102 待ち合わせ
王太子は約束通り、リーナをオペラ鑑賞に招待した。
王立歌劇場は王宮に次ぐ第二の社交場で、日中と夜の公演がある。
リーナが招待されたのは平日の日中公演で、身分が低い者や年齢の若い者、場慣れしていない初心者でも利用しやすいと言われていた。
リーナはノースランド公爵家の馬車で王立歌劇場に向かうと、教えられた通りに正面出入口のあるロビーで待ち合わせている人物を待った。
どんな人かしら……。
リーナは緊張しながら自分のドレスを見た。
リーナが勉強するために外出することを一番喜んだのはノースランド伯爵夫人で、喜々としてドレス選びを楽しんだ。
連日、リーナを着せ替え人形にしたともいう。
「失礼ですが、リリーナ・エーメル嬢でしょうか?」
「はい」
「初めまして。私はセシル・ベルフォードです。本日はエスコートを務めます。よろしくお願いいたします」
「初めまして、ベルフォード様。よろしくお願いいたします」
「名前で構いません。ここに長居は無用ですので移動しましょう」
「はい」
リーナはセシルにエスコートされ、正面玄関のロビーから大階段の間へと移動した。
「こちらに来るのは二回目だと聞いています。王立歌劇場は特別な歌劇場ですので、礼儀作法を守らなければなりません。勉強されているとは思いますが、案内しながらご説明させていただきます」
「よろしくお願いいたします」
リーナはセシルの案内で王立歌劇場の中を見学することになった。
待ち合わせ場所として多くの者が利用する大階段の間、身分が低い者が社交をする薔薇色の間、レストランのパンの間、チケットを見るだけでさまざまなことがわかるということ教えられた。
「そろそろ席の方に行きましょう。開演間際は階段や通路が混み合いますので」
リーナはセシルにエスコートされて三階に向かった。





