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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編
1355/1356

1355 二月のヴェリオール大公妃



 リーナは執務室で一覧表を見ていた。


「……これって、私が全部するわけではないですよね?」

「参考資料です。王族妃の公務として行われていた一部をリストにしただけです」


 レイチェルが持って来たのは歴代の王妃や王太子妃がどのような公務をしてきたかのリストだった。


「比較的新しいものについてまとめました。現在の王妃、国王の側妃の方々がしている公務が最も参考になると思われます」

「基本的には慈善活動ですよね」

「それが王族妃の務めです」


 リーナがクオンと結婚した時にも王族妃の務め、公務についての説明があった。


「王妃様は視察が多いですね」

「多くの名誉職を兼任されておりますので、そういった関係の公務があります」

「エンジェリーナ様もこうしてみると外出が多いですね?」

「エンジェリーナ様は公爵令嬢でしたので、ご実家の関係もあって社交界とのつながりが強いのです。特別来賓としての招待が多くあります」

「レフィーナ様は動物愛護活動の支援。獣医なのでぴったりですね!」

「性格的にも能力的にも合っていると思われます」

「セラフィーナ様も外出しているのですね」

「エンジェリーナ様が行きたがらない招待を受けるのが役目です」

「全員が寄付活動もしています」

「王族妃によって予算が違いますので、予算に応じた活動をしております。以前にご説明したと思うのですが、側妃は最低限の公務でも構わないということになっています。国家行事、王家行事、王宮行事についても国王陛下の許可があれば欠席できます」

「正妃は欠席できないということでしょうか?」

「正妃の場合は出席が義務ですので、欠席するには正当な理由が必要です。ここだけの話ですが、側妃は体調不良だと言うだけで欠席できます。正妃は本当に体調不良でなくてはいけません」

「とてもわかりやすいです」

「新年の人事異動や組織改編がありましたので、すぐに公務をするのは難しい状態です。春になれば状況も落ち着くと思われますので、どのような公務をご希望されるかを考えていただければというだけです」

「結婚してヴェリオール大公妃になった時もそんな感じでしたよね」

「一年目は王宮での生活には慣れることが重要でした。公務は一つでも十分という想定でしたが、二年目となると数を増やさなくてはなりません」

「引き続き孤児院に対する支援活動をしたいです。福祉特区の孤児院がきちんと運営されていくかどうかも気になります」


 福祉特区の孤児院は十二月から孤児の受け入れを始めているが、緊急度が高い状況にいる孤児か優先されている。


 職員の人数もまだまだ少ない。給食施設、学校、病院と連携する予定になっているが、それらの施設ができていない。


 より多くの孤児を受け入れる体制を整えるのに年月がかかるため、リーナは長期的に関わりたいと思っていた。


「定期的に視察に行きたいです」

「福祉特区の件は王都政のほうの特別担当者として関わることができると聞いております。それ以外には何か考えられていますでしょうか?」

「去年は特別な公務として遠方視察がありました。今年はないと考えていいですよね?」

「あのような公務は基本的にありません」


 遠方視察は王族妃の公務ではなく、通常は王族の側近が特別な担当者に任命されて行うものだった。


「遠方視察がないからこそ、その期間にどのような公務をするのか考えなくてはいけません。関係者と日程や警備等の調整があるので、春頃には決めたほうがよろしいかと」

「実際に公務をするのは初夏から秋の間ということですね?」

「そうです」

「王宮内でできそうな公務を探すということでもいいのでしょうか?」

「もちろんです。ですが、公務として発表できるものでなくてはいけません」


 リーナは後宮統括補佐として後宮に関わる仕事をしているが、それは王家内における非公式な仕事であり、ヴェリオール大公妃の公務としての発表はできない。


 王宮で何らかの仕事をする場合も同じ。非公式な仕事になってしまうと、ヴェリオール大公妃の公務としての発表はできない。


 必要なのは仕事ではなく、ヴェリオール大公妃が王族妃の務めを果たしているということを証明するもの、発表できる公務であることが重要だった。


「セイフリード王子殿下が国王特務補佐官として王宮省に関わっています。管轄権で揉めないためにも、同じものを担当することはできないとお考えください」

「わかりました。ところで、現時点で私が出席しないといけない行事などの予定はありますか?」

「いいえ。純白の舞踏会がありますが、王太子殿下のほうで不参加を決めました」


 リーナは去年の純白の舞踏会を思い出した。


「今年もたくさんの若者がデビューするわけですね」

「例年通り国外からの参加者もいます。去年と同じような事態になるのを予防するため、純白の舞踏会については極秘視察もご遠慮ください」

「王族は出席するのですか? エゼルバード様とか」

「国王陛下と王妃様だけが出席します。リーナ様が重視すべき予定は愛の日だと思われます」


 王太子夫妻の関係が良好であることを示すためにも、リーナがクオンに愛の日の贈り物をすることが極めて重要だと説明された。


「平日ですよね? クオン様が休みを取るのか聞かないと」

「その件については、王太子付き侍従長の方から聞いています。緊急案件がなければ、勤務時間を短縮するようです」

「そうですか。当日の予定についてはクオン様次第になりそうなので、私としては贈り物を用意しておけば良さそうですね」

「それでよろしいのではないかと。ヘンリエッタは王宮の侍女試験の勉強がありますので、この件は私の方で担当します。なんでもおっしゃってください」

「レイチェルがいてくれて本当に頼もしいです」


 リーナはにっこりと微笑んだ。


「では、早速相談します。去年は後宮でお菓子を作りました。今年も同じようにしたいのですが、許可をもらったほうがいいですよね?」

「恒例とは言えないことですので、それが適切かつ確実です」

「国王陛下と宰相閣下の二人からですよね?」

「はい。本来は夫である王太子殿下を通じてというのが正式です。ですが、王太子殿下のために用意する愛の日の贈り物についての許可ですので、直接国王陛下や宰相閣下に話を通すというのは問題ないと思われます」

「後宮は国王のものなので、国王陛下に会って話してみます」

「わかりました。謁見可能かどうかを確認します」


 レイチェルはすぐに国王への伝令を出した。



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