真っ暗な教室
トンデモ挑戦記第1章です
そんなこんなで弁当を2つも持って来た僕は、数学の時限で寝る失態以外は問題なく1日を過ごした。
そして、部活動の時間。夕日差し込む部室にて、部員4人は思い思いの本や雑誌を広げている。
唐突に、得田部長が静寂を破った。
「みんな、今日は夜の学校に挑戦だ!恐怖に勝つのも大事だが、もっと大事なことがある。」
得田部長は真剣そのものといった表情で続けた。
「それは先生方に見つからないことだ!見つかった瞬間に挑戦はおしまいだからな!」
…部長として言ってはいけない台詞のような気がする。まあ、その通りだが。
それからはまた、質問することもなく、手に持った本をそれぞれ読み始めた。
◆
チャイムがなった。
これは部活動終了のチャイムだから、15分後に最終下校のチャイムがなる。
「挑戦部よ、避難だ。屋上へ上がるぞ。」
そこで再び唐突な部長からの指示。
「え、何でなんですか。」
僕は聞き返すと、別な方向から答えが飛んできた。
「それは、この学校の方針について詳しくないと分からないだろうな……
実は、この学校の最終下校はそんなに厳しいものじゃなくてな、時間までに出なかったら閉じ込められるとかも無いんだ。」
江田副部長だった。副部長は、廊下の外を警戒しながら話を続けた。
「でも、先生が教室を全て見て回るんだよ。でも、そこで捕まっていたら夜の活動なんてできない。だから一時避難だ。」
部長は説明が終わるのを今か今かと待っていたが、僕たちがカバンを持って入り口まで来たので、避難を開始した。
まず警戒しながら廊下に出る。右折し、階段まで走り、上った。屋上へ続く扉には鍵がかかっていたが、どういうわけか部長がカギを持っていて、開けて入った。
夕日が大変眩しい。徐々に沈みゆくそれを目を細めて見る部長副部長の姿を見て、やっぱりしゃべらなければルックスは100点満点だと思った。
やがて最終下校のチャイムが鳴り、それから1分たたないうちに先生の走ってくる音がした。が、屋上の扉はチェックすらせず、また下に走って行った。なんて無防備な。
「先生、こういうときは有り難いけど、もうちょっと気を配ろうよ…ここから入ってくる人もいるわけだし……」
と独り言をつぶやいた。すると隣にいた上田は、
「有り難いけどっていうところを見ると、もう馴染み始めたみたいだね…」
―そう言われれば、有り難くないかもしれない。
◆
やがて完全に日が沈み、時刻は僕の腕時計で6時半。部室に戻って晩御飯ということになった。
みんなぞろぞろと、真っ暗になった校舎内を先輩方のライトを頼りに黙々と進んでいく。
部室に帰ってきた。避難した時と同じ状況になっている。カバンまであることを考えると、先生はこんなに奥までしっかり見なかったのかもしれない。先生の手抜きが次々と露見する一日だな。
というわけで、侵入できた記念の意味を込めて、みんなで乾杯し、弁当を食べた。保存時間が長かったからそこまでおいしいわけではなかったが、その味は僕の舌に深く刻み込まれた。
1章につき5話くらいで考えています