作中神話要素解説
オリジナル要素含む神話要素の解説です。本編のネタバレを含みます。
お楽しみください。
◇近宮居文【人物】
日本のホラー作家。一般人には無名に等しいが、ホラーマニアには有名な人物。
ペンネームの由来はスティーブン・キング。
サイコホラーを中心に執筆活躍するが、昭和初期の本邦オカルト事情にも詳しく、その分野では日本有数の知識人。
作品の幾つかはVシネマ等で映像化されている。
中でも『大正切り裂き草子』の映画化である『大正切り裂きジャック』は遊郭を舞台にした作品だったが、大物有名女優の起用、アイドルグループが主役と主題歌、大正期なのに日焼けダンスグループの挿入、原作に登場しない明智小五郎の登場など、ファンからは「日本映画の恥」と呼ばれたが、絢爛なゲイシャダンスの描写が海外でバカ受けした。
研究の一環でフィールドワークもこなしており、その中で四面館跡地を発見。
その場所で何らかの体験をして、結果地下保管庫を発見。中に仕舞われていた十数枚の絵画を回収する。
◇内藤靖臣【人物】
大正期から昭和にかけて、本邦のオカルト分野で活躍した人物。
古文書の蒐集と研究。怪奇画の蒐集などでも知られている。
竹内文書の研究でも名を残し、遺跡発掘などにも資金を援助するなど、文化活動家でもある。
よく公では内藤伯爵と自称した。これは元々親の遺した莫大な財産で高等遊民を気取った彼を友人たちが称した物だったが、後に自嘲を込めて自ら名乗った。
しかし、後世では彼が蒐集した内藤コレクションの優秀性や研究内容が評価され、海外でも『カウント・ナイトー』として尊称となっている。
1944年4月15日深夜未明に、何らかの事故で死亡。崩壊した四面館と共に翌日に発見された。
晩年は泥沼化した戦争の終結の為に旧支配者の復活を試み、儀式失敗で死んだと言うのが真相。
◇内藤コレクション【目録】
内藤靖臣が生涯を通じて蒐集した神話関連の古文書や稀覯本。絵画、彫刻などの美術作品。曰く付きの古美術品。自身の研究物も含んだ、神話事件の研究などを纏めてそう呼ばれている。
戦中の疎開の際に彼自身が目録を纏めた。
しかし、内藤伯爵が死に、戦後の混乱の中でほとんどが散逸してしまった。
『内藤文書』と呼ばれていた時代もあるが、むしろ海外研究者の評価が高く、現在は内藤コレクションで統一されている。
◇金湖克馬【人物】
1925年当時美校生だった青年。醜悪な青い油絵作品『九つの瘤』を描いた後消息を絶った。
実は彼は『内藤伯爵』に導かれ、ルルイエを再び海中に沈めるべく内なる神魔の力で戦った運命の戦士の一人である。
ルルイエが再び海に没したのは、彼らが大いなるクトゥルフを再封印する事に成功したからである。………かもしれない。
絵を描き上げた後、彼は青い扉を潜って、普遍的無意識の狭間へと旅立った。
◇蛸岩【巨岩遺跡】
米沢市南東の山奥に存在する一種の環状列石。※オリジナル設定なので探さないでください。
全高二メートル弱。縦に置かれた巨大な楕円球状の岩の周囲に、蛸の脚を思わせる細い石が十本ほどが埋められている。その両脇には三角状の岩を据えている。
設置された時代的には縄文時代と考えられている。
周辺で起きる自殺や事故、事件など非常に奇怪な出来事に関わる事が多く、米沢市の隠れたホラースポットとなっている。
伝説的な歴史としても、上杉家の名宰相として知られる直江山城守兼続が米沢転封の際に、身命を賭して繁栄を願って祓ったと言う話も残っている。この一年後に直江山城は亡くなった。
その正体は、大いなるクトゥルフのテレパシーを受信拡散する祭壇である。信者が失われて久しい今も、効果は継続している。ある意味、超高性能。
もっとも、大いなるクトゥルフが目覚めれば地球規模の毒電波はデフォルトなので、その時が来れば役目は終わる。
◇四面館【建造物】
内藤靖臣が米沢の山奥に建てた疎開用の別邸。
奥羽山脈の関係上か米沢は爆撃を受けなかった町の一つであり、疎開先としては適当だった。
と言うのは建前で、本当の目的は大いなるクトゥルフと繋がる蛸岩を利用する為の呪術拠点だった。
内藤は遺跡調査などにも資金援助し、日本各地の様々な遺跡情報を持っていたのである。
