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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編
108/1357

108 就職先

「ところで、リーナの就職についても報告がありませんね?」

「そう言えば、報告がない」

「セブンとライアンを呼びなさい」


 ロジャーはすぐにセブンとライアンを呼んだ。


「王宮の新規雇用の募集についてはどうなったのです?」

「王宮の募集についてはライアンが確認することになった」


 セブンが答えた。


「報告しようと思ったが、ロジャーが公爵家に戻っていていなかった」


 ライアンが答えた。


「今期の新規採用はない。募集の告知もない」

「ないのですか?」

「ないのか?」


 エゼルバードとロジャーは驚いた。


「後宮で大量の解雇者が出たせいだ」


 後宮は縮小化のために人員整理、つまりは解雇を検討していた。


 侍従については違反事件のせいで大量に解雇することができたが、侍女の重要度が高まったせいで侍女を解雇できなくなった。


 男性の召使いは元々少なく、力仕事を任されていることもあって解雇は無理。


 一部のエリアが閉鎖されるため、掃除する必要がないということを理由にして掃除部の人員を大量に解雇することになった。


 とはいえ、あまりにも多くの解雇者を出すと、後宮の評判が悪くなる。


 失業者が増えるのも、借金を返せないために身柄を拘束される者も増える。


「王宮の今期及び来期分予定の求人を、後宮の解雇者の再雇用枠にした」


 そのせいで求人がなくなったとライアンは説明した。


「それは召使いの求人では? 侍女や侍女見習いは別では?」

「後宮が人員整理をしたため、王宮の方も人員整理を検討するらしい」


 王宮は毎年人員を採用しているが、新卒以外にも中途採用を多く取っている。


 労働力不足になっていないが、逆に取り過ぎてる可能性が浮上した。


「適切な人員採用をしているか調査する間の募集は凍結だ」

「それは王宮の全ての職種か?」

「官僚は関係ない。王宮に住み込む職種が対象だ。王宮省は女性の方から調査するらしい。侍女と侍女見習いは凍結だ。徹底するため、特別採用もダメらしい」

「特別採用枠も?」


 王族であるエゼルバードが推薦しても採用させることはできないということだった。


「ずっとは預かれない。ただでさえ期間を延長している」


 ノースランド公爵家での行儀見習いは一カ月程度と見込んでいたが、リーナはそれ以上にいる。


 ロジャーとしてはさっさとリーナを就職させたかった。


「ライアン、新しい恋人をほしくないか? 妻候補にしてもいい。真面目で誠実で従順な女性だ」

「ロジャーが恋人にすればいい。ノースランドにいるなら丁度いいだろう?」

「ノースランドには祖父母と両親が選んだ婚約者候補が行儀見習いとしている。潰されるだけだ。そうなると、私だけでなくエゼルバードも困る羽目になる」


 兄上に配慮するよう言われていますからね……。


 エゼルバードは考え込んだ。


「俺の両親が身分主義者だ。真面目で誠実で従順よりも出自の方が重要だ」

「一人息子には何かと甘い。なんとかしろ」

「セブンが引き取ればいい」


 全員の視線がセブンに向けられた。


「……やはり取り消す。俺にも良心がある」

「さすがにセブンはない」

「リリーナ・エーメルの処遇か?」

「そうだ」

「王宮以外の求人はないのですか?」

「後宮ならある」


 エゼルバードとロジャーは顔を見合わせた。


「後宮は人員を削減するはずでは?」

「求人を凍結していないのか?」

「一般採用枠は凍結されたが、特別採用枠は対象外だ。若干名ではあるが、第二王子やノースランドの推薦があれば、採用されるだろう」

「ああ、側妃候補分じゃないか?」


 ライアンは気づいた。


「候補がいる限り、候補付きの侍女と侍女見習いが必要だ。何らかの事由で辞めることになった場合、完全に凍結してしまうと補充できない」

「それでか。だが、後宮か……」


 後宮を辞めさせたというのに、また戻すことになってしまう。


「不味いことになりませんか? 素性が変わっています。知り合いと遭遇すれば、面倒なことになりそうです」

「配属先の方に手を回せばいい。見た目を変える手もある」


 セブンが答えた。


「女性は化粧や髪型で印象が変わるからな」


 ライアンは反対しなかった。


「特別採用枠だからこそ、希望も通りやすい。


 第二王子の側妃候補付きにすれば、召使いとはほぼ顔を合わせない。


 勤務は三階、部屋は五階になる。


「見た目も変えればいい。髪型や化粧の仕方だ。印象が変わる」

「ロジャー、どう思いますか?」

「これ以上長居されるのは困る。母上が人形にして遊び始めた」

「気に入っているのであれば、妻候補にどうですか?」

「後宮でいい。セブン、手続きはどうすればいい?」

「説明するのが手間だ。こちらでする」

「わかった」

「明日、ノースランド公爵邸に行く。本人の署名が必要だ」

「必要な書類をよこせ。私の方で署名をもらっておく」

「別件がある。ついでだ」

「別件?」

「ヴィクトリアと話す必要がある」


 セブンの妹はロジャーの姉ヴィクトリアが非常勤講師を務める学校に通っている。


 時々セブンは妹のことでヴィクトリアに特別な配慮を頼んでいた。


「また何かやらかしたのか?」

「出席日数が不足しそうになってきた」

「いつも過ぎるな」

「セブンにさせなさい。ロジャーが王宮にいなくて最も困るのは私です」


 リーナの署名をもらいに行くのはセブンになった。


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