１３０１ 追加の審査日
いつもお読みいただきありがとうございます！
１３００話に到達できたのは、読者様が支えてくださるおかげです。心から感謝申し上げます。
急病の方は治ったのですが、検査結果でわかったことに対処中なので、体調面を考慮しながら執筆活動を続けていきたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします！
追加審査日になった。
「ここが王太子騎士団の拠点！」
「まさに要塞だな！」
「王宮地区内に要塞があるとは……」
ロビン、ピック、デナンはそびえ立つ王太子騎士団の要塞を見上げた。
第一王子騎士団は本部が王宮内にあり、管理部と訓練施設と宿舎については王宮と騎士団用の建物に分かれている。
一方、古くからある王太子騎士団は専用拠点としての要塞が王宮地区内にあり、本部、管理部、訓練施設、宿舎などが全て一カ所にまとめられていた。
「ちょっと馬を走らせてきただけなのに……」
「門がでかいなあ」
「王宮地区じゃない場所に来たみたいだ」
「ユーウェイン、手本を見せてあげて」
パスカルが声をかけると、ユーウェインは大きな門に近づき、騎兵隊用のラッパを鳴らした。
「第一王子騎士団だ！」
ユーウェインは大声で来訪を伝えた。
「所属と名前を言え！」
「ヴェリオール大公妃付きのユーウェイン・ルウォリス！ 開門を頼む！」
しばらくすると、大きな門がゆっくりと内側に開けられた。
「よくぞ参られた！ 歓迎する！」
「歓迎？」
第一王子騎士団と王太子騎士団は仲が悪いと聞いていたユーウェインは眉をひそめた。
しかし、すぐ横に馬を進めてきたパスカルがにっこりと微笑んだ。
「大丈夫だよ。できるだけ調整しているから」
「なるほど」
第一王子騎士団の顧問に就任してから、パスカルは第一王子騎士団と王太子騎士団との関係改善に努めていた。
「行こう。先導役の従騎士からだ。隊列を守って入場するように」
「はい！」
先導役として従騎士から順番に門をくぐると、広い馬場があり、整列した王太子騎士団の騎士たちがいた。
「レーベルオード子爵、お待ちしておりました。王太子騎士団へようこそ！」
王太子騎士団で筆頭隊長を務めるマルティンがパスカルの出迎え役として待機していた。
「わざわざ出迎えていただかなくてもよかったのですが、恐縮です」
「王太子殿下の側近を粗略に扱うわけにはいきません」
「お気遣いいただきありがとうございます」
「遠慮は無用です。馬術審査の方では容赦しませんので」
「本日は追加審査の件でご協力いただき感謝します。王太子騎士団の拠点で審査をできる貴重な機会だけに、参加者には良い経験になるでしょう」
「良い成績も残すつもりでは？」
「審査で頑張るのは当然のことです。プレッシャーを力に変えてくれればと願っています」
「ゼッフェル団長のところへご案内します」
パスカルとマルティンが話す様子は和やか。
しかし、それはパスカルが王太子の側近であり、第一王子騎士団と王太子騎士団の関係を取り持つ調整役だからに他ならない。
王太子騎士団の騎士は第一王子騎士団から来た騎士に対し、相当な闘争心を燃やしているだろうとユーウェインは思っていた。
「審査も周囲の対応も甘くはない。覚悟しておけ！」
第一王子騎士団についても同じ。王太子騎士団に対し、絶対に負けたくないと思っている騎士たちばかりだった。
ラグネスは最も経験が少ない従騎士たちの気を引き締めようとした。
ところが。
「第一王子騎士団の施設とは全然違う！ いかにも軍事拠点って感じがするよ！」
「こんな広い馬場があるなんてすげーな！ 専用だろう？」
「さすが由緒ある騎士団だ！ 歴史と威厳をひしひしと感じる！」
ロビン、ピック、デナンは騎士に憧れる一般男子そのもの。
表情も瞳もキラッキラに輝いていた。
「やはりそうなるか」
「従騎士になって一年も経っていない新人だからな」
ラグネスとサイラスは顔を見合わせ頷き合うと、ユーウェインに顔を向けた。
「ユーウェイン、あとで注意しておけ」
「お前から言った方が効く」
従騎士の教官ではなくなったが、三人の目付け役でなくなることはない。
ユーウェインの予想通りだった。
