ七時。


 七時から八時は緑の控えの間が掃除されるため、リーナも緑の控えの間に行かなければならない。


 ここは元々早朝に掃除していた場所で、掃除の必要があまりない。


 さっさと掃除を終わらせて巡回に戻ろうとリーナは思った。


「おはようございます」


 リーナはしっかり頭を下げ、緑の控えの間を掃除している者達に挨拶をした。


「これから同じ時間にトイレ掃除をすることになりました。よろしくお願いします」

「さっさと仕事をしなさい」


 そう言ったのは監督する侍女だった。


 リーナはもう一度深々と礼をすると、トイレ掃除に向かった。


 予想通りほとんど汚れていないため、乾拭きだけすることにした。


 乾拭きをしているとドアが開き、控えの間を掃除している者達がバケツを持って入って来た。その者達は手洗い場でバケツに水を汲んだ。


 それを見たリーナは嫌な予感がしたものの、取りあえずは掃除を済ませ、備品を確認することにした。


 トイレは使われていないため、確認するのも非常に楽だ。内容を覚えやすくもある。


 一応はメモ用紙もあるが、これは買ったものではない。


 時計を買った際、その箱を包んでいた包装紙を適度な大きさに切り分け、手作りのメモ用紙にした。


 少しでも倹約したかったため、メモ帳は買わないことにしたのだ。


 トイレ掃除はすぐに終わった。しかし、控えの間の掃除はまだ終わっていない。


 リーナの視線は部屋の端に置かれたバケツに向けられた。


 雑巾を濡らしたり洗ったりするため、バケツの水は汚れていた。


 どう考えても、あの汚い水はトイレの手洗い場に流される気がした。

 

 リーナは監督役の侍女に声をかけた。


「あの、お伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

「何?」

「控えの間の掃除で汚れた水はどこに捨てているのでしょうか?」

「隣に決まっているじゃないの」


 やっぱりとリーナは思った。


 バケツの水を流されたせいで汚れてしまわないか心配だったが、掃除が終わるまで待っている時間が惜しい。


 いつも早朝に行った際、手洗い場が汚れているようには見えなかったのもあり、巡回に行くことにした。


「トイレ掃除は終わりました。別の仕事に行こうと思うのですが、よろしいでしょうか?」

「隣の掃除は私の監督範囲ではないの。許可を求める必要はないわ。貴方の上司に聞きなさい」

「わかりました。では、失礼致します」


 リーナは深々と一礼した後に部屋を出た。


 早朝の時は誰にも会わなかったが、部屋と同じ時間に掃除をすると必然的に他の者に会うことになる。


 リーナは非常に緊張した。


 バケツの水も気になってしまうが、別の場所に捨てて欲しいとは言えなかった。


 時計を見る度ため息が出る。


 借金ということが頭の中に浮かんでしまう。


 なんとか気持ちを切り替えて、リーナは予定を思い出した。


 九時までは巡回の続きだが、その後は新規に追加された場所の掃除がある。時間がかかりそうだった。


 掃除が終わった後は巡回の続き。清掃部に行って巡回用の書類を貰う必要もある。


 早くいかないと昼食の時間になってしまい、また誰もいないかもしれない。


 昼食前に必ず巡回書類を貰おうとリーナは思った。





 赤の控えの間のトイレ掃除は、かなりの時間がかかった。


 わかりにくい場所が酷く汚れていた。


 そこで薬品湿布をした後、その個室には使用禁止の札を出した。


 後宮の規則では緊急時以外に走るのは禁止されているが、急ぎ足は問題ない。


 リーナは懸命に早歩きをして金の控えの間に向かったが、完全に遅刻だった。


 金の控えの間のトイレも赤の控えの間のトイレと同じ状況だった。


 掃除をすると間違いなく昼食時間になってしまう。


 巡回書類を貰うことができない。


 リーナは薬品湿布の処置をした後、全ての個室に使用禁止の札を出した。


 そして、昼食時間よりも前に巡回書類を貰うべく清掃部に急いだ。



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