202 ウェイゼリック(一)
翌日。
クオンとエゼルバードは国境線があるユクロウの森に関する話し合いをインヴァネス大公とすることになった。
レイフィールは騎士団と国軍を引きつれ、朝早くからインヴァネス大公が手配した案内人や補給部隊を連れて現地の視察に向かっている。
セイフリードはインヴァネス大公領の領都ウェイゼリックを観光する予定で、第四王子付きの侍女リーナとメイベルもそれに同行した。
午前中は旧市街及び新市街の主要道路を基点とした観光場所を車窓見学。最高級ホテルのレストランで昼食を取った。
午後はウェイゼリック城に戻り、インヴァネス大公の配慮によって使用許可が出ている大図書室に向かった。
大図書室についたセイフリードは早速気になる本を探し、ソファに座って読書を始めた。
同行したリーナとメイベルは読書と着席の許可をもらったが、本心としては暇だった。
しばらくすると、セイフリードが視線を変えた。
「退屈しているな? なぜ、読書をしない?」
「ミレニアス語の本は読めません」
それがメイベルの理由。
「本を探しにいってもいいという許可をいただいてないので」
それがリーナの理由。
「大図書室を出なければいい。勝手に本を探しに行け。読みたい本がないなら、僕に聞こえないようにしゃべっていればいいだろう?」
「名案です!」
リーナはそれで解決だと思った。
「では、本を探しにいってきます」
「同じく」
リーナとメイベルは席を立つと、大図書室内を歩き回った。
大図書室という名称通りかなりの広さがあり、蔵書も多い。
しかし、そのほとんどはミレニアス語で古そうなものだった。
普段読むような本が集められているわけではなく、貴重な本や高価な本が多く集められている図書室であることが判明した。
「いくら許可が出てもこんな図書室じゃ、読みたい本なんか見つからないわ」
メイベルとリーナは大図書室の一角でおしゃべりをすることにした。
「むしろ、殿下はよくもまあすぐに読みたい本が見つかったわね」
セイフリードは読みたい本を次々と手に取り、リーナとメイベルに渡して運ばせた。
そのせいでテーブルの上には多くの本が積み上げられた状態になった。
「あんなに本を選んで、読み切れるのでしょうか?」
「わからないけど、夕食まではずっとここにいそうよね」
リーナとメイベルは同時にため息をついた。
「長そうです」
「長いわ。でも、おしゃべりをしているだけでいいから楽ではあるわね」
「そうですね。でも、このお部屋はちょっと……独特の匂いがしませんか?」
「埃臭い感じがするわね」
メイベルははっきりと言った。
「でも、本棚に埃が積もっていないわ。掃除はされているけれど、古い本が沢山あるせいよ。古い紙の匂いが埃臭い感じに似ている気がしてしまうのよ」
そうかもしれないとリーナは思った。
「これだけ蔵書があると、本を全て取り出して掃除することはないわ。長年放置されている奥の部分や見えにくいところに埃がたまっているのかもしれないわね。本棚の隙間とか」
「これだけ大きな本棚を動かして掃除するのは厳しいです。わずかな隙間に埃が溜まっている可能性はあります」
「意外と盲点なのが本棚の上なのよ。高いところは見えにくいし、掃除もしにくいから放置されていることがあるのよ」
召使いだった頃、クオンのおかげで掃除用具入れの棚の上を掃除していないことに気づいたことをリーナは思い出した。
「本棚の上は脚立がないと掃除しにくいので、しっかりと掃除していないかもしれませんね」
「セイフリード王子殿下は気にしなさそうね。埃臭さより読書でしょうから」
「そうですね」
「私は平気だけど、リーナがつらいようなら化粧室に行く?」
「でも、呼ばれるかもしれません」
「許可を取るわよ。読んだ本を片付ける作業を言いつけられる前に、化粧室に行っておきましょう」
「わかりました」
二人は一度セイフリードのところへ戻り、化粧室へ行くために大図書室から出る許可を願い出た。
「できるだけ早く戻れ。寄り道はするな」
「はい」
「わかりました」
廊下で待機しているミレニアスの世話役、第四王子騎士団の護衛騎士と共に、リーナとメイベルは大図書室に最も近い化粧室に向かった。





