1話
意識が在る
「・・・・・・?」
深い森の中
ボロボロの白骨死体の近くに
横たわる
人形は意識を持った
「!・・・???」
意識があるが
それだけだった
すっからかんの頭脳
「?・・・?!?・・?」
何も分からない
それは恐怖
「????????????!」
何も分からない恐怖に
ただ怯えるだけの人形
「・・・・・・!」
目線の先
その白骨死体に
人形は覚えがあった様な気がした
「・・・・・・」
その白骨死体に
触れようとするが
動けない
いや
動き方が分からない
だが
ビュウゥゥ
一陣の大風により
「?」
ゴォン
触れた
「いいいいいいいいいいいいいいいい!!」
そして
わかった
自分が何なのか
「あれ?
なんで?
生きてるの?
私?
違う?
私・・違う
僕・・違う
分からない
人間だった事
それだけ・・・」
なぜ
それだけしか
分からなかったのか
人間と言う
生物で在った事は
分かったが
それ以外は
何もかも
失ってしまった
「大きい・・・
全て大きい
私が小さいから?
あれ?
私は小さくなった
私は人形・・・・
人間・・・違う
生物・・・違う
・・・そう」
うつむき呟く
「前
死んだ
今生きてる?
違う
死んでる
生きてない・・・」
その時
「痛い・・」
頭痛
『お母様?』
そう聞こえた
「うぅ・・
なんなの?」
『こっち来て
お母様』
「誰なの?」
『声
聞こえている
お母様にしか
聞こえないはず
だから
お母様。
来て
お母様
会いたい』
「そう・・でも
歩けないの
何故か
足に
力が入らないの
ごめんね」
『足?
お母様
動かない?
・・・ごめんなさい』
「え?」
グンッ
と突然引っ張られるように
体が動き出した
「えっ?あ?んん??」
ゴンッガンッ
木に激突しようと
お構いなしに
引っ張られている
(なんで
引っ張られているの?
なんで
痛くないの?)
なぜ
引っ張られているのか
そして
痛みを感じない事に
疑問を抱いた
『お母様
こっち
来て欲しい
だから
引っ張る
お母様
痛み
無い』
そう聞こえた
(そうなの?)
『そうなの』
不思議とそのまま納得した
しばらく経って
『来た』
そこには
古びてはいるが
未だ神々しさを残し
神殿を思わす
巨大な建造物があった
「すごい・・・」
『お母様
家
今開ける』
ズズズズズズ
強固そうな
扉がゆっくりと
開きだした
『来て』
グンッ
とまた引っ張られ
まだ半分も開いていない
扉の中に
消えていった