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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編

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103 三階ボックス(一)



 セシルが案内したのは、前と同じ三階の五番ボックスだった。


「ボックスには基本的に六席あります」


 最前列に三席、二列目に二席、最後尾に一席。


「最初は定位置に座ります。上演開始に合わせて着席した後は、見やすくなるよう少しだけ席をずらしても構いません。今日のボックスは私たちだけですので、最前列で観劇します」


 リーナのチケットにある座席番号は四。


 二列目の席の番号だった。


「時間ギリギリになってから詰めるのでは?」

「本来であればそうですが、今回は一番から三番のチケットは使用されないのがわかっているので、先に詰めても大丈夫です」

「そうでしたか」

「詰めてはいけない席には、予約という紙が置かれています。その場合は誰も座っていなくても詰めてはいけません。予約という紙が人の代わりだと思ってください」

「わかりました」

「先に言っておきますが、第一幕が終わったらすぐに移動します。レストランを予約しているのですが、先ほど見学したパンの間です。逆側なので移動に時間がかかります」

「レストランを予約しているのですか?」


 チケットの説明の時に確認したが、リーナのチケットはビュッフェ付き。


 わざわざレストランを予約する必要はないように思えた。


「そうです。レストランの予約は取りにくいのですが、日中の公演だと少しだけ取りやすくなります。良い経験になるので予約しました」

「ご配慮くださったのですね。感謝いたします」

「今日は通常公演なのですが、招待客もいます。年間指定席の購入者は貴族だけではありません。王家や国の機関が所有している場合もあります」

「ロイヤルボックスのことですか?」

「そうです。一番舞台に近い場所を見てください。豪華なボックスがあるのがわかりますか?」

「わかります」

「あそこも王家が所有しています。国賓や国王陛下の側妃が着席されることが多いですね。今日は側妃候補がいます」


 女性達が席に座っているのが見えた。


「あの場所だけではなく、こちら側の同じような場所にも特別なボックスがありますので、側妃候補がいるでしょう。人数が多いので、数カ所に分かれて観劇しているのです」

「なるほど」


 やがて時間になり、オペラが始まった。





 第一幕が終わり、幕間になった。


 リーナはセシルに手を引かれ、四階の廊下を走ることになった。


 三階から二階を経由して降りると時間がかかってしまう。


 そこで階段を上って四階に行き、反対側の方へ走る。


 そして、四階と一階をつなぐ直通階段を使用して降りるルートだった。


「気を付けて。ゆっくりで構いません」


 二列で人々が下りていく。


「幕間開始後の十分間は下り専用です。次の五分間は上りにも下りにも使用されるので一列です。残り十分は上り専用でまた二列になります」


 時間によって、上りや下り専用になっていることをリーナは学んだ。


 レストランにはすでに大勢の人が着席しており、それぞれが食事をしていた。


 リーナとセシルの席は出入口から近い場所にあり、テーブルの上にはすでに料理が乗せられていた。


 飲み物を注文して、食事を始める。


 デザートと紅茶がサービスされた時、鐘が鳴った。


「セシル様、五分前の鐘です」


 リーナは焦ったが、セシルは落ち着いていた。


「今は多くの者達が移動しています。デザートを食べながら混雑が緩和するのを待ちます」

「急がなくてもいいのですか?」

「今日は通常公演です。王族が出席しているわけではないので、座席に戻る時間が少々遅れても大丈夫です」

「でも、遅れない方がいいのではありませんか?」

「大丈夫です。遅れるのが普通なので」


 デザートを食べるセシルに倣い、リーナもデザートを食べた。


 その間にも、レストランにいた人々がいなくなっていく。


 二人がレストランを出たのは最後の方だった。


「こちらです」


 セシルがリーナの手を引いて向かったのは、レストランに来る際に使った階段の方ではなかった。


 一階の通路にあるドアの前には警備の者が立っていた。


「ここを使用します」


 セシルはポケットから鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んでドアを開けた。


「入ってください。すぐに」


 部屋に入ったリーナは驚く。


 普通の部屋ではなく、階段がある部屋だった。


「ここは王族やその同行者など、特別な者だけが使用する階段の部屋です。緊急用ですので、あまり使われることはありません。今日は特別にここを利用していいという許可をもらっています。以前にも利用されましたか?」

「いいえ。初めてです」

「部屋の中がどうなっているかについては秘密にしてください。私は王太子府に勤務しているので、この機会に階段に問題がないかを確かめるよう言われました」


 階段を上ると、そこには別のドアがあり、二階の通路に出ることができた。


 時間を過ぎているため、警備以外はいない。


 二階から三階へ続く階段を上り、二人は五番ボックスに戻った。


 オーケストラはすでに演奏をしているが、幕は上がっていなかった。


「側妃候補が観劇に来ていると、いつも着席が遅れます。演奏は始まるのですが、幕は上がりません」


 それがわかっているからこそ、セシルはレストランで急がなかった。


「鐘を鳴らすのを遅らせないのですか?」

「鐘を遅らせるというのは、決められた時間を公式に遅延させることになります。王族のためでなければ、通常通りに鳴ります」

「側妃候補のためだとダメなのでしょうか?」

「側妃候補はあくまでも候補。身分は元の身分と同じです。ただの貴族だというのに、特別な配慮をするわけがありません。逆に王族の候補は損します。貴族の候補と同じ扱いなので、待遇が悪いと感じるかもしれません」


 しばらくすると幕が上がり、第二幕が始まった。



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