出会い-9
出会い編はこれがラストです。
先に言っておきます。
すいませんしたぁッ!!
「ごらァ! 魔神のくせにアタシにあんなもの見せやがってェ!!」
白黒の世界に介入してきた蒼の炎から、シキが威勢よく出てくる。
見ず知らずの人間ならば、凄く下品な言葉を使っている少女だと思っただろう。
だけど、頭蓋を蹴り砕こうとしたり、フォークを人の目に突き刺そうとしたり、片腕で人一人投げ飛ばしたり、謎の黒い虎を倒したり、と俺が知っているだけでこれだけの実績を積み上げた少女なら、まあ、納得のできる口調だった。寧ろ、少し柔らかな物言いのような気がする。
っていうか、魔神ってなんだよ。
「あ、シキ。相変わらず貴女は無理するね」
うん。なんか白髪少女コヅキさんまで話に乗っちゃった。
このままじゃ、俺、置いてけぼりだ!!
「貴女が何を見たかは知らないけど、よっぽど酷い悪夢だったんでしょうね」
「調子に乗るなよ魔神。アタシは今、最高にブチ切れている。最高にブチ切れているっ!」
それは最悪な事態だ。片手で人一人投げれる人間のブチ切れ状態なんて、ろくなもんじゃねぇ。
「貴女こそ調子に乗ってるんじゃないの? ここは私のものなの。貴女がどんな悪夢を見たかは分からないけど、それは私が意図して見せたものじゃないから私に責任はない。なのにこんなところまで来て・・・・・ストーカーなの?」
「随分と礼儀っていうものを忘れたらしいな。アタシが今一度、強者への屈し方を教えてやろうか?」
「貴女みたいなバカ女に教わることは、何一つないわ。寧ろ私が貴女に強者への屈し方を教えてあげましょうか?」
「ヒートアップしている―――――」
「「うるさい、黙れッ!! 口出しするな!!」
じゃあ、俺だけ帰らせろよ。邪魔なんだろ?
俺は言いたい事も言えずに、ただただ途方に暮れていた。
だが、俺が途方に暮れようとも黄昏ようとも時間は進む。
「うるさい蝿が近くにいるから、ささっとケリつけようか」
「賛成ね。でも、蝿じゃないわ。張空小月っていう人間よ」
ああ、なんか白髪少女が優しく思える。
それに比べて、シキときたら・・・・・・・・・・・・・・・人のことを蝿呼ばわりしやがって。
「おい、シキ」
なんか別に今じゃなくてもいいと思うが、一応言っておこう。
「お前、人様に向かって蝿はないだろ」
「なんだお前。蝿って言われただけで傷付いたのか? 器の小さな人間だな」
「繊細な心の持ち主と言ってくれ。大体お前は、奢りなのに遠慮せずにデザートを食いまくるし、人をいきなり投げ飛ばすし。一体、人をなんだと思ってやがる?」
「デザート≧人≧張空小月」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ごめん。お前の認識は通常だったわ」
「自分を蔑み過ぎじゃない・・・・・・・?」
コヅキがツッコミ気味に呟く。
別にそんなことはない。世界の常識では『シキの人の認識は正しい』になってるだろう。
「もう言いたいことは、終わったか?」
「出来ればもう一つ」
「無理だ」
シキの問いに答えた俺にすぐさま拒否権が使用される。最初から無理なら聞くなよ・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば」
シキが思い出したように、突然言う。
「小月、お前は何でここにいる?」
俺が聞きたいよ。
「っていうか今頃かよ!」
「昔からシキは何かがずれてたけど、しばらく遭わないうちに更に磨かれたわね」
怒れる俺と呆れるコヅキ。
ヤバい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんかカオスってきた。ノイズ走りまくりだ。
「何だ? 空気が変わってるぞ・・・・っ?」
シキ、お前のせいだよ!!
「はぁ~。もう、帰ってよ二人とも」
コヅキは呆れたように言う。
俺だってそうしたいわ。でも、どうやって帰るかが分からないから、未だにここにいるんだ。
「あ、じゃあ帰る」
シキが平然と言う。
・・・・・・・・・・・・へ? 何? 友達の家から帰るノリみたい言ってるけど、もしかして意外と俺の精神世界って出入り楽なの?
「あ、そうだ。貴方達にお土産代わりに一つ情報をあげる。何がいい?」
「兄貴について」
俺はコヅキの提案に対して、即答する。
「それは、さっき言った通りの事と・・・・・・・・シロウサギについて追えばいいかも」
「シロウサギ?」
白いウサギっていことか? それとも何かの機械とかの名前? 地名って線もあるか?
一体何なんだ、シロウサギって?
「シキ、貴女は・・・・・・・・聞くまでもない、か」
「知ったような口を叩くな、魔神が」
コヅキは次にシキに言う。
「生きてるよ。まだ貴女の果たしたいことは出来る」
「――――、何処にいる?」
「さあ、そこまでは」
一体、何について話してんだ?
「ほら、お土産を貰ったら、帰る帰る」
「・・・・・・・・分かった。小月、こい」
シキが俺を手招きし、呟く。
「事情は分からないが、お前も大した不幸の持ち主だな」
「へ?」
「気にするな。ただの独り言だ」
シキはそう言うと、コヅキを睨み付け、
「じゃあな。二度と遭わないように祈るよ」
「どうかな。私たちの腐れ縁はそうとう強力みたいだから」
コヅキは手を振りながら、茶化すように言う。
その姿を見たとき、俺の全身を蒼い炎が包んだ。
え、これで本当に終わっていいのか?
いいんじゃないですか。途中で謎はばら撒くだけ、って言ってあったし。
あらすじ未定、世界観未定、行く先未定の小説だし。
次回投稿は・・・・・・・気分次第。