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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第三章 ミレニアス編

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167 大会議(一)



 翌日の午前中。


 エルグラードとミレニアスによる会議が開かれた。


 まず、後宮にいるキフェラ王女の素行があまりにも悪いことが議題になり、話し合われた。


 その結果、キフェラ王女はミレニアスに一時帰国することが決まった。


 側妃候補を辞退するわけではなく、長年に渡り祖国に戻っていないことを考慮し、一時的に帰国して両親であるミレニアス王や側妃と話し合うことになった。


 次に、キフェラ王女に代わる相手としてインヴァネス大公女との縁談を内々に検討する議題が出たが、リーナの素性確認が最優先だと判断された。


 リーナがインヴァネス大公の娘であるかどうかをはっきりさせるための調査が行われることになり、リーナをミレニアスに派遣することになった。


 但し、現時点においてリーナはエルグラード国籍のエルグラード人。


 インヴァネス大公の娘だと判明しても、それだけでエルグラードの国民登録が無効になるわけではない。


 最終的な決定と正式な手続きが終了するまで、リーナの身柄の引き渡しには一切応じないことになった。


 そして、最も重要な国境付近の治安悪化と密入国者の取り締まりについての議題になった。


 ミレニアス王は両国の友好を不安視させる要因になるという理由から、エルグラードが国境付近に大軍を配置することに反発していた。


 だが、インヴァネス大公はエルグラード国内においてエルグラード軍が情勢に応じた治安維持活動を行うのは当然だと理解を示した。


 かといって、エルグラードが大軍を長期に渡って国境に配置することについては懸念があるのも確か。


 そこで、期間を定めた上での一時的な派遣とし、駐留軍の増強はしないという妥協案を示した。


 エルグラードとしても、国境付近の治安が改善すれば長期的に大軍を配置させておく必要はないため、一時的な派遣とすることに合意した。


 会議は長引く可能性があったが、インヴァネス大公がエルグラードと合意できそうな提案を用意していたおかげで、午前中だけで終了した。


「良かった。家族と過ごす時間が増える。娘と会える時間は貴重だけに、一秒も無駄にしたくない!」


 インヴァネス大公がそう言って笑顔を浮かべた。


 誰も何も言わなかったが、リーナの存在は間違いなく政治的にも外交的にも活用できると思われることになった。





 午後は国王の招集により、エルグラード側だけの特別会議が開かれた。


 どの程度の軍を国境に送るか、誰が指揮を執るか、ミレニアスに送る調査団の責任者をどうするかなどを話し合うことになっていた。


「私がミレニアスに行く。エゼルバード、レイフィール、セイフリードも連れていく」


 会議の参加者たちはクオンの発言に驚かずにはいられなかった。


「エゼルバードを外交と調査の責任者として派遣し、軍の指揮はレイフィールに任せればいいのではないか?」


 国王の考えは他の参加者たちと同じだった。


「それではダメだ。理由を説明する。まず、王子の全員が行くことで、大軍が国境付近へ移動するのは護衛のためという理由を作れる利点がある」


 エルグラードの王子全員がミレニアスに行くため、万全な警護をしなければならない。


 そのために大軍を国境付近に移動、配置するのは当然のことで、国民も不思議に思わない。


 犯罪者の警戒心を強めないようにもできる。


「軍はミレニアスに行く同行軍と国境駐留軍の二手に分かれる。そうなると、レイフィールが全軍を同時に指揮することはできない。複数の指揮官が必要だが、エゼルバードに負担がかからないようにしたい」


 エゼルバードは短期留学をしていた経験から、ミレニアスの事情について詳しい。


 外交関連や現地での対応を担当してほしいが、同行軍の指揮も同時にするのでは負担が増す。


 だからこそ、王太子であるクオンが責任者になり、エゼルバードはその補佐、レイフィールは軍の指揮というように役割を分担する。


「セイフリードを連れていくのは、他国へ行く貴重な機会になるからだ。経験を増やし、将来に活かしてほしい。また、リーナは第四王子付きの侍女だ。セイフリードに同行するのであれば、ミレニアスに行っても不自然に思われにくいだろう」


 リーナは素性調査のためにミレニアスに行く必要があるが、後宮で働いている者を個人として他国に行かせるのは守秘義務などの関係から難しい。


 だが、セイフリードがミレニアスに行くのであれば、第四王子付きの世話役が同行するのはおかしくない。


 後宮に王族付きの侍従がいないこと、ミレニアス語を話せることが考慮され、第四王子付き侍女のリーナが同行者として選ばれたことにすればいい。


「なるほど……説明を聞くと、王子全員で行くのが良さそうだな!」

「長年、エルグラードはミレニアスと交渉していたが、有意義とは言えないものだった。だが、それは交渉相手がミレニアス王だったからだ。今回の機会を利用して、国境付近に領地を持つインヴァネス大公との関係を強めたい」


 国の中央から見れば、国境付近は遠い端の部分でしかない。


 しかも、密入国されるのも、犯罪者による被害が出ているのもエルグラード、ミレニアスの方ではない。


 それだけにミレニアス王は事態を軽視しており、エルグラードとの交渉で負担を強いられたくないと思っている。


 だが、インヴァネス大公は自分の領地がエルグラードとの国境付近にあるため、エルグラード側の主張に理解を示している。


 大軍の派遣を一時的ということで了承したのも、エルグラード軍の力によって国境付近の治安を改善すればいいだけ。


 それによってエルグラード国境に近い地域、インヴァネス大公領にも恩恵があると考えていることをクオンは説明した。


「エルグラードとミレニアスに関わる問題をこれ以上放置することはできない。大規模な外交使節団を派遣することで、最後の交渉になるかもしれないとミレニアスに示し、解決へと導きたい。どうだろうか?」


 会議室にいる人々の視線がクオンから国王へ移った。


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