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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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206 調査(一)



 リーナの素性調査が行われる日になった。


 まずは一室に関係者が集まり、顔合わせをする。


 事前にフレデリック王太子が言っていたように、リーナに同行できるのは立会人とその護衛の二名だけだった。


 クオンは抗議したが、秘匿性の高い調査のために人数を増やすことはできない。無理ならミレニアス王はどのような調査結果が出ても認めないということで、エルグラード側は了承するしかなかった。


 ミレニアス側は護衛の人数が少ないことからパスカルを立会人にすることを提案したが、インヴァネス大公妃はパスカルの母親で、完全な第三者とは言えない。


 予定通りクオンが立会人になり、その護衛としてクロイゼルとパスカルが同行することになった。


「それでは調査を始めます。今回の調査対象者名はリーナ・セオドアルイーズ。現在はレーベルオード伯爵家の養女になり、リーナ・レーベルオードと名乗っています」


 セオドアルイーズの家名は孤児院の職員がエルグラードの国民登録の手続きをするにあたって創作したもので、本人が記憶している家名ではない。


 本人は家名を教えられた記憶はない。


 両親や家庭教師などの使用人からはリリーナという名前を教えられ、呼ばれていたという証言内容が読み上げられた。


「この内容に相違ありませんか?」

「はい」


 リーナは緊張しながら答えた。


「本人の証言ではリリーナが本名とのことですが、現在の名前はリーナです。調査中の呼称はリーナを使用します。では、次に調査関係者についてです」


 ミレニアス王が選定した調査員は五名。


 基本的にはこの五名が調査を行う。


 また、調査員による調査が公平かつ適切かを監査するために立会人がつく。


 エルグラード側の立会人は王太子のクオン。


 ミレニアス王家の立会人はフレデリック、ウィリアム、ゼクスのいずれか。


 インヴァネス大公家の立会人はフェリックス。


「調査は必ず調査員と立会人の八名が揃っている時に行われます。揃っていない時は、どのような証言も証拠も無効です」


 立会人は護衛を二名同行させることができるが、護衛は調査に対する発言権を持たない。


 護衛がいないことで、証言や証拠が無効になることはない。


「次に調査の流れを説明します」


 午前中は質問書による回答調査、午後に本人の記憶照合による調査を行う。


 午前中の調査が終わった時点で、調査員は中間報告をまとめる。それに立会人も同席し、中間結果に不備や問題点がないかを確認する。


 午後の調査が終わった時点で調査員が今回の調査結果を出す。


 調査結果をミレニアス王に報告、ミレニアス王が最終判断をする。


 それによって、リーナがインヴァネス大公夫妻の娘かどうかが決まる。


「ここまでで何か問題等がある場合は手を挙げてください」


 クオンとフェリックスが手を挙げた。


「では、クルヴェリオン王太子殿下からどうぞ」

「配布された書類には立会人の役割が載っている。だが、監査としての権限がどこまであるのかが明確ではない。調査員が出した結果に対し、立会人が否定的な意見を出した場合、調査員は再度検討するのか?」

「勿論です」

「では、再度検討したものの、やはり結果が同じだった場合はどうなる?」

「どうなるというか……調査員の出した結果の通りです」

「それでは立会人がいくら意見を出しても、調査員が無視さえすれば、調査結果を自由にできてしまうのではないか?」

「調査員も立会人も複数名います。問題があれば全員で話し合いますが、調査を行うのはあくまでも調査員です。立会人は調査の方法についての監査であって、調査結果を変更する権限はありません。調査員は立会人の指摘に耳を傾け、調査員と立会人全員が納得する結果となるように努めます」


 立会人の承認がない結果だった場合は、ミレニアス王になぜ立会人が承認しなかったことも詳しく報告するということだった。


 ミレニアスの調査とはいえ、クオンとしては調査の前から不満を感じる説明だった。


「インヴァネス大公子殿下はどのようなことでしょうか?」

「同じような質問でした。結局、インヴァネス大公家の立会人の意見が尊重されにくいことがよくわかり、不満を感じずにはいられません」


 インヴァネス大公家の立会人を務めるフェリックスもかなりの不満を感じていた。


「今回の調査は今までとは違います。ミレニアス王に調査することを打診する前の調査においては、本物の可能性が極めて高いと判断されました。だからこそ、エルグラードからわざわざミレニアスに連れてきたのです。調査員はそのことをよくよく考え、公平かつ適切な調査を行うように。これは僕だけでなく父上の意向です」


 フェリックスは調査員達を冷たい表情で睨みつけた。


「ヴィレードル卿は何かありますでしょうか?」


 ゼクスはフレデリックから厳命を受けている。


 エゼルバードのためにできるだけの配慮を心掛けろという内容だった。


「調査対象の女性が調査を受ける際、調査の仕方などについてわからないことなどがあった場合はどうする? その都度聞くのか? 答えるのは調査員か? それとも立会人か?」

「質問があれば、こちらで受け付けます。但し、何でも答えるわけではありません。不当な発言や不適切な質問については応じることができません。内容によっては調査員で話し合います」

「わかった」

「では、これより調査を開始します」


 リーナの素性調査が始まった。


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