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7/21

7日目

人影はバラバラで、あまり混んでいない空港に私達はいた。

ヒョル達は30分後、ここから韓国へ行ってしまう。

「雪、ありがとう。雪のおかげでとても楽しい思い出できました。」

チャン君はは私に向かってお礼を言う。

「スワン楽しかったです」

ウンネ君はニコニコと私に手を差し出す。

スワン?あぁ湖のボートの事か。

「私も楽しかった」

ウンネ君と握手を交わす。

「眞樹と優羽に最後に会いたかった…」

ヨンハ君は少しうなだれている。

「ごめんね、学校あるから…」

チラリと少し離れた場所にいるヒョルへ目をやる。

何やらずっと電話をしている。

ウンネ君がヒョルへ近づいていき、2人で話をしている。

「雪は…」

「へ?」

ヨンハ君が話かけてきた。

「僕達が韓国で何をしているのか知ってるんだよね。」

仕事の事だろうか。

「ヨンハ君は…俳優さんだっけ。」

彼は小さく頷き、微笑んだ。

「ただの韓国人旅行者で一週間すごせたのは奇跡に近い。あっちではどこに行ってもすぐに僕だとわかってしまう。有名人でない僕を慕って懐いてくれた眞樹や優羽がとても嬉しかった。気を使わない雪がとても嬉しかったです。」

気づいたの遊んだ後だけど…

ま、いいか。

「僕等は雪に会えたからこの旅行がもっと楽しくなりました。」

チャン君がハグをしてくる。

やだ、なんか切なくなってきた。

少し目が潤む。

「沙世はこないのですか?」

そしてためらいがちに聞いてきた。

あら?あららら?

チャン君本気で沙世の事を?

もしかしてもう一つ恋が生まれてた?

いや、でも沙世はそんな事言ってなかったし。

「仕事あるから…」

私の言葉にチャン君は深い溜め息をついた。

「沙世に…毎日電話をすると…また、必ずくると伝えてもらえますか?」

「いいけど、チャン君は沙世の事好きなの?」

すると彼は凄く照れながら「はい」と答えた。

「自分の気持ち伝えてないから内緒ですよ」

私の耳元でボソッという。

そっか、ここにも恋をした人がいたんだ。

ちょっと嬉しくなった。

「雪!」

ヒョルは電話が終わったらしく、私を呼び、手招きをする。

「なぁに?」

ヒョルの方へむかい、歩き出す。

ヒョルは私に一通の手紙を差し出した。

「これ、私のソウルでの連絡先です。忙しくて連絡出来ない日もあります。でも雪は私を信じて下さい。私も雪をずっとずっと思ってます!」

そして私にペンと紙を渡す。

「雪のパソコンのアドレスと住所教えて?」

私はすぐに書いた。

時間が迫っていたから。

「ありがとう」

ヒョルはすかさずバッグへそれをしまう。

「雪は可愛いから他の人に口説かれてもダメですよ!」

真剣に言ってくるヒョルが可愛い。

「大丈夫」

私は笑う。

「そろそろ時間だよ」

ヨンハ君が呼びにきた。

もっと話すことは沢山あるのに別れが近付いてくるとなにもでてこない。

ヒョルはを私を抱きしめキスをした。

「近いうち、必ず雪に会いにきます。」

そう言うと彼はとびきりの笑顔でいなくなった…


少し風邪がつよい。

強風で欠航になればいいのにと思えてしまう。

ヒョル達の乗った飛行機はゆっくりと動き始める。

彼に私の姿は見えているのだろうか。

欄干に手をかけ、一つ一つの小さな窓を見つめるが中を見ることはできない。

飛行機はだんだんと加速しはじめる。

本当に離れてしまうのだ…

日本の中での遠距離恋愛ではなく、会いたいと思ってもすぐには会えない遠い人。

不安ばかりが胸にささる。

今、別れたばかりなのにもう会いたい…

歯止めを外した私の心は一気にヒョルへの気持ちで一杯になった。

人は転がるように恋をすることができる。

おばちゃんでも、母親でも、それは関係なく、女として生まれ女として愛される喜びは、どんな状況であろうとも色あせることない。

まして、恋から遠ざかっていた人ほどそれは色鮮やかにうつる。

泣きたくなった、でもこらえた。

これからどうなるかもわからないけど、ここで泣いてちゃいけないと思う。

ヒョルを私の人生の中心に考えてはいけない。

そんな事したら寂しくてすぐに私は逃げてしまうだろう。

私の人生の付属品ぐらいに想わなければきっと情報に振り回され、距離に阻まれ、恋は終わる。

37歳、だてに年はとってない。

自分の生活を一番に考えて生きよう、ヒョルはその日常に喜びをもたらしてくれる人として…会えたとき、連絡を取ったとき、それは私のご褒美だと思って頑張ろう。

ヒョル達の飛行機はすでに飛び立とうとしていた。

頑張るよ、ヒョルも頑張って。

こんな田舎に来てくれてありがとう。

こんな私を見つけてくれてありがとう。

…行っちゃった

バッグの中の携帯がなる。

メールだ。

(今日会えない?)

