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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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186 努力の真珠

 

 クオンは第一組と第二組に与える薬入れを購入した。


「このあとはどうする?」

「リーナに質問がある。宝飾品を持っているか?」


クオンはリーナに尋ねた。


「あります」

「これからミレニアスに行く。正装をする機会もあるはずだ。その時に合わせられるようなものか?」

「大丈夫です。パスカル様からいただきました」


 クオンの視線だけでなく、ヘンデル、クロイゼル、アンフェルの視線もパスカルに向けられた。


「後見人としての配慮です」


 パスカルは静かに答えた。


「アリシアも知っています」


 後宮での保護期間中、王族付きとして働くリーナの衣装はアリシアが用意した。


 しかし、宝飾品は必要不可欠とは言えない。日常品でもないために経費で購入することができなかった。


 それを知ったパスカルは、何らかの事情で宝飾品が必要になることを考え、後見人の証として宝飾品を贈ったことを説明した。


「いつ贈った?」

「誕生日に贈りました」

「何を贈った? パリュールか?」


 パスカルは困ったような表情を浮かべた。


「ちょっとしたものだよね?」


 パスカルを庇うようにヘンデルが口を挟んだ。


「イヤリングを贈りました」

「どのようなイヤリングだ? 立派なものか?」

「小粒のダイヤモンドがあしらわれたもので、シンプルなデザインです。台はプラチナにしました」

「ネックレスはないのか?」

「セイフリード王子殿下からいただきました」


 リーナが答えた。


「上司として贈るということで、私の方に相談がありました」


 すかさずパスカルが答えた。


「当時、リーナは宝飾品を持っていませんでした。王族付きとして必要になる場合があるかもしれないので、考慮したいということでした。私が誕生日にイヤリングを贈ることを知り、それに合うようなネックレスを用意するよう指示されました」

「そうだったのか」


 パスカルやセイフリードがリーナの装いについて考えていたことをクオンは知った。


「では、宝飾品を二つ持っているわけだな?」

「四つです」


 リーナが答えた。


「第二王子殿下と第三王子殿下からも誕生日プレゼントをいただきました」

「エゼルバードやレイフィールからも貰ったのか?」


 クオンは驚かずにはいられなかった。


「誕生日プレゼントとしていただきました。第二王子殿下は孤児院の再調査に対する気遣い、第三王子殿下は以前役立ったことへの褒美を含めてということでした」

「どのような品を贈られたのですか?」


 パスカルもエゼルバードやレイフィールから贈り物があったことを知らなかった。


「イヤリングとペンダントです。違う種類の宝石でした」


 弟たちがリーナに誕生日プレゼントを贈っていることを知り、クオンは不満を感じた。


 最も配慮しているのは自分のつもりだった。


 必要品は経費で買うよう指示している。しかし、その中に宝飾品は含まれていなかった。


 そのことを知った弟たちが配慮として宝飾品を贈ったのだとしても、クオンの中で納得できない何かがあった。


「リーナは第四王子付きだが、私が採用している。セイフリードが上司として贈り物をしたということであれば、最上位の上司として私も相応に配慮すべきだろう。ヘンデル、どう思う?」

「当然のことではないかと」


 素直に贈りたいといえばいいのに。でもまあ、王太子が女性用の宝飾品を買った、それを侍女に贈ったとわかると大変なことになっちゃうか……。


 ヘンデルはそう思いながら答えた。


「宝飾品店に行く」


 王太子一行はレールスで最も有名な宝飾品店へ向かった。


 最高級品の宝飾品をいくつもクオンは見るが、気に入らなかった。


「他の店に行く」


 別の有名な宝飾品店にもいったが、やはりクオンの気に入るものがなかった。


「自分の目に叶う品を贈りたいのはわかる。短時間でこの店はダメだと決断してくれるのも助かる。でも、ここは王都じゃない。どんな感じのものがいいわけ?」


 ヘンデルは目利きの良さがかえって仇になっていると思った。


「真珠がいい」


 螺鈿細工に魅かれたリーナのことを考え、クオンは真珠の宝飾品を贈ろうと考えていた。


「ああ、それですぐにダメ出しをしたのか」


 二件の宝飾品店は高価な宝石をふんだんに使った品が多くあったが、真珠の宝飾品だけは飾られていなかった。


「エルグラードは内陸の国だ。海産物を扱う店は限られている。だが、螺鈿細工の小物入れがあっただろう? 真珠もあるかもしれない」

「ちょっと待ってて。聞いてくる」


 ヘンデルはダメ出しした宝飾品店に入り、店員から真珠を扱う店の情報を仕入れた。


「真珠の専門店が一軒あるらしい。そのせいで、他の宝飾品店では真珠を扱っていないらしいよ」


 そして、三件目。


「これがいい」


 クオンは真珠のイヤリングとネックレスを選んだ。


 ほとんどがセット品になっていたが、クオンはダイヤモンドと真珠が使われているイヤリングが気に入り、ネックレスとは別々に購入することにした。


「誕生日プレゼントだ。受け取れ」

「ありがとうございます」


 リーナは二つの箱を受け取った。


「でも、よろしいのでしょうか? 二つもいただくなんて」


一緒に選んだのものあり、びっくりするほどの値段だったこともわかっている。


リーナは申し訳ない気持ちを感じていた。


「贈りたいから贈っただけだ。美しく装うのも勉強の一つだろう?」


 クオンは優しい眼差しでリーナを見つめた。


「真珠を一粒ずつ集めて連ねたネックレスにしたのは、努力を積み重ねるリーナをあらわすのにふさわしいからだ。必ず似合う」


 私の努力を真珠に見立ててくれた……。


 リーナはとても嬉しくなった。


「頑張ります。一つ一つの努力を重ねながら自分を磨いていきます!」

「リーナを応援している。そのことをあらわす贈り物でもある」

「幸せの贈り物ですね」


 リーナは幸せそうに笑顔を浮かべた。


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