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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編
1332/1356

1332 今年最後の大仕事



 十二月二十六日。


 王宮で最も広い舞踏の間には大勢の人々が集まっていた。


 これから行われるのはヴェリオール大公妃による炊き出しのための会議。


 昨年も二十六日に会議、二十八日に実行したが、あくまでも匿名によるお試し開催。


 今年はヴェリオール大公妃としての公式な開催になる。


 絶対に成功させなければならないからこそ、王宮と後宮、公的機関から選ばれた者が実行することになった。


「集まってくれてありがとうございます! これからヴェリオール大公妃の公式な炊き出しのための会議を始めます!」


 リーナが宣言した。


「すでに知っている人もいますが、去年の年末に匿名で炊き出しを開催しました。うまくいくかどうかわからないのでお試しのつもりだったのですが、多くの人々の協力によって大成功しました! 今年はいよいよ本番です!」


 去年はボランティアだったが、今年は公務。


 経験者に参加要請をしたところ、全員が快く了承してくれていた。


「正式開催と匿名開催では違う部分があります。マニュアルや資料をみながら、担当者の説明をよく聞いてください。では、担当者から説明があります!」

「ヴェリオール大公妃による公式な炊き出しの担当者に任命されたトロイ・シルオーネです」


 去年に引き続き、今年の炊き出し担当もトロイになった。


 去年の炊き出しが成功したからこその抜擢でもある。


「王都には裕福な人々が集まる一方、貧しい人々も多く集まっています。王太子殿下は社会的弱者を救済するため、福祉特区を新設されることを決定しました」


 それは単に貧民への施しをすることではない。


 エルグラードの富を一部の者だけで占有することなく、より多くの国民に恩恵を分け与えていくための政策であり、公的な福祉制度の強化でもある。


 また、一部の強き者や善意ある者が弱き者に施すという従来の方法に頼るのではなく、国が率先して弱き者を強くなれるように育てていく。


 この取り組みはエルグラードが世界一の国になり、国民が多くの幸せを感じられるようになるための偉大な前進である、とトロイは力説した。


「ヴェリオール大公妃による公式な炊き出しは福祉特区で行います。それによって王太子夫妻が一致団結して福祉策を強化し、慈善活動をしていくことを示すことができます。我々は特別な任務を遂行するために選ばれた精鋭です。期待に応えるため、力を合わせましょう!」


 大きな拍手が沸き上がった。


「では、より具体的な説明を行います」


 去年は三つに分かれて役割を担ったが、今年は公務でより多くの人々が参加することから七つに分けられており、第一団から第七団まである。


 命令系統は第一団がトップ。ヴェリオール大公妃が直接率いる司令部のようなものになる。


 その第一団から通達を受けるのが第二団と第三団。

 

 第二団は第四団と第五団に通達を行い、第三団から第六団と第七団に通達を行う。


 命令及び指示系統を明確に配分し、正確に早く情報伝達や通達ができるようにすることが伝えられた。


「炊き出しと聞いて食事を配るだけだと思うかもしれません。ですが、支援物資も配布されます」


 去年はボランティアということで、任意で支援物資を提供してくれた人々がいた。


 今回は公務だけに予算で購入された支援物資が用意されており、それを配る。


「昨年の評判を聞きつけ、今年はより多くの人々が訪れるかもしれません。現地で混乱が起きないように、まずは我々が冷静に行動し、混乱しないようにしましょう」


 今回の会場はチャリティーハウスと地区会館用の敷地の二カ所。


 どちらでも温かいスープとパンを配るが、チャリティーハウスでは随時パンを焼いて提供する。


 地区会館の敷地では別の場所で焼いたパンを用意。国軍の野営装備によって作った温かいスープと一緒に配る。


 配布開始は昼食時間の正午。


 スープは約三千食以上。パンは約二万個を想定。


 王宮と後宮が協力してスープの仕込み量を増やし、現地では鍋に水と用意された調味料を入れて煮込めばいいだけにする。


 また、地域振興策として周辺にあるパン屋に炊き出し用のパン制作を依頼。当日に購入することでパンの配布数を大幅に増やすことが説明された。


「もう一度言いますが、これは公務です。将来を見据えた活動であり、普通の慈善活動や施しではありません。災害時における救助活動の訓練も兼ねています」


 そのため、緊急支援や救助活動を担う国軍もかなりの力を入れて参加する。


「困難な状況で最も必要なのは声をかけ、励まし合い、助け合うことです。大災害が起きた状況を想定、被害にあった人々に接すると思い、優しく丁寧な言動を心掛けるように。私からは以上です。このあとは各団に分かれての説明になります」


 全体説明が終わり、各団に分かれてのスケジュール、仕事内容の説明が始まった。


 全てマニュアルと資料を見ればわかるようになっているため、それを確認しながら疑問点について回答するような形になった。


「第一団の説明は終わりです」


 リーナが直接説明した第一段の説明が終わった。


「この会議への出席者のためにビュッフェ形式の昼食を用意しています。すぐに勤務先に戻りたい人のためのお弁当も用意しています!」


 今回の会議は催事と同じような扱いということで、王宮側が昼食を用意していた。


「美味しいものを食べると元気が出ますよね。炊き出しの予定に備えて、まずは私たちが美味しい昼食を食べて英気を養いましょう!」


 舞踏の間に大拍手が響き渡った。


 それは第一団だけなく、他の団の者も呼応した証拠。


「さすがはヴェリオール大公妃!」

「我々のことも思いやってくださる!」


 人々の賞賛がたっぷり込められていた。


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