援交相手からのメッセージ

私からの返事は…

「好きな人ができたからもう会えません、今までありがとう」

私は一歩踏み出した。


さてと…

会社に電話入れないとな…沙世にもチャン君からの伝言伝えなきゃ。

車に戻り、コーヒーを一口飲んだ後会社と沙世に連絡をとる。

沙世とはライン仲間だ。

ラインを送るとすぐに返事が来た。

『今、昼休憩中です』

すぐさま返事をうつ。

チャン君の伝言に沙世は

『はぁ…私の事好きなんですかね?』

と返ってきた。

だと思いますが…

沙世は彼が韓国でアイドルをしているのは知ってるだろうか?

沙世にチャン君の事を聞いてみる。

『仕事ですか?なんか不規則な時間だとは聞いてたんで工場とか私達みたいな仕事だとおもってたんですけど、なんか聞いてます?』

うーん、私が話していいものかどうか…

とりあえずはぐらかした。

沙世との連絡は終わり、私は車を走り出す。

家に帰る途中、CDショップへよった。

(グループの名前なんだっけ?たしか美男子組だったような…ストレートすぎて笑っちゃったもんね)

韓流コーナーで捜す手間すらも省けるほど特集がくまれている。

その中でDVDもセットになっているものを私は購入した。

家に着くなり先ほどかったDVDを見る。

画面の中から現れたのは私の知らないヒョルだった…

激しいダンスに鍛えられた肉体、綺麗な歌声、顔つきまでも違っている。

彼のいる世界はこんなにも華やかで遠く、沢山のファンがいる。

本当にこの人が彼氏なのだろうか?

本当にこの人と一週間過ごしたのだろうか?

こんな凄い人だとは…

後悔した…

DVDの中のヒョルに圧倒され、気後れを起こしたのだ。

だけど、DVDの特典映像には私の知ってるヒョルがいた。

何気ない普段の様子、ウンネ君と仲良く話してる姿。

それはさっきまで私の目の前にいたヒョルだった。

(いけない、いけない)

誰だって仕事の時は普段とは違う、彼の仕事がアイドルというだけで、ヒョルはヒョルだ。

DVDを見終え、すかさずそれを自分の部屋へと隠した。

子供達に見つかれば大変だ。

でも、ちょっと優越感が沸いてくる。

あんな凄い人が私を好きと言ってくれる。

誰かと共有したい秘密…

でも、頭がおかしくなったと笑われるだけだろう…

ん、?

いた~!!話せる相手!

