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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第八章 側妃編
1205/1357

1205 監査発表会

 いつもお読みいただきありがとうございます!

 タイトルや活動報告の方でもお伝えしていますが、書籍化が決定しました!

 まさかまさかまさか……の事実です。

 長期連載ができているのも、書籍化のお話をいただけたのも、この作品を読んで応援してくださる皆様のおかげです。

 本当にありがとうございます!!!!!!!

 詳しいことにつきましては、また改めてお伝えしたいと思います。

 よろしくお願いいたします!



 全ての視察予定と監査を終了したことを受けて、領主代理主催の大会議が開かれた。


「では、王太子領の監査結果を発表します!」


 リーナは会議室に集まった人々を見渡した。


「私自身は福祉体制や孤児院の方を担当しているので、領運営の方はセイフリード様と側近の方で監査しました。監査前から予想されていたことですが、領運営の余剰金が年々増えています。領主財産においても同じです」


 約十年前の大改革の大成功は王太子領をより強く豊かに変貌させ、その税収は右肩上がり。


 領運営は大黒字で余剰金を積み立てており、領主財産もその中から個人資産として区別される貯蓄額も増え続けていた。


「クオン様はデーウェンに投資しています。それは大量の茶葉やコーヒー豆、金、鉱石をエルグラードへ輸入するためです。王太子領にも多くの輸入品が届くようにしたいので、王太子領で管理している資金からも追加投資を行います。このことはセイフリード様が監査で貯蓄額を確認した後、問題なければ正式に発表することになっていたということです」


 王太子領は豊かなだけに多くの人々がお茶やコーヒーといった嗜好品を楽しんでいる。


 しかし、まだまだその価格は安いとは言えない。


 王太子領がより多く安く輸入品を手に入れることができるようにするための対策として、クオンは領主としての投資分を追加することを決めていた。


「経済同盟によって関税が大幅に引き下げられ、輸入上限も増えるのは知っていますね? 茶葉やコーヒー豆の件でもデーウェンとの取引が増えると思うので、河川を使った運送の重要性が強まります。河川港の強化と河川港につながる街道の再整備を進めます」


 リーナは運輸省、建設省、商業省の合同案件として再整備を進めるよう指示を出した。


「王太子領には高速馬車路がありません。そこで王都、デーウェン、フローレンを意識した高速馬車路の建設も検討します」


 約十年前の改革で示された方針に従い、王太子領内の主要街道は整備されてきた。


 だが、経済同盟という国際的な取り組みに対応することを考慮すると、既存の街道強化だけでは力不足になる可能性が高い。


 そこで王太子領から王都、デーウェン、フローレンへ向かう高速馬車を建設する案をセイフリードが出した。


 これは単純に主要街道と併設するのではなく、代表的な輸出品である小麦やワインを産地からより多く早く確実に運ぶ経路を確保するための計画だ。


「セイフリード様の方で作成した計画書をクオン様に送って確認中です。許可の返事が来たら正式に実行の命令が出ます。高速馬車路は他領を通ることになるので、計画が変更されるかもしれません。有料の商業街道になる可能性もありますので、心に留めておいてください。ここまでの発表についての質問や相談は、この後の会議でセイフリード様の方に聞いてください」


 リーナは発表用の書類をめくり、深呼吸をした。


「では、次に私が担当した福祉体制や孤児院についての発表です。福祉体制については大丈夫そうです。このまま継続してください」


 リーナの結果を聞いた王太子領の関係者は安心するような表情になった。


 しかし、発表には続きがあった。


「ですが、孤児院については問題があります」


 福祉政策が充実しているせいで、領政府や福祉省、関係組織において、より改善しようという考えや取り組みがない。


 現場である孤児院も同じ。


 すでに決まっていることをただ実行しているだけの状態だということをリーナは指摘した。


「子供達の衣食住や教育については福祉制度が支えています。ですが、子供達の心を支える者がいません。これは大問題です」


 人間は年齢に関係なく寂しさ、悲しみ、苦しみ、不安を感じる。


 子供は家族に支えられながら育つが、孤児には家族がいない。


 領ができるのは衣食住や教育といった制度を整えることだけ。


 職員が子供達の心を支えるように接するべきだが、職員は自分達の職務を施設管理や金銭管理と思っており、子供の世話や心のケアは含まれていないと思っている。


 公的孤児院は慈善団体とは違う。辛い現実を知ることで自立心を育てるべきだという認識もあるせいで、子供は自分で自分の心を支えるしかない状態になってしまっていることをリーナは説明した。


