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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編

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1360 整理番号券



「パスカルは何で残ったのさ?」


 ヘンデルが尋ねた。


「ヘンデルとキルヒウスの話を先にどうぞ」

「わかった。キルヒウス、お願いだから交換してよ! カミーラのためだってわかっているはずだ! 俺からよりもキルヒウスからもらった方が喜ぶに決まっている!」

「兄からの贈り物も喜ぶ。問題ない」

「俺はキルヒウスの弟みたいなものだ。キルヒウスの方が上でいてほしいんだよ!」

「確かに私は兄のようなものだ。だからこそ、交換はできない。弟の方が良い番号かもしれないという理由で交換をするのは、兄として恥じるべきことだ。弟が手にした権利を奪うことはない」

「愛の贈り物だよ!」

「だからこそ、このままでいい。気持ちだけ受け取る。仕事に支障が出る。すでに数分間も無駄にしている。首席補佐官だろう?」

「このままじゃ俺は仕事ができない! 首席補佐官として仕事をするためにも、この問題を解決しないとダメなんだ!」


 ヘンデルもキルヒウスも一歩も引かないような状況だった。


「すみません。やはり私から話をさせてください」


 パスカルが言った。


「王太子殿下、整理番号券に関する特別な作業について、ヘンデルとキルヒウスに話すことをお許しいただけないでしょうか?」

「許可する」

「ありがとうございます。では、ここだけの話として打ち明けますが、封筒に折りたたんだ便箋や二枚の券を入れる作業をしたのは私です」


 王太子であるクオンが自分で封筒に便箋や二枚の券を入れるわけがない。


 そうなると、側近の誰かがしたということになる。


 キルヒウスは政務担当であるため、そういった作業はしない。


 ヘンデルは多忙過ぎて不在が多かった。


 そこで後宮やリーナの担当であるパスカルが作業をした。


「当然のことですが、何番の整理番号券があったのかを知っています。王太子殿下はまとまっている封筒をシャッフルしませんでした。渡す順番は序列順。そして、良い番号が私に来てしまいました」

「あー、わかった!」


 ヘンデルはパスカルが困っている理由を理解した。


「パスカルが序列順に渡すことを想定して封筒を並べておけば、誰にどの整理番号券が渡されるのかを思い通りにできたかもしれないわけか」

「便箋と二種類の券を入れたあとに封をして、適当に封筒をまとめました。ですので、番号順にはなっていません。ですが、作業中に私が意図的な順番にしておいたという疑惑が残るのは困ります。大変申し訳ないのですが、ここにいる三人で整理番号券の引き直しをしていただけませんか?」


 パスカルが提案した。


「了承してくれれば、ヘンデルの整理番号券をキルヒウスに渡せるかもしれません。キルヒウスが同じ整理番号券でいいというなら、それをまた引けばいいだけです。私はどのような番号になっても運だと胸を張って言えます」

