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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編
199/1357

199 晩餐会

 


 インヴァネス大公家主催の歓迎晩餐会にはウェイゼリック城に宿泊するエルグラード一団の全員が招待された。


 しかし、ミレニアスは身分や階級差がある。


 王族とその側近、侍女、役職者の上位者は着席スタイル、下位者は別室での立食形式だった。


 リーナとメイベルは王族付きとはいえ侍女。


 本来であれば別室のはずだったが、二人は特別に同行を許されたエルグラード貴族の女性ということで、上位者による晩餐会に招待された。


「とても綺麗です」


 食事の前に集まる広間に来たエゼルバードは、先に来ていたリーナに声をかけた。


「大公家からのドレスがどのようなものか気になっていましたが、とても似合っています」

「お褒めに預かり光栄です。あまりにも素晴らしいドレスと宝飾品なのでとても緊張しています」

 

 インヴァネス大公家から贈られたのは水色のドレス。


 正式な晩餐会のため、ダイヤモンドとアクアマリンのパリュールも特別に貸し出されていた。


「大丈夫です。綺麗ですよ」

「ありがとうございます」

「水色が似合う」


 エゼルバードと一緒に来たレイフィールもリーナの姿に笑みを浮かべていた。


「私が贈った宝飾品があっただろう? まさにその色だ」


 レイフィールがさりげなく自分の贈った宝飾品の自慢をすると、エゼルバードが鼻で笑った。


「こういったものは全てにおいて合わせなければなりません」

「エゼルバードが贈ったのも一つだけだろう?」

「私の贈った宝飾品にはダイヤモンドがあしらわれています。色合いに気をつければ、ダイヤモンドの装飾品とも合わせることができるでしょう。ですが、レイフィールが贈ったのはアクアマリンだけではありませんか」

「誕生石にした。普段使いできるように配慮した」

「普段使いのサイズではありません」

「エゼルバードが贈ったものは石が小さい」

「上質だからです。普段使いにも、外出時にも、他の宝飾品と合わせれば夜会にも使えます」

「侍女だけに普段はつけない。外出することも夜会に出ることもない」

「これまではそうだったとしても、これからは違うかもしれません」


 エゼルバードとレイフィールは笑みを浮かべていたが、そのやり取りは挑発的だった。


 このままではよくないと感じたロジャーが間に入る。


 レイフィールの友人兼側近のローレンも加わり、二対二になった。


 男性たちの会話の外でリーナが立っていると、ミレニアス側の出席者が近づいてきた。


 それに気づいたエゼルバードはすぐに会話を中断してリーナの側へ移動した。


「インヴァネス大公妃付きの女官です」


 エゼルバードが牽制するように睨みつけると、すぐに女官の二人は深々と頭を下げた。


「ファーバウロ伯爵の娘アリアと申します。祖父は公爵。インヴァネス大公妃殿下の女官を務めておりますが、インヴァネス大公子殿下の婚約者候補でもあります」

「カリンゼル伯爵の娘シャーロットでございます。祖父は公爵。インヴァネス大公妃殿下の女官を務めており、インヴァネス大公子殿下の婚約者候補にも選ばれています」

「挨拶をする必要はありません」


 ミレニアスは身分と階級がものを言う世界。


 当主の爵位がいかに上位かが重要。侍女よりも女官の方が上。王族の婚約者候補に選ばれた者はそうでない者よりも上。


 そのようなミレニアスの常識に照らし合わせると、リーナの方が格下になってしまう。


 挨拶をすれば余計にそう思われるため、エゼルバードはあえて王族の意向として挨拶をさせないことにした。


「私たちはエルグラードから来た特別な外交団です。その証拠にインヴァネス大公は全員を賓客として歓迎の晩餐会に招待しました。リーナとメイベルについてはインヴァネス大公夫妻が特別な配慮をした賓客なのですから、名前や身分を知らないわけがありません。そうですね?」

「もちろんでございます。インヴァネス大公妃殿下からも十分に配慮するよう言われております」

「インヴァネス大公妃殿下の装飾品をつけていらっしゃる方です。配慮するのが当然のことかと」


 リーナに貸し出された宝飾品がインヴァネス大公妃のものであることがわかった。


「リーナはエルグラードにおいて名門と言われるレーベルオードの一員です。メイベルができるだけ対応しなさい。いいですね?」

「かしこまりました」


 ドアが開いた。


 部屋に入って来たのはフェリックスで、そのあとにセイフリードとパスカルがいた。


「リーナに無礼なことをしていないだろうな?」


 セイフリードはリーナの側にいる顔ぶれを見た途端、不機嫌な表情になった。


「アリア、シャーロット、もっと下がれ」

「かしこまりました」

「ただちに」


 アリアとシャーロットがしずしずとその場を離れると、フェリックス大公子はすぐにリーナの元に駆け寄った。


「今夜の晩餐会は序列順です。食事のあとは男性と女性に分かれて過ごします。母上はあまり体調が優れないので、女性用の部屋にはいきません。もしあの二人が無礼なことをした場合は僕に教えてください。個人的には一緒に過ごす必要はないと思うのですが、儀礼的な観点から見てそういうわけにもいきません。一時間ほどは過ごすことになります」

「リーナは無理に話す必要はありません。メイベルが一緒ですので、何かあれば対応するはずです。衣装のことでも話していればいいでしょう」

「はい」


 またドアが開く。


 インヴァネス大公夫妻、クオン、ヘンデルが姿を見せた。


「客人を歓迎する晩餐会を始める。扉を開け!」


 インヴァネス大公の命令により、晩餐会が催される大食堂への扉が開けられた。


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