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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編
194/1357

194 国境越え




 翌朝、国境の町アラベルクには多くの人々が集結していた。


 国境の門前にいるのはエルグラード王太子が率いるミレニアス訪問団の一行で、その数はおよそ二千。


 ミレニアスが外交団としての特例入国できる者の数を制限したため、選抜された者以外は後続の第三組と共に国内任務に当たることになった。


 使用する馬車や誰が乗車するかについては再編成が行われ、王族とその側近は一台の大型馬車にまとめられることになった。


 セイフリードが使用していた馬車は女性用に割り当てられ、リーナとメイベルが乗ることになった。




 リーナとメイベルは馬車に乗ったままエルグラードの検問を通って門を通り、すぐにまたミレニアスの門をくぐって検問を受け、ミレニアスに入国した。


「簡単だったわね」


 検問では検査官が名前と乗車人数を確認するだけだった。


「もうここはミレニアスなわけですよね?」

「そうね」

「門を通っただけで、ミレニアスの方は町がなかったですね」


 エルグラード側は町があり、その端に巨大な検問用の施設とその敷地があり、いかにも頑丈そうな石壁に挟まれた門をくぐると出国という扱い。


 しかし、すぐにまた大きな門があり、くぐるとミレニアス。


 やはり広い敷地の検問施設はあるが、町はない。その先は街道になっていた。


「場所によって国境がどうなっているのかは違うでしょうけれど、エルグラードの国境はどこもかなり厳重よ」


 主要街道は多くの物資を運ぶため、検問施設は巨大になっている。


 検問にかなりの時間がかかるのもあって、商人や旅人のための施設も充実しており、それが町のようになっている場合もある。


 アラベスクはまさにそのような町だった。


「ミレニアスの町って……あるんですよね?」

「門のすぐ側にはないけれど、このまま街道を進むとあるわ。そこがミレニアスで最も国境に近い町になるわね」


 今の時代は戦争が少なく安定した時代と言われているが、かつては違った。


 国境線を越えて隣国が進軍してくることもあるため、そうなれば国境線に近い町は一番に狙われ、大きな被害が出る。


 そのためにわざと国境線から離れた場所に町や検問所を作る場合もあることをメイベルは教えた。


「これは一般的な知識だから教えても大丈夫だと思うわ。というか、このまま進めば町に着くのはわかりきったことだしね?」

「大きな町なのでしょうか?」

「それほどでもないらしいわ」


 街道沿いの町は一日で移動する距離を考えた場所というのがほとんど。


 歩いて移動する者は少ないため、馬か馬車で一日かけて移動するような場所でないと町はない。


 町の大きさや栄えているかどうかは地域産業や多くの旅人が利用しているかどうかにかかっていた。


「国境の門からミレニアスの王都チューリフまで直行する街道はあんまりよくないらしいわ」

「よくない? 道がガタガタしているということですか?」

「さあね。とにかく、一番広くてしっかりとした街道はインヴァネス大公領の領都ウェイゼリックに続く街道らしいわ」


 エルグラードの国境に近いミレニアスで最も発達しているのがインヴァネス大公領。


 領内には二つの湖があり、ほとんどは森林地帯だと言われている。


 昔はよくある広いだけの田舎領だったが、前王の第三王子フェイリアルが成人してインヴァネス大公になり、自然の景観を活かした観光業を主要産業に変更した。


 それによってインヴァネス大公領は発展、ミレニアス屈指の裕福さと利便性を誇る大領地になった。


「あくまでも一般知識だけど、こんな感じね」

「ここはインヴァネス大公領なのですか?」

「まだよ。途中で街道が分岐するわ。キフェラ王女はチューリフへ向かう街道を進むけれど、私たちはインヴァネス大公の招待を受けているから、インヴァネス大公領へ向かうわ」


 リーナは緊張した。


「インヴァネス大公領に入ったら教えてください」

「標識があればわかるけれど、どうかしらね?」


 メイベルはミレニアスに来たことがない。


 夫からいろいろと教えてもらったが、ミレニアスのことよりも旅行中の注意の方が圧倒的に多かった。


「領都に着くまでは二日かかるらしいわ。今日は着かないわよ」

「そうでしたか」

「今夜は普通の町に宿泊するわ。国賓用の立派な宿泊施設はないんですって。第二王子殿下がうるさいかもしれないわね」

「そうかもしれません」


 二人は王族と側近の全員が乗っている馬車のことを思い浮かべた。


「第二王子殿下と第四王子殿下が一緒の馬車だなんて……大丈夫かしらね?」

「わかりません。でも、クオン様がいるのできっと大丈夫です」

「そうね。王太子殿下がいるものね!」

「はい!」


 二人は笑顔で頷き合った。


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