十字型に建物を配置し、中庭への出入り口を隠し通路のみとした設計。
中心の大穴は館の完成後、魔術によって開けられた。
◇黒乃ナイ【化身】
ある時はJK。ある時は学校の怪談に登場する仮面の女。ある時は謎の学芸員。ある時は路地裏の古本屋の店員。そしてある時はヴィクトリアンメイド。
その正体は、這い寄る混沌ニャルラトホテプの化身。
TRPGだと人間形態ではAPPは基本的にはMAXらしいが、化身なのでその限りではない。まあ自由自在だろうし。
詳しくは、拙作『ナイは混沌の声』参照。
この物語に於いてニャルラトホテプは特に大きく関わってはいない。
内藤伯爵に怪しげな話を吹き込んだわけでもない。
そもそも内藤伯爵が別邸に居て最期を迎えた際に、彼の他には誰も居なかった。
働いていた使用人は米沢に暇を出しており、翌日に彼らが発見者となって内藤靖臣の死が確認されたのである。
実は内藤は二種類の儀式を用意していた。
一つは本文のように、古代の東アジアに君臨した腐敗森林の盟主ザ=ドゥーガを召喚する事。
もう一つは、蛸岩を使って大いなるクトゥルフの目覚めを引き起こす事。
本来の内藤はギリギリまで悩んで後者を選択した。
しかし、ニャルラトホテプによって迷い込んだ未来人の存在を知った内藤は、より確実な大いなるクトゥルフの目覚めを引き起こせる前者を選択する。
黒乃ナイはあの場所に存在しておらず、『私』に対する案内人なのである。
◇武則天の水鏡【マジックアイテム】
中華帝国二千年の歴史上における唯一の女帝、則天武后こと武則天に由来するマジックアイテム。と言うか実際は商王朝頃から伝わるアーティファクト。
そもそもは則天武后が嫁いだ相手である唐の高宗の父が、則天武后による易姓革命の不吉を予見した未来観の水鏡である。
武周を建てた武則天の手に渡ってからは、彼女はこのアーティファクトで自身に逆らったり謀反を企らんだりする相手を予知し、凄惨苛烈な処刑を行った。
その後は中華帝国の歴代王朝に引き継がれていくものの、武則天に関わる不吉な道具として忘れ去られていく。
清朝末期、宝物庫の役人が戯れに使用してみると、西太后による政治の混乱で清が潰れていく光景を見てしまい錯乱。役人は捕らえられ拷問の末に死亡。
その後、清王朝の他の宝物同様流出し、日本に流れ着いた。
現在は内藤コレクションの一つとして目録に記されているものの、所在は不明である。
◇ザ=ドゥーガ【旧支配者】
『腐敗森林の盟主』『穢れた甲虫』『黒き森の主』などの異名を持つ旧支配者。
大いなるクトゥルフがムー大陸に君臨した同時期に東アジアに勢力範囲を持っていた。その本拠地は、現在の日本海の海底になっている腐敗森林である。沖縄沖の海底遺跡は、当初はザ=ドゥーガを崇拝する祭壇だったと言う説がある。
父にヨグ=ソトース、母にシュブ=ニグラスを持つと言われるが、実際の所は不明である。
その大きさは一つの森に相当すると言われ、姿は万種の昆虫の特徴を備え持つとも、粘液の球塊から昆虫のパーツが放射状に飛び出しているとも言われている。
昆虫人間や鈍色の鉄脚などを奉仕種族とした。また、地球に昆虫を産み落とした旧支配者であると言われている。時が来れば地球上の昆虫は全てザ=ドゥーガの隷属となり、生きた肉団子に変えた生贄を捧げ続ける。
ザ=ドゥーガが顕現した場所は、あらゆる物が腐った大鋸屑に変質する。
◇昆虫人間【奉仕種族】
昆虫と称するが、実際は既存の昆虫の何にも似る事の無い外骨格生物。
身長は成人でおおよそ百五十センチ。基本肉食。
司祭である女王と兵隊に分かれる。
女王が命と引き換えにザ=ドゥーガを産み落とすと信じられている。
現在はほぼ壊滅。
◇鈍色の鉄脚【奉仕種族?】
人間の脳に寄生するザ=ドゥーガの落とし仔。寄生されても人間は普通に生活できるが、突然の急成長と共に人間は発狂して死ぬ。
更に脳は大鋸屑状に変わり、眼球などの穴から黒い節足が飛び出す。
この状態になると人間を操り人形にする事ができる。
人間の身体を割って、カナブンのようなフォルムの巨大甲虫になる。
リプレイ動画が凄過ぎるので何か考えてみようかと思うこの頃。