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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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218 湖(二)


「ネース湖は真上から見ると、小さな楕円と大きな楕円がつながっている形です」


 ウェイゼリック城は大きな楕円の方にあり、水深が深いためにゴンドラなどの大きな舟で遊覧するのを楽しめる。


 一方、小さな楕円の方には別邸がある。水深が浅く、水泳や小さなボート遊びを楽しめるできるようになっている。


 この二つの楕円をつなぐのは一部だけで、多くの木が茂っている。


 周囲の目を気にせず楽しめるようにするため、ウェイゼリック城から別邸は見えず、別邸からもウェイゼリック城が見えないようになっていることが説明された。


「午後のお茶会は湖の側にある別邸の方で行います」

「ウェイゼリック城からは見えないということでしたが、このまま船で移動すれば見えるのでは?」


 エゼルバードが質問した。


「別邸の方へ向かうと水深が浅くなります。この船で向かうと座礁してしまいますので無理です」

「別邸の方からであれば、こちらに来ることができるわけですね?」

「別邸の手漕ぎボートでこちらに来るのは禁止されています」


 小さなボートで水深のある方へ行くのは危険で、強い風に煽られると転覆してしまう恐れがある。


 安全に湖遊びを楽しむためのルールがあることをフェリックスが話した。


「リーナは幼い頃に湖でボート遊びをしたそうですね。このような大きな湖だったのですか? それとも小さな湖だったのですか?」


 エゼルバードは話題を変えるため、リーナに話しかけた。


「こちらの湖はかなり広いように感じます。私が遊んだ湖はもっと狭くて小さかったような気がします」

「どのようなボートに乗って遊んだのですか?」

「三人ぐらいしか乗れない小さなボートです。岸からあまり離れないようにという制限がありました」


 最初は男性の使用人と乳母と乗っていたが、どうしてももっと遠くまで行きたいと母親に頼み込み、男性の使用人二人と一緒にボートに乗ったこともあった。


「湖は曲がっていたので、その先に何があるのかわからなくて……想像をして楽しんでいました」

「そうでしたか」

「ゆっくりと旋回しながら城の方へ向かいます。小さな楕円の方の景色は午後に楽しめますので、大きな楕円の方の景色を楽しんでください」


 大きな船はゆるやかに旋回し始めた。


 リーナの視線は湖の奥の方へ向けられたまま。


 子どもの頃、曲がった湖の先になるのかが気になってしかたがなかった。


 今も同じ。奥を曲がった先がどうなっているのかが気になっていた。


 あの頃に戻りたい……。


 リーナは両親と暮らしていた頃を思い出した。


 だが、戻れない。自分が誰なのかもわからない。


 湖の上に広がる冷たい空気で、リーナは心も体も冷えてしまいそうだと思った。


「寒いのですか?」

「少し。もっと厚い上着を持ってくればよかったです。申し訳ありません」

「湖遊びをするには時期が早いですからね。体が冷え切る前に戻りましょう」


 震えるリーナを気遣うように、エゼルバードがそう言った。


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