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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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214/1360

214 目が覚めて



 リーナは目が覚めた。


 ここは……?


 天蓋付きのベッド。だからこそ、自分に割り当てられた客間ではないことがすぐにわかった。


 顔を横に向けると、クオンの姿が目に映った。


 腕を組み、目をつぶっている。


 座ったまま寝ているようだった。


 側にいてくれた……。


 リーナの心の中に安心感が広がった。


 嬉しくもあり、幸せでもある。


 日々多忙なエルグラード王太子の姿を見ることができるのは、侍女でしかないリーナにとって貴重で特別なことだった。


「クオン様」


 このままでいたい気持ちを抑え、リーナはクオンに声をかけた。


「起きたのか」


 すぐにクオンが反応した。


「うたた寝でしょうか? きちんと体を休めないと風邪をひいてしまいます」

「執務をしながら眠ってしまうこともある。気にするな」


 クオンは優しい口調で答えた。


「それに、私のベッドはリーナが使っている」

「申し訳ありません!」


 リーナはすぐに上半身を起こした。


「大丈夫だ。起きなくていい」


 クオンは慌ててベッドから出ようとするリーナを止めた。


「話がある。そのままで聞いてくれるか?」


 リーナは上半身を起こしたままクオンをじっと見つめた。


「疲れたはずだ。少しは休めたか?」


 リーナは頷いた。


「みっともない姿を見せてしまい申し訳ありませんでした」

「謝る必要はない。強いショックを受けたことは明らかだった。別邸を見れば、インヴァネス大公の娘だと証明できると思っていたはずだ」


 リーナはうつむいた。


「そうです」

「私も同じだ。期待していた」

「申し訳ありません」

「謝る必要はないと言っただろう?」


 クオンは椅子から立ち上がると、ベッドのへりに腰かけた。


「人生は何が起きるかわからない。良いことも悪いこともある。全てを失ってしまったように感じても、私がいることを忘れるな。リーナに希望と生きる喜びを与える。そうであるために、私は努力するつもりだ」

「クオン様は優秀な王太子です。私のために努力する必要はない気がします」

「もう決めた。これからはリーナを守るための努力をしていく」

「ありがたいですけれど……大丈夫です。自分で頑張らないといけません。どんなにつらくても現実は受け止めないとですから」

「リーナは強い。残念だ」

「え?」


 リーナは驚いた。


「残念? 強いことはいいことですよね?」

「私のことを頼ってほしかった」

「頼っています。ベッドも使わせていただいています!」

「そのような意味ではない。私を直接頼ってほしい」

「そう言われても……どうすればいいですか?」

「どうするか教えてもいいか?」

「ぜひ教えてください!」

 

 次の瞬間、クオンの手が伸びてリーナを抱きしめた。


「私に寄りかかれ。支えている。大丈夫だ」


 温かい……。


 リーナはクオンのぬくもりによって癒されていくような気がした。


「クオン様は優しいです。私を励まそうとしてくれているのがわかります」

「悲しい時やつらい時には私を頼ってほしい。リーナを支える。安心させたい」

「とても嬉しいです。こうしていると安心します」

「私も同じだ。安心する」


 優しい時間が流れていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ]_・)部屋の外で、パスカル、悶えてたりして(笑)
[良い点] リーナちゃんの想い、クオン様の想い、お互いに言えて良かった〜。でもまだまだ序盤、1000話まで先は長いです。この先どういった展開になるのか気になるところです。
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