1177 特区構想(一)
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします!
クオンは王都における孤児院問題の再発を防止するための施策として、福祉特区の新設を決定、関係者に通達した。
福祉特区に指定されるのは調整地区内にある一部の場所。
新規に設立される民間孤児院と公的組織が連携することによって、半民半公のような孤児院を作る試験的な取り組みを実行する。
その取り組み方もこれまでとは全く違う。
通常は孤児院が様々な条件を満たすことで補助金を受け取るという方式だったが、福祉特区における孤児院の支援は補助金ではない。
新しく建設されている孤児院の側に大広場を作り、そこを中心にした地区整備を行うことだった。
具体的に言うと、舗装された道路を直線的に作り、上下水道管を配備。区画整備した場所には警備隊と消防隊の分署、病院、学校、給食施設を建設する。
また、特区内で働く人々のための専用集合住宅や大型の商店街、そのための物流拠点も作られる。
既存のゴミ焼却場及び集積場にもかなりの設備投資を行い、匂いや煙への対策を強化。景観に配慮するための森林公園を造設すると共に、燃料の供給源を視野に入れた植林地帯を併設する。
ゴミ焼却場の熱は給湯施設の方で活用され、福祉特区内にある大型の施設においてはお湯が供給されるようにもする。
つまり、孤児院があることによって福祉特区は公的な都市整備支援の恩恵を受けられることを対価に、地区や住民が孤児院を支えていくという構想だ。
福祉特区は失業者や低所得者を率先して地区営施設で雇用し、社会的弱者を支援することにも取り組む。
地区営施設における給与は王都民税が天引きされることを前提に、調整地区とは思えないほどの高給設定になっている。
それでいて、王都民税として回収される分のほとんどは福祉特区の特別予算として還元され、孤児院だけでなく地区全体の福祉体制の向上へつなげる資金源になる。
この構想は王太子領の体制作りやその成功を元にして生まれたもの。
まさにクオンが王太子でありヴェリオール大公であるからこその案だった。
王太子、福祉特区を新設!
福祉特区の整備を担う公団が新設!
社会的弱者を救済し、王都全体の治安と生活水準を向上させる新規の施策!
報道機関は一斉に福祉特区並びにその施策の内容を伝えた。
それは国王や統治制度を支えていた王太子が、ヴェリオール大公として王都の地方行政に関わることを確実に知らしめるには十分だった。
これまでに王太子が手掛けた施策は数多くあるが、どれもが長期展望を見据えたものばかり。
莫大な費用と年月がかかることを懸念されても、王太子は工夫をこらしながら実行してきた。
その成果は王太子領改革の成功やエルグラード全土におけるインフラの普及にあらわれており、国民の生活の向上や経済の発展を支える基盤になっている。
王太子に対する国民の信頼と期待は極めて大きく、新施策によって王都に変化が訪れることを人々は予感した。
そして、その予感は当たった。
目に見える変化がすぐにやって来た。
王宮並びに王都にある公的組織が、凍結あるいは慎重だった新規採用と中途採用を大々的に募集した。
また、福祉特区の整備を行う都市開発公団が発足、その人員についても募集した。
経済同盟による輸出入及び国内運輸網の監視を強化するため、国境地帯並びに地方大都市における公的人員の増加指示が出ており、各組織の準備が整い次第求人を募集することも公表された。
エルグラードの主要な地域に好条件かつ安定的な求人が大発生。
その影響は好景気ムードを呼び込んだ。
孤児院問題のせいで不安定な状況になっていた王都は、輝かしい光に照らされたかのように息を吹き返した。
久しぶりに短い……かなり。すみません。
一旦きって(二)にします。
またよろしくお願いいたします!
 