「そうしろ」


 クオンが決めた。


「時間を無駄にしたくない。パスカルの潔白を証明するにも丁度良い」

「わかった」

「クオンが言うならそうする」

「では、真の序列順でババ抜きのように整理番号券を引くということでお願いします。私は最後に残ったものになりますので、整理番号券を持ちます」


 ヘンデルとキルヒウスは自分の整理番号券を伏せたままパスカルに渡した。


 パスカルは三枚の整理番号券をシャッフルしてから扇のように持ったが、真ん中の一枚だけをわざと上に引いた。


「どうぞ。キルヒウスからです」


 キルヒウスはパスカルを睨んだ。


 パスカルは全ての番号を見ている状態。


 ババ抜きのようにフェイクをかける必要はない。


 一枚だけ上に引き上げたのは、これを引いてほしいという意味であることが明らかだった。


「時間を無駄にしないようにしました」

「どれにするか悩む必要はないね?」

「全く……ヘンデルだけでなくパスカルにも感謝するしかなさそうだ」


 キルヒウスは一枚だけ上に引き上げられた整理番号券を取った。


「これは……」

「良い番号だったぽいね?」


 ヘンデルがにやにやしながらキルヒウスを見つめた。


「ヘンデルの番です」


 残る整理番号券は二枚。


 パスカルが片方を上に引き上げた。


「パスカル、本当にありがとう。俺はキルヒウスさえ良ければいいからさ」


 ヘンデルはそう言うと、パスカルが普通に持っている整理番号券を取った。


「ちょっと待て! どういうことだ?」


 ヘンデルは驚いた。


「同じ番号じゃないか!」


 ヘンデルは自分が最初にもらった整理番号券を引いてしまった。


「ヘンデルの性格はわかっているので。結果として、最も強運だったのは僕です」


 パスカルが僕と言ったのは本心である証拠。


 そして、見せた整理番号券の数字は七。


 ラッキーセブンだった。


「キルヒウスもヘンデルもふさわしい数字を手に入れました。教え合っても問題ないと思います」

「俺は三番だった」


 ヘンデルの番号よりも良いものは一番と二番の二枚しかない。


 トロイが五番を当てているだけに、一桁の数字がくじで当たることがわかっている。


 キルヒウスの番号よりも絶対に自分の方がいいだろうとヘンデルは思った。


「二番だった。最初にもらった番号は七番だった」


 キルヒウスも整理番号券についての情報を開示した。


「パスカルは俺の番号をキルヒウスに渡す手助けをするようにみせかけて、自分の番号をキルヒウスに渡したかっただけじゃん!」

「潔白を証明でき、最も欲しかった番号を手に入れました。キルヒウスとヘンデルに心から感謝します」

「完全にやられたって感じ。でも、嬉しい。ありがとさん」

「お前たちだけに開示する機密情報だ」


 クオンが口を開いた。


「リーナは寄付額を多くするため、くじをたくさん作った。そのせいで昨日の販売期限内に完売しなかった」


 くじが完売しなかった場合は企画者であるリーナが責任を取って全部買い取ることになっていた。


 しかし、その額が大きかったため、ヴェリオール大公妃の予算から支出していいかどうかの確認がクオンに来た。


 孤児院への寄付金を集める企画に協力したいと思ったクオンは、売れ残ったくじを全部自分が買うことにした。


「売れ残ったくじを買い取る代金がヴェリオール大公妃の予算からではなく第一王子の予算から出るだけだと思った。だが、くじを買ったということで、リーナが誰も引き当てていない整理番号券を全部くれた」


 整理番号券の一番、二番、三番があった。


 つまり、販売期間において売れたくじにおいては、四番の整理番号券を手にした者が最初にカタログを見て菓子を買うかどうかを決める権利を手に入れた。


 ヘンデルが相当な枚数を購入していることをクオンは知っていた。だが、一番を与えてしまうと、くじが公平ではなかったかもしれないと思われてしまう可能性がある。


 そこで良い整理番号券を持っていても不思議ではない弟たちに贈ることにした。


 ババ抜きのように引かせることにした結果、最初に引いたエゼルバードが一番を引き当てた。


 レイフィールはリーナからもらえる贈り物で十分だと思っており、側近に整理番号券を渡すと高額な菓子を買えと言っているのと同じになってしまうかもしれないと考え、引くことを辞退した。


 セイフリードは運試しとして自分でくじを百個買った。その時に四番が当たったため、本来は自分が最初に菓子を購入する資格者だったとわかって喜んだ。


 そして、特別な方法で二番や三番を手に入れると、自分で引き当てた四番の価値が下がると考え、レイフィールと同じように引くことを辞退した。


 結局二番、三番、七番、二桁の番号が何枚も残ったため、側近に贈る便箋に入れることにした。


 どの側近にもチャンスを与えたい。そこでランダムに封筒を配布することにしたことが説明された。


「さらに言うと、王族は側近に配る菓子については予約できた。あとで私の側近全員に高級シリーズの菓子が届く。最も多く販売される種類らしい。紙箱仕様だ」


 最高級シリーズの菓子は木箱、高級シリーズは紙箱に入っていることをクオンは教えた。


「最高級シリーズの木箱は書類箱として再利用できるようになっている。キルヒウスとヘンデルがカミーラに最高級シリーズの菓子を贈ると木箱が二つになる。どうするかは話し合って決めろ」

「クオン、本当にありがとう! キルヒウス、カタログを見てどうするか話すってことでいい?」

「わかった」

「パスカルも一緒に買いに行こう。七番ならすぐだよね?」

「この整理番号券は贈り物にします」

「木箱を手に入れることができなくなるよ?」

「私よりもこの番号にふさわしい者に贈りたいのです」

「誰に贈るのかわかった」

「では、失礼します」


 パスカルは急いで王子府に向かった。


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