出会い-8
扉を開けた瞬間、白と黒に別れた。
空間そのものが、半分は白、半分は黒。そんな風にキッパリと別れた。
俺は白側にいて、シキは・・・・・・・・・・見つからない。一体どういう事だ?
まあ、それはともかく。
俺がいる位置を正確に言うと、白と黒の狭間の近くで、狭間には、透明な鏡(?)がある。
その鏡の向こう側、つまりは黒側には、腰まで伸びている白髪で顔を隠した少女(?)が立っていた。
さて、一体どういう状況なのだろう?
「あらら・・・・・・・・・・きちゃったの?」
意外そうな声を出し、白髪の少女が先に喋りだす。
俺は・・・・・・・出来れば、急すぎる展開に付いて行けずに感情のアクションが一切無いので、休憩が欲しい。人と喋る気は無い。
だが、儚くはあるが、コイツが事情を知っていて説明してくれるかもしれないので、俺は一応話しかけはする。
「何で俺はこんな場所にいる?」
「それは、扉をあけたから」
ごもっともだ。俺でも考え付く事をずばり言ってくれた。
「お前は誰だ? シキはどこだ?」
「私は・・・・・一応、ハリゾラコヅキ」
驚きだ。世界には自分と同姓同名の人間が3人はいるという噂は案外本当なのかもしれない。・・・・・一応?
「シキは・・・・別の所に行ったみたい」
少女―――コヅキさんはどこかから聞いたみたいに答える。
「じゃあ、ココは何だ」
「張空小月という存在の内部」
「ふざけるな」
「ふざけてない」
ぶっ飛んだ事を言いやがって・・・・・・・・・・・。
「本当は理解できてるんでしょ」
「何でそう思う」
「少し、冷静すぎるでしょ。自分でも驚くくらい」
「超展開過ぎて、理解するのを諦めてるだけだ」
「嘘つき」
とんだ言い掛かりだ。俺が嘘つきなんてとんでもない。
「諦めは俺の人生の醍醐味だ」
「そんな人は将来嘘つきになるよ」
「どういう統計だ」
「私の勘」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コイツと話していると、気分が悪くなりそうだ。
大体コイツ、一体何なんだ?
もしも、ココが俺の精神世界みたいなものなら、この少女の存在は一体なんだ? 女性版の俺・・・・・・・・・・っていう事は無いだろう。というかあって欲しくない。
しかも俺の事、嘘つき呼ばわりしてくるし。
一体、この少女は何なんだ?
「お前は何でココにいる?」
「それは・・・・・隠れてる」
「隠れてる?」
俺の中に隠れてる・・・・・・・・・って事だよな?
「それはそうと、何で貴方は扉を開けたの?」
この野郎、話題を変えやがった。
「何となくだ」
「ほら、やっぱり嘘吐いた。本当は唆されたんでしょ」
ケタケタ、と笑いながらコヅキは続ける。
「彼の駒になるか、駒にならずに死を選ぶか。そんな台詞を思い出して、扉をあけたんでしょ。その声との会話に唆されて」
・・・・・・・・・・・・・・・・初めから知ってたんなら質問すんな。
「でもね、その台詞の意味は大体貴方が考えた意味と似ているの」
「・・・・・本当は、どういう意味なんだ?」
「扉を開けて私と逢うか、扉を開けずに黒い虎に食われるか」
「なら、何で扉は2つあった?」
「そんなの、貴方に誤解させるためじゃない。片方が死で、片方が駒。そんな風にね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まんまと相手の意図に嵌ったわけか、俺は。
「あの黒い虎は何なんだ?」
「私も分かんない。だけど、この世のものじゃない」
「・・・・・・・・・あの世のもの、ってことか?」
「違うよ。異世界っていう考え方のほうが近いかも」
「意味が分からない」
「意味なんて分かんなくていいよ」
コイツ・・・・・・・・・・・・遊んでるのか?
「じゃあ、お前に逢うと、俺は駒になるのか?」
「んー、分かんない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふざけやがって。
「私もしばらくぶりに起きたんだよ。全ては知らない。だけど知ってる事なら教えられる、貴方が望めばの話だけど」
「なら、兄貴はどこにいる」
「知らない」
まあ、知ってるわけないか。アレは俺の空耳だったかもしれないしな。
「だけど、黒い虎。あれと少し関係してるかも。あと、駒、っていう単語にも」
・・・・・・・・・・・・・・・・いま、何て言った?
「どういう事だ、何が言いたい?」
「もしかしたらぁ、貴方のお兄さんは、異世界にいるかも」
「ふざけ・・・・・・・・てるわけじゃ無いんだな?」
「当たり前だよ。ふざけるときは、徹底的にふざけるから」
「・・・・・・・・・じゃあ、他に異世界に関係してるものは?」
・・・・・もしも、兄貴が異世界にいるなら。なんてファンタジックな考えを持つ気は無いが、もしかしたら、さっきの声は俺の空耳じゃなくて―――――、
「姿の無い声。貴方に色々変な事を吹き込んだ、あの忌々しい声」
実際にあの時、あの空間で、あの声は存在した。
本当に異世界なんてファンタジックなものがあって、そこに兄貴がいるとしたら・・・・・・・・・・最悪だ。今すぐ殴れない。
だけど、あの不自然な遺体にも少しばかり説明が付くかもしれない。魂の抜け殻とか、そんなオカルト的なものが。
何となく、何かに近付いた気がする。
でも、その前にもう一つ、訊いておかなければいけない事がある。
「お前は何だ? 何で色々な事を知っている? お前と逢うと何で駒になる?」
訊かなければいけない事。それは少女の正体。
ハリゾラコヅキと名乗りはしたが、一応と付けた。
俺の中に隠れていると言っておきながら、説明を自然に拒否した。
そして、何故か俺の求めている答えの殆どを答えている。
一体、この少女の正体は何なんだ?
「私は・・・・・・・・・・・・貴方、本当は知っているはず」
「知らないから訊いてるんだ。知ってたとしても忘れていたら、知らないと同じだ」
「なら、思い出して」
そんな、無茶苦茶な。
「私は二度と、自分のことを言いたくない」
「お前は一体、」
何を隠している。
いや、何に隠れている?
「それは貴方と似て非なるもの。貴方と私は、隠れているものが、この前まで一緒だった。けど今は―――――」
少女の台詞をそれ以上聞くことは出来なかった。
何故なら、それは、蒼くうねる炎が、白と黒の世界に介入してきたからである。
ストックが無くなったので、また、しばらく休業です。
次の更新日は・・・・・・・・・・・そうですね、2月最後の日、28日で。
あ、そういえば、なんかよく分からないうちに、自分のパソコンと携帯が近日中に入手出来そうです。やったね!