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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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213 期待(二)



「王の指示とは言え、調査の方法に問題があったことについては謝罪する。明日、調査の続きをしたい。他の別邸を確認してほしいのだが、どうだろうか?」


 クオンは考え込んだ。


「なぜ考える? 調査はまだ終わっていない。続けるのが当然だろう?」


 インヴァネス大公はなぜクオンがすぐに了承しないのかがわからなかった。


「リーナは強いショックを受けたばかりだ。休養させるのが優先だろう。明日、調査を再開するというのは早急過ぎるのではないか?」

「調査で私の娘だとわかれば、大きな喜びを感じる。精神的なショックからも回復する」

「別邸を見てやはり違うとなった場合はどうする? それこそ立ち直れなくなる可能性もあるのではないか?」

「大丈夫だ。リリーナは私の娘だ! 必ず証明できる!」

「これ以上リーナの心を傷つけるような調査はしたくない。明日も続きの調査を行うと説明するのは反対だ」


 インヴァネス大公はありえないと感じた。


「絶対に調査する! そのためであればどのような手も使う!」

「父上、落ち着いてください」


 ずっと黙っていたフェリックスが声をかけた。


「確かにショックはかなりのものでした。姉上であることを一刻も早く確認したい気持ちはわかりますが、状態が落ち着くまでは待つべきです。急いては事を仕損じます」

「インヴァネス大公領に滞在する日数は限られている。明後日にはユクロウの森を見に行った第三王子が戻る。明日しかない!」

「出発日をずらせばいいのでは?」

「王は必ず私の不手際だと文句をつける! フレディが先に戻って報告するに決まっている!」

「僕がフレディと交渉します。姉上のことに関しては、全力を尽くすつもりです」

「怪しい」


 インヴァネス大公は厳しい視線を息子に向けた。


「肖像画と違うと文句を言っていたではないか!」

「文句ではありません。事実です。画家の修正技術が高かっただけです。父上は姉上を愛するがゆえに少々偏見があるのです。僕のことは厳しく育てたというのに」

「跡継ぎを厳しく教育するのは当たり前だ。お前は常々自分を子どもとして扱うなと言っている。だったら余計だろう」

「都合よく子ども扱いにしたり、大人として扱ったりするのはずるいです!」


 クオンとパスカルはフェリックスに同情した。


 自分もまた跡継ぎとして厳しい教育を受けて来たからこそ、理解できることだった。


「インヴァネス大公、提案がある」

「調査の継続を認めないのであれば、何も受け入れられない」

「リーナの心に大きな負担をかけにくい内密の調査に変えることはできないか?」

「内密の調査?」

「食事会やお茶会として外に連れ出し、その会場を娘が住んでいた別邸にする。別邸に見覚えがあれば、リーナは反応するだろう。何も反応しなければリーナは別邸を知らない、別人だということだ。そのまま食事会やお茶会をして戻ってくればいい。どうだ?」

「さすがクルヴェリオン王太子です! そのような方法であれば、調査だというプレッシャーをかけずに調査ができます!」

「そうか。何も調査だと言って連れて行く必要はないわけか」


 インヴァネス大公も名案だと感じた。


「実際は内密の調査だ。条件を満たさなければならない。調査対象者、調査員五名、立会人三名がいなくてはいけない」

「わかっている。その全員を招待する食事会かお茶会にすればいいわけか」


 インヴァネス大公は考え込んだ。


「私的な茶会ということにする。そうすれば、私が勝手に招待者を選ぶだけでいい。湖の景色を見ることができる場所ということで別邸に連れて行けばいいだろう。どうだろうか?」

「それでいいが、リーナの状態による。その点に関しては理解してほしい」

「わかった。明日の朝に確認する」


 クオンはパスカルを見た。


「パスカル、何かあるか?」

「インヴァネス大公に対し、個人的に伝えたいことあります。お許しいただけますでしょうか?」

「構わない。お前にとってインヴァネス大公は母親の再婚相手だ。個人的に発言したいことがあっても当然だろう」

「インヴァネス大公殿下に申し上げます」


 パスカルはインヴァネス大公を真っすぐに見つめた。


「リーナはレーベルオード伯爵家の養女になりました。現在の名称はリーナ・リリーナ・レーベルオードです。素性調査の結果がどのようなものであっても、リーナは私の妹です。私は兄として責任を持ち、リーナを支えていきます。母にもそのことを伝えていただけないでしょうか?」

「わかった。妻にも話しておく」


 話し合いが終わった。


 寝室から出て来たインヴァネス大公妃は、クオンを見ると深々と一礼した。


「クルヴェリオン王太子、どうかリリーナをよろしくお願いいたします」


 深々と頭を下げたインヴァネス大公妃の姿には、母親としての深い愛情を感じさせるものがあった。


 クオンはエルグラードの王太子。


 インヴァネス大公妃に約束することはできない。


 だがしかし。


 私がリーナを守る。リリーナ・インヴァネスかどうかは関係ない。


 クオンの心は決まっていた。


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