101 側近と側近(二)
「何だ?」
「孤児院の件だけど、こっちにも相談して。王太子から第二王子にそういう話をしているはず。国王は王太子に内密の処理を回したくないから、そっちに話が行くよね? あるいは第三王子とか。でも、そんな気遣いはされたくない」
「検討するが難しい。いちいち報告するようなことではない場合もある」
「キフェラ王女の件だけど、時間稼ぎは本当にやめて欲しい。第三王子も怒っている。国境付近の治安悪化問題が長引いているのはわかっているよね?」
エルグラードとミレニアスは表面的には友好的に振る舞っているが、問題を抱えていた。
「キフェラ王女は年齢的に婚期を逃している。死ぬまで留学でもいいらしい。最も国に貢献する方法は、帰国しないことだとフレディが言っていた」
ヘンデルは苦笑した。
「だからといって、後宮に永住されても困る」
「側妃候補ではなく、ただの他国人留学生という立場であればどうだ?」
「勉強する気がないじゃん」
「帰国する気があるかもわからない」
「費用のことも考えてよ。全部が自腹じゃない。自腹ならいいわけでもない。外務省だっていつまでも予算を負担したくないはずだ」
「外務省に負担させているのか?」
ロジャーは眉を上げた。
「知らなかった?」
「知らなかった」
「第二王子の側妃候補は国内貴族の令嬢ばかりだしね。キフェラ王女は他国の者だ。外交的な意味合いで候補になっていることを考慮されて、外務省が一部負担している」
「なるほど」
「孤児院の件で忙しいだろうけど、キフェラ王女のことは外交問題につながる。優先だよ」
「わかっている」
「リーナちゃんの借金も早く請求して。出自に関する情報も欲しい。王太子に接触した貴族の令嬢を調べないわけにはいかない」
「今夜は偶然だ。今後関わる可能性は低い」
王宮に就職させる気でいるくせに?
ヘンデルはそう思った。
「残念ながら関わることになる。リーナちゃんが大号泣しちゃってさ。慰めるために、悲劇じゃないオペラに招待することになった」
ロジャーは驚いた。
「王太子が? 誘ったのか?」
デートに。
「王太子は執務に決まっているじゃん。口止め料代わりの招待だよ。俺が適当な担当者を選ぶ。ヴィクトリアも一緒に呼んだ方がいい?」
「やめろ。余計なことは教えたくない」
「じゃあ、一人だけね。今夜のオペラでリーナちゃんを見染めた貴族がいて、オペラに招待するって感じでもよい?」
「好きにしろ」
ロジャーは即答した。
リーナに個人的な好意を持っているのであればおかしい。
第二王子の話はやはり嘘だとヘンデルは思った。
「男爵家の令嬢だし、担当者も同じぐらいかなあ。ロジャーにチケットを送った方がいいかな?」
「それでいい。担当者が誰かも教えろ」
「ベルフォード」
「チケットだけよこせ。送迎はなしだ。歌劇場で待ち合わせればいい」
「わかった」
側近同士の話し合いが終了した。





