母への報告
「いよいよだね…」
私は深呼吸して玄関を開ける
「ただいまー!」
ヒョルは私の後をついて来る
リビングのドアの向こうには母が仕事から帰ってきたばかりなのか忙しく動いていた。
「ばぁば」
私は思い切って声をかける。
「あら、お帰りなさい」
驚くほどにいつも通りだ
「あの、お客さん連れてきたんだけど…」
「あら、そうなの?」
にこやかに返事をしたが、私の後ろから出てきたヒョルに少し驚いていた
「あら?お客さんって男の人なの?」
ん?もしかして気付いてない??
母はヒョルと私を座らせお茶をだした
そして私達の向かい側に自分も腰をおろす
「あの、は、初めまして」
ヒョルもさすがに緊張しているようだ
その様子を見て母が笑う
「ばあば、実はね…いまこの人とお付き合いしてて…」
きっと男性を家に連れてきた時点で母はわかっているだろう
ならばさっさと言った方がいい
「そうなの?若くてイケメンね。あんたには勿体無い」
あまり驚いてはいない
「あの、私はパ…」
ヒョルが自己紹介をしようとしたとき、
「あー!ヒョルだあ!!」
と、眞樹がやってきた
「ヒョル?」
母が怪訝な顔をする
「今日、ヨンハ達は?」
眞樹がヒョルに抱きつき尋ねる
「ヨンハ?眞樹、このお兄ちゃんと会ったことあるの?」
眞樹はニコニコしてホテルに泊まったことや温泉へ行ったことなどを話した
「えーとヒョルさん?」
母の怪訝な顔は直らない
「はい」
ヒョルが返事をする
「あなたは韓国の方なの?」
「はい、私は韓国人です。こちらに旅行中に雪さんと出会い、恋をしました。今日はお母様にご挨拶をさせていただきにきました。」
母がポカンとしている。
娘の連れてきた男が韓国人だったらこんな顔をするのだろう
「本気?」
母が私とヒョルと交互に見つめる
お互いに頷く
「ま、好きにしなさい」
呆気ないほど認めてもらえた
「え、反対とかしないの?」
「反対して欲しけりゃするけど…」
母が笑う
ヒョルもホッとしたようだ
「でも…」
母が口を開く
やっぱりなんかあるんだ!
「お仕事は何をされているの?」
き、き、き、キター!
「あの、それは…」
私がどもるとすかさず眞樹が話す
「ヒョルテレビに出てるよ。ばあばの見てたドラマにでてたじゃん!ママはにてる人って言ったけどヨンハだって、チャンだって、でてたもん。そうでしよ、ヒョル?」
眞樹!!
覚えてたか!
母がぼーっとしている
しばらく沈黙が流れた後
「あぁっ!!」
と母が大声を出した。
「宮廷プリンスの!」
ヒョルを指差す
「いや、でも、にてる人よね?」
信じたくないのも無理はないけど…
「私の名前はパク・ヒョルです。そのドラマに出てました。仕事は韓国でタレントをしています」
母が卒倒しないか心配だった
「うそでしよ?」
それでも信じようとしないので私はヒョルのDVDを持ってきてつけた
「…自分の見るの恥ずかしいです」
母は一言も喋らずにテレビとヒョルを交互にみる
眞樹は目をキラキラさせて
「あーウンネもいる~」
と一緒に踊っていた
「雪、もうわかったから消して」
母に言われDVDを消した
お茶を一口飲み母が顔をあげた
「本当にあのパク・ヒョルさん?」
本当に疑りぶかいんだから…
「はい」
あの時の母の顔をなんと表現すればよいだろうか
この上なく幸せに満ちた笑顔
あんな顔、久しぶりに見た気がする
「ヒョルさん、娘のことよろしくお願いします」
ニコニコと母が手を差し出す
ヒョルはその手をギュッと握りしめる
「きゃー!パク・ヒョルに握手してもらったわぁ」
まるで大好きなアイドルにでも握手されたかのようなはしゃぎっぷり。
いや、アイドルなんだけどさ…
「ばあば、わかってると思うけどこのことは誰にも言わないでよ!」
母はわかってると頷く
しかし、その次にはヒョルからサインをねだっていた
大丈夫かなぁ…
一抹の不安を覚えたがとにかく母が交際を認めてくれたからよしとしよう。
その後、母がしつこく夕飯を食べていけと勧めたため、みんなで食事をする。
食事が終わると母が気をきかせ私の部屋に2人きりにしてくれた。
「適当に座って」
この部屋に男の人が入ったことはない
「あまりモノを置いてないんですね」
ヒョルがぐるっと見渡す
「うん、寝るだけの部屋だし」
ヒョルはスタスタと歩き、私のベッドでうつ伏せにながまる。
「…何してんの?」
返事はない
「ヒョル?」
すぅーと息が聞こえた
「あー、雪の匂いがします。」
顔をあげてこっちを向く
「ちょっとぉー!やめてよ!」
ヒョルを起こそうと手を引っ張るが動かない
くぅ~介護職員の私の力でも動かないなんて!
結局、逆に引きずり込まれた
ヒョルが私をギュッと抱き締める
「良かったです。お母さんが雪の味方で」
耳元で話し出す
「実は緊張してたから今凄くホッとしてる。怒られたり、反対されたりするの覚悟してました」
そっか、ヒョルも緊張してたんだ。
「ありがとう」
私はヒョルに回した手に力をこめた。




