13 若い男性
陽射しを受けながら、リーナはぼんやりしていた。
段々眠気を感じ始める。
このまま昼寝をしてしまいそうだと思っていると、突然、リーナに声がかかった。
「ちょっといいかな?」
顔を上げると、非常に容姿の整った若い男性がいた。
金の髪と青い瞳。豪華な刺繍が施された服を着ている。
まるで絵本の中に出てくる王子様のようだとリーナは思った。
「休憩中?」
「今日はお休みを頂きました」
リーナは正直に答えた。
「だったら丁度いいね。時間を気にせずに済む」
若い男性はにっこり微笑むとリーナの隣に座った。
「歳は?」
突然、歳を聞かれたリーナは反射条件のように即答した。
「十七歳です」
「未成年か」
若い男性は驚いた。
「召使いだから、成人だと思ったよ。確認しておいて良かった」
「来年になれば成人です」
十八歳になれば成人だ。
一年以内には成人になる。
「それはちょっと遠いな」
若い男性は苦笑した。
どうやら成人女性に用事があるらしいとリーナは推測した。
「お役に立てず申し訳ありません」
「いや、未成年でも大丈夫だよ。話をしたいだけだからね」
若い男性は安心させるように微笑んだ。
「プライベートに関わる質問だけど、身元調査だと思って正直に答えて欲しい。まず、平民かな?」
「はい」
「恋人はいる?」
「いません」
「婚約者は?」
「いません」
「好きな異性がいる?」
「いません」
「これまでに、異性と付き合ったことがある?」
「ないです」
「キスしたことは?」
「恋人もいないのに、あるわけないです」
リーナは質問に正直に答えつつも、若い男性を睨んだ。
なぜこのような質問をされるのか、絶対におかしいと思う気持ちが浮かび上がった。
「なぜそんな質問をするのかって顔をしているね。じゃあ、質問を変えるよ。借金はある?」
リーナは一瞬で表情を曇らせた。
「……あります」
「沢山?」
「はい」
「いくら?」
リーナは黙り込む。
「君にとっては高額でも、他の者にとっては大した額ではないかもしれないよ。いくらか教えてくれたら、力になれるかもしれない」
「……二百万ちょっとです」
「ずいぶん少ないね」
「少ない?」
リーナにとっては大金だ。
「他の女性にも同じような質問をしたけど、もっと多い者達ばかりだったよ。君は若いから、借金の金額が少ないのかもしれないね。いつから後宮で働いているのかな? 十五歳から?」
「十六歳からです」
若い男性は少し考え込んだ。
「アルバイトをしない?」
「アルバイト?」
「若い女性であれば特別な能力は必要ない。君が同意できる内容によって報酬は変わる。興味はあるかな?」
「どのようなアルバイトでしょうか?」
「報酬が高いのと低いのとがあるけど、どっちがいいかな?」
「高い方がいいに決まっています」
「男性とデートをするアルバイトだよ」
リーナは予想外の言葉に呆然とした。





