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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編
1287/1357

1287 王宮の協力者たち



 朝食を食べたリーナは王宮省大臣と王宮長と面会することになっていた。


「ヴェリオール大公妃、おはようございます」

「ヴェリオール大公妃に朝の挨拶を申し上げます」

「おはようございます!」


 王宮や後宮がリーナのイベントに協力することについては、国王から許可が出ている。


 しかし、新聞で告知することはない。各自の権限でできる範囲、問題にならないようすればいいということになった。


 細かい内容についてはリーナも知らない。


 イベント開催日の初日に、大まかな説明を受けることになっていた。


「朝食が協力仕様で驚きました。特別な飲食物を提供してくれるということでしょうか?」

「王宮省におきましては、王宮厨房部と王宮購買部が協力しております」


 基本的には普段から提供しているものを王都や王太子領に協力するようなものに変える。


 特別な予算を計上しているわけでもないことが伝えられた。


「特別な予算を計上しなくても大丈夫なのですか? とてもお得そうです!」


 詳しく知りたいとリーナは思った。


「王宮や後宮の食材の多くは王都や王都圏産です。王都に関係するという意味ではそのまま使用すればいいだけなのです」

「まあ、そうですね。でも、協力していることがわかりにくいのでは?」

「その点も工夫しました。こちらをご覧ください!」


 王宮長は日常食のメニューを差し出した。


「王都や王太子領の名称をつけたメニューになるのですね!」


 通常の日常食に王都や王太子領に関係する名称をつけ、イメージしたメニューを提供するという案だった。


「住み込みの食事全てを協力仕様にするのは大変ですので、昼食だけになりました。王宮省大臣ともそのような内容で合意しました」

「住み込みは三食ですが、官僚は基本的に昼食のみです。厨房部に負担がかかりにくいようにしました」

「官僚食堂でも協力仕様のメニューがあるわけですね」


 リーナはメニューの一覧表をじっと見つめた。


 王宮の住み込みに提供される日常食は王太子宮風。王太子宮で提供される日常食を調査し、同じようなメニューや味付けになるようにしたものが出る。


 官僚食堂では協力メニューが追加され、日替わりで提供される。


「王都風オムレツは赤ワインソース、王太子領風オムレツは緑の野菜ソースですか……どちらも食べたくなりますね!」

「王都料理の特色は多種多様なソースでもありますので」


 日常食や官僚食堂の食事は全体的な味付けをする料理が主流。


 だが、協力仕様の食事ではかけるソースに着目した。


「購買部の方も同じです。扱っている品は同じなのですが、協力をあらわすような工夫をいたします」

 

 王宮購買部の販売品は原則的に値段を変えない。常時、同価格。


 しかし、協力期間中は協力対象品のみ値引きすることにした。


「王都産のミネラルウォーターも対象品です」

「相当喜ばれますね!」


 王宮は飲食物の持ち込みが制限されているため、官僚は購買部でミネラルウォーターのボトルを買って職場に持ち込む。


 それが値引きされることを喜ばない者はいないとリーナは思った。


「問題ないとは思うのですが、いかがでしょうか?」

「とても素晴らしいです! 協力に心から感謝します!」


 王宮や後宮の協力は王都全体から見ると極めて限定的。


 しかし、ちょっとした工夫で日常の中に新しさを感じさせ、王都や王太子領を意識させるきっかけになる。


「チケットの特典として特別な昼食会や晩さん会を開くので、王宮内での催事は入れませんでした。でも、協力してくれたおかげで、王宮にいてもイベントに参加した気分になれます。楽しめますね!」

「はい。案を出すのも楽しめました」

「王宮で働く者の仕事を邪魔しないように、それでいて楽しめるような工夫をするということで、このような形での協力になりました」


 王都を明るくするために、その中心である王宮を明るくするというコンセプトも伝えられた。


「絶対に成功します!」

「ヴェリオール大公妃にそうおっしゃっていただけることが成功です」

「ヴェリオールへの協力に成功というわけです」


 リーナ、王宮長、王宮省大臣は笑みを浮かべた。


「ところで、ヴェリオール大公妃にお聞きしたいことがあるのですが?」

「後宮はどのような協力をするのでしょうか?」


 王宮長も王宮省大臣も、後宮側がどのような協力をするのか知らなかった。


「かぶらないようにするため、後宮監理官や後宮長に教えてほしいと伝えました。ですが、教えてもらえませんでした」

「後宮の情報漏洩になると処罰対象になるため、何も言えないそうです」


 後宮の情報は厳重に守られている。


 外部に漏れないようにする規則があった。


「確かにそうですね。情報漏洩は厳禁になっています」

「ですが、ヴェリオール大公妃であればご存知だと思います」

「開催日になれば、後宮内での正式な告知もされるはず。教えていただけないでしょうか?」

「気持ちはわかります。でも、私もどのような協力をするのか知らなくて」


 リーナは正直に答えた。


「福祉特区のメイン会場の物産展やチケットの特典イベントの方で忙しかったので、後宮の協力については後宮の者に任せています」


 後宮統括補佐として細かい指示出しはしなかった。


「協力についての説明を午後に受けて、それから後宮を見て回るつもりです。ですので、そのあとでないと教えることができません」

「なるほど」

「そうでしたか」

「もしよければ、私が後宮に行く時に同行しませんか?」


 リーナは王宮長と王宮省大臣に尋ねた。


「そうすれば、後宮側の協力内容について一緒に説明を受けることも、協力している現場を見て回ることも可能ですが?」

「ぜひ、お願いいたします!」

「同行させてください!」


 王宮長と王宮省大臣は喜んだ。


「では、王宮を見て回ったあとに午後の予定を調整してください。私の昼食が終わるまでに来てくれれば、一緒に後宮へ行けます」

「わかりました!」

「必ず行きます!」

「楽しい勤務日もあります。今日はそうなれます。皆で一緒に楽しみましょう!」

「はい!」

「楽しみます!」


 王宮長と王宮省大臣は賛同の声を上げた。


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