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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編
1296/1357

1296 結婚記念日のデート



 王宮に戻ったクオンとリーナは夜の予定に備えて着替えた。


 夜のデートはクオンが担当で、どのように過ごすのかを決めることになっていた。


 まずは夕食。


 昼食は王立学校の学祭で食べた軽食だけということもあり、王太子領風の豪華なフルコースの料理をリーナは堪能した。


「どうだった?」

「とっても美味しかったです! 王宮料理の華やかさと王太子宮料理の大胆さがありました!」


 王宮料理はエルグラードにおける最高の料理と言われている。


 しかし、料理には多くの魅力がある。


 たった一つの料理だけが最高ということではない。


 王太子領には野戦料理が元になった伝統的料理があり、それもまた最高の料理だとリーナは感じることができた。


「でも、キャベツがそのままの形で出て来るなんて……」

「小さめのキャベツで良かった」


 素材の形を残すのが特徴の料理ということで、茹でた小さめのキャベツを皿の中央に盛り付け、その周囲をエディブルフラワーや他の野菜の形を模したもので飾りつけしたサラダがあった。


「串焼きが出てきて、どうしようかと思いました!」


 野外での調理を感じさせる演出として、皿の上に支柱付きの串焼きがあった。


 串を持って食べるのだろうかとリーナは思ったが、クオンは串焼きの肉を一旦支柱から降ろした。


 そしてフォークとナイフを使って肉を串から取って食べるのを見て、そうすればいいのかとリーナは安心した。


「串を直接持って食べることもできなくはない。だが、先に串から抜いた方が安全で食べやすいだろう」

「そうですね。滅多にないお食事なので焦りました。食べ方の勉強をもっとします!」

「ケーキはどうだった?」


 デザートは結婚記念日をあらわす真っ白なケーキ。


 口づけを交わす白鳥の砂糖細工が載っていた。


「白鳥の首の形がハートでしたね!」

「それ以外の形は考えられない」

「今夜にぴったりです!」

「喜んでくれてよかった。このあとは王立歌劇場だ」


 エルグラードの南方進出を題材にした特別なオペラの最終公演。


 ロイヤルボックスを王太子夫婦だけにするため、他の王族はロイヤルボックスにはいない。


 しかし、今夜の公演には来ており、他の場所にいることをクオンが説明した。


「父上も舞台に近いボックスから見ているが、お忍びのような扱いだ。主賓はロイヤルボックスを利用する私とリーナになる」

「わかりました」


 二人は王立歌劇場に向かい、王族席の間に到着した。


 そこにはエゼルバード、レイフィール、セイフリードが揃っていた。


「王立歌劇場にようこそ」

「待ち兼ねた!」

「二人が話しかけてきてうるさかった。ようやく解放される」


 三者三様の言葉での出迎え。


「似合っている」


 クオンは三人の弟たちを見て微笑んだ。


「エルグラードの王子に相応しい勇壮さだ」


 リーナは気づいた。


「もしかして、それは軍服ですか?」


 午前中は公式発表があり、正装ということだった。


 リーナは王太子夫婦としての一体感を演出するため、結婚式を彷彿とさせる白いドレスを着用。白い礼装姿のクオンと揃えたが、他の王族の全員はエルグラード王家の公式発表ということで赤い上着の礼装姿だった。


 夜のために用意されていたのは黒いドレス。クオンも黒い礼装。


 金色の豪華な刺繍や赤と緑のサッシュがあるとはいえ、黒で揃えるのは珍しいとリーナは思っていた。


 そして、王立歌劇場にいたエゼルバード、レイフィール、セイフリードも豪華な金の肩章や飾り紐がある黒い礼装姿。


 レイフィールは普段から黒い軍服を着ているのもあり、リーナは四人の王子の装いがただの礼装ではなく、軍礼装なのではないかと思った。


「私から説明します」


 エゼルバードがにっこり微笑んだ。


「今夜は南方進出時代のエルグラードを描いた歴史的なオペラです。現在は平和な時代ですので、戦場に行くことを想定した装いはほぼしません。エルグラードと国王と王家は赤、王太子と王太子領は緑ですが、それは衣装ではなく旗の色というのが正式なのです。戦場では黒い軍装になります」


 黒い軍装にはいくつかの理由がある。


 汚れが目立ちにくいのもあるが、夜に紛れて隠密行動をしやすくするためでもある。


 司令官や指揮官は豪華な憲章や飾り紐をつけるが、標的として狙われやすい。


 そこで上着の色を側近や部下たちと同じ色、黒で統一することが説明された。


「私たちは軍礼装をしていますが、これは臨場感を演出するためです。より物語の中に入り込み、南方時代のエルグラードにいるような、当時の人々になったような気分を味わうためなのです」


 エゼルバードはうやうやしく指揮棒を差し出した。


「兄上は王太子、今夜は司令官です。これをどうぞ」

「わかった」


 クオンは黄金色の指揮棒を手に取った。


「リーナにはこれを」

「赤いスカーフ?」

「つけてあげましょう」


 エゼルバードは大判のスカーフをリーナの首にかけると軽く結んだ。


「これで完璧です。リーナは当時の女性らしくなりました」

「昔のエルグラード人ということですよね?」

「そうです。そのままでもいいのですが、任意でオペラに参加できます」

「参加できるのですか?」


 リーナは興味を持った。


「どうすればいいのですか? ぜひ、教えてください!」

「戦場に兵士を送る場面があります。その時に首からスカーフをはずして振ります。他の観客も同じようにするのでわかるでしょう。女性たちがスカーフを振っている場面があれば、一緒に振ることで参加できます」

「なるほど! それで結び目がゆるいのですね!」

「兄上の方は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だ。どこで参加するのかは聞いた」

「では、特別なオペラを楽しんでください。私たちは別の場所になりますので失礼します」


 エゼルバード、レイフィール、セイフリードは王族席の間を退出した。


「なんだかドキドキしてきました。すごく楽しみです!」

「私も同じだ。一緒に楽しもう」


 移動時間になると、リーナとクオンはロイヤルボックスへ向かった。


追記:急病のため、次の更新は来週の月曜日にしたいと思います。

   すみませんが、よろしくお願いいたします。(8/27)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「なんだかドキドキしてきました。すごく楽しみです!」 「私も同じだ。一緒に楽しもう」 [一言] ニヨニヨしてしまう(≧▽≦) 兄弟全員軍礼装って新鮮!! 皆に合いそうです。レイフィール…
2024/08/27 08:51 みんな大好き応援し隊
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