私は早速、沙世と今日会う連絡をとった。


「もう、大丈夫なんですか?」

ガヤガヤと賑やかな居酒屋で、私達はビールを飲んでいる。

「うん、明日から仕事でるよ!だからあんまり遅くはなれないけど…」

沙世は仕事終わりですテーブルの上のつまみをパクついてる。

「沙世はさぁ…チャン君の事どうなの?」

突然の質問にも沙世は手を止めず食べ続けていた。

「どうって…会った日から毎日電話は来てましたよ。あ、一回遊びにも行きました。後はヒョルさんと雪さんの事で連絡取り合ってたぐらいですかね」

あぁ、そうだ、沙世に連絡をとってくれていたのはヒョルに頼まれたチャン君だったのだ。

「そうだよ、突然玄関に差し入れなんておかしいと思った!あれはなんで??」

沙世はニヤニヤと笑っている。

「チャン君から電話きて頼まれたんです。ヒョルさんがどーしても雪さんに会いたいからって!ヒョルさん雪さんにゾッコンらしいじゃないですかぁ~」

私達の恋愛は、チャン君と沙世が繋がっていなければなかったかもしれない。

「んで、そっちはどーなんですか?」

…沙世に聞いて欲しくて誘った居酒屋、だけどヒョルの事を話せばチャン君の事もばれてしまう…

その時、ちょうどタイミングよくヒョルから連絡がはいった。

「ご、ごめん、ちょっと電話出てくる」

沙世ははぁいと手を振りビールを飲んでいた。

「もしもし」

「雪?今ソウルにつきました。飛行機から雪のかなしそーな顔見えたから早く電話しようと思って…」

ヒョル…ありがと、でも今聞きたいのはそんな事じゃないんだよね。

「もしかしてまだチャン君と一緒?」

突然チャン君の名前がでたのでヒョルはちょっと不機嫌ななりながらイエスと答えた。

「ごめん、代わってくれる?」

すぐにチャン君がでる。

「はーい、雪どうしたの?」

「あのね、今、沙世といっしょなんだけどチャン君の仕事は言わない方がいいのかな?」

チャン君は一瞬黙った。

「大丈夫ですよ、いずれわかることだし、僕から伝えるタイミングは逃してしまいました…」

ううん、ダメだ。

私から伝えちゃいけない。チャン君の声を聞いて確信した。

「ダメ!チャン君、今すぐ沙世に電話して!自分の口から伝えて!でないと…私はいつまでもヒョルとの仲を取り持ってくれた沙世に報告ができないもの。」

しばし沈黙が流れる。

「分かりました。」

チャン君はそう言うと電話の相手はヒョルに替わった。

「どうしたんですか?」

ヒョルはなんの事かわからないでいる。」

「あのね、沙世に私達の事報告したいけど、そしたらチャン君がアイドルだってばれちゃうでしょ、だから私から言うよりも自分で話してってお願いしたの。あっ、もしかしてヒョルもアイドルだって沙世には言わないで欲しい?」

そうだ、もしかしたらヒョルも隠したいかもしれない。

私は浮かれすぎて考えていなかった。

「いいえ、沙世さんにはお世話になりました、彼女がいたから雪とうまくいきました。雪が話したいならかまいません。私にも雪にも2人の仲を知ってる人は必要だとおもいます。チャンの事、気にかけてくれてありがとう。今、多分沙世さんに電話してます。」

そっか、良かった。

「雪、今どこにいるの?」

ヒョルが聞いてくる。

「ん?居酒屋で沙世と飲んでるよ」

「ダメです!!今すぐ帰って下さい!雪は可愛いからそんなとこいたら男に声かけられます!」

…………♡

意外と独占欲強いんだ。

「大丈夫、話終わったらすぐ帰るから!明日仕事だし。」

何度も約束だよって繰り返し言われ、帰った後連絡をするという事で私は電話を切った。

急いで沙世のもとへ戻る。

沙世はぼーっとしていた。

「沙世?」

私が声をかけると、沙世は我にかえったようだ。

「雪さん!」

「は、はい!?」

沙世らしからぬ大声に私も周りの人もびっくりした。

「え、あ、す、すいません。」

自分の大声に気づき、沙世は俯く。

しかし、すかさず

「雪さんはいつから知ってたんですか?」

チャン君話したんだね。

「知り合って3日目ぐらいのときたまたま母が見てたDVDが彼等のでてたやつで…調べてみたらそうだった…」

沙世は口を半分開けている

「び、びっくりだよね、だって、こんなとこに韓国のスターがいるなんて思わないもんね」

何をはなしていいかわからずだんだんパニックになってきていた。

「雪さんはヒョルさんとどうなったの?」

沙世はチャン君より私達の事を尋ねてきた。

「私は…付き合う事にしたよ、考えて突っぱねたりしたけど…」

「そっかぁ~」

沙世は沙世で考える事沢山あるだろう。

いきなり有名人と知り合ってましたなんてね…

「沙世さん頑張って下さい、私、応援しますから!」

あー、今は私の事よりそっちなんじゃないの??

「沙世はどうするの?」

「私?何をどうするんですか?」

あれ?あれれれれれ?

「だからチャン君とよ」

沙世は首を傾げて

「でも、好きとか、付き合ってとか言われてませんけど…」

マジかー、チャン君大事な事何一つ言ってなかったんだ!

チャン君の慎重?さに私はチャン君が早く自分の気持ちを沙世に伝えられるように心から願った。


「んじゃ、今度DVDもってくわ」

居酒屋には二時間も居なかっただろう。

お互い、明日の仕事に備えて早めに切り上げることにした。

「はい、お疲れ様でした」

沙世と別れ、タクシーへ乗る。

…あ、ヒョルに電話しなきゃ、家に帰ってからでいいかぁ。

家に着き、ヒョルへ電話をかける。

「ヒョル?今帰ったよ」

彼は眠そうな声で電話にでた。

「…遅かったね」

「そう?」

今は21時過ぎ、たしか韓国と日本は時差はないからあっちでも同じ時間のはず。

「疲れて寝てたよ…雪に会いたい」

この人は思ったことをすぐに口にする人なんだなぁ

「今日別れたばかりじゃない、今からそんなんじゃどうするのよ」

そう言われて嬉しくないわけはないが、つい、大人ぶってしまう。

「でも…今度はいつ会えるんだろうね」

正直、本当にそう思う。

会いたいと願ったところで難しいだろう。

「大丈夫、すぐに会えるから」

「えっ?」

ボソッと言われた言葉が聞きとれなかった。

「明日早いから寝ます、雪も早く休んで」

一方的に切られた電話に少し憤慨しながら私も眠りについた…





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