「自立心は大事です。でも、小学校に通う年齢の子供には難しいことが多くあります。大人ではなく年長の子供に任せるような現場のやり方も無責任です。安心安全を与える場所であるはずの孤児院が子供専用の安宿になり、優秀な領民を育てる取り組みが冷たい心を育てることにもつながってしまっています。早急に改善しなくてはいけません!」


 職員の対応を変えたとしても、子供達が職員を頼りにできないと思っている現状をすぐに変えるのは難しい。


 そこでリーナは別のアプローチをすることにした。


「対策として、ヴェリオール大公妃のグループを設立します」


 リーナは既存の行政組織や孤児院の職員に仕事を追加するのではなく、自分のグループを作って活動することにした。


「仮称は緑の守護団です。資料を見てください」


 緑の守護団が目的に掲げるのは社会的貢献。


 子供を支える支援、歴史的遺物や自然環境を保護しながら人々のために活用していく活動をする。


「王都では社会貢献活動が活発です。私もいずれ自分のグループを作って活動してはどうかという話がありました。ですので、王太子領でヴェリオール大公妃のグループを作りたいと思います」


 常識的に考えれば王族妃が自分のグループを作るのは王都。


 だというのに、リーナが王太子領で自分のグループを作ると言い出したのは想定外、誰もが驚く決断だった。


「募集するのはとにかくやる気がある人です。身分や能力は問いません。但し、これは私的なボランティア活動です。運営費用は私のために新設された予算から出します」


 これまでの王太子領予算や領主予算には領主の妻のための予算が設定されておらず、クオンの結婚によって新たに設定する必要があった。


 セイフリードの監査によってどの程度の予算を設定するかが決まったため、リーナの個人資産として蓄えておけばいいということになったが、リーナは王太子領や領民のために使うことにした。


「王太子領にあるのはエルグラード屈指の豊かさだけではありません。人々の優しさと温かさ、他の領地にはない独特な歴史と文化、時代を越えて受け継がれている強さと魅力があります。そのすべてを人々の幸せや笑顔につなげるような活動をしていきたいと思います。緑の守護団を作るのはそのためです」


 リーナは会議の出席者達を見渡した。


「ここにいる皆に改めて伝えたいことがあります。エルグラードの身分制や階級制は何のためにあるのでしょうか? それは強者が弱者を守り助けるためです。上の者が模範的行為を示すことによって下の者を正しく導くためでもあります。私達は上の者としての役割を果たすべき立場にいます。王太子領の高潔さと領民の笑顔を守るために力を合わせましょう。領主代理として私が導きます!」


 なんと力強い!


 やはり王太子殿下が選ばれたお方だ!


 これこそノブレスオブリージュだ!


 会議の出席者達は感銘を受けた。


 領主代理であるヴェリオール大公妃リーナに賛同と賞賛を示す拍手が部屋中に響き渡った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 書籍化、おめでとうございます! リーナちゃんは本当に応援したくなる主人公(ヒロイン)だな~と思いながら拝読しています。彼女のイラストも楽しみです!
[良い点] リーナちゃんが留まる事を知らない…… 男前すぎる 笑笑笑 [一言] 書籍化おめでとうございます! むしろ遅過ぎるくらいだと思ってます(笑) 1000話も超えているにも関わらず、この物語は…
[一言] 書籍化決定おめでとうございます! なろうに小説数あれど、1000話越えてる作品は本当にすごい。 この作品も例に漏れずずっと面白いです。
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