192 薬入れ
またしても改稿で少なくなりましたが、取りあえずはこのままで。
よろしくお願いいたします。
午後遅く、ホテルの一室でミレニアスに向けて出立するための会議が開かれた。
会議の終了後、クオンは視察に行った時に購入した薬入れを与えることを伝えた。
「しばし国を離れる。ゆえに、エルグラードをあらわすバラの模様にした」
自国と他国では勝手が違う。
不足や不満も必ずある。
エルグラードとしての威信を守ることは重要だが、友好を深め、話し合いでの問題解決をするために行くことを忘れてはいけない。
尊大な態度は控え、問題を起こさないようクオンは通達した。
「兄上、このピルケースは全員が同じものを与えられるのですか?」
エゼルバードはレイフィールがもらった薬入れを見ながら尋ねた。
「いくつか種類がある。これは兄弟で揃えた。私も同じ薬入れだ」
兄と揃いの品だとわかり、エゼルバードは嬉しくなった。
「そうですか。兄弟の証なのですね」
「セイフリード」
クオンはセイフリードに薬入れを渡すと、優しい眼差しで見つめた。
「食事に不安があるのはわかる。少しでも安心できるよう願いを込めた」
「ありがとうございます」
「大丈夫だ。私が守る」
「はい」
兄の優しく温かい気持ちは確かに弟に伝わっていた。





