8月22日-8
すいません、更新順を間違えました。
午前中に更新された8月22日-7を読まれてしまった方は、前話に戻ってください。
「ッ!」
直感的にシキは腕を前でクロスさせ、後ろに飛び退いた。
直後、シキの前方の空間が歪み、破裂。爆風のように衝撃波を撒き散らす。
シキの体は、衝撃波によって数メートル飛ばされた後、壁に激突する。
「ぐはっ!」
激突によって、肺から空気が押し出される。そのまま重力に従って地面に落ちる、シキ。
それを退屈そうに笑いながら見る、少年。
「おいオイ、萎えるだロォ。もうチョッと頑張れよ」
一歩一歩、オトアは地面に伏せるシキに近付いて行く。
傍から見たら、死神が命を奪い取るために近付いて行くように見えたかもしれない。
【蒼い死神】が死神によって命を取られる。
それは、シキからしたら、滑稽すぎて大笑いしそうな風景だった。
しかし、笑ってる余裕は今のシキには到底無い。
「そんなんジャ、時間稼ぎも出来ネェーぞ」
そう言うとオトアは、片足を上げ、地面を強く踏みつける。
爆風が吹き荒れたかと思うと、壁が、床が、天井が、破壊される。
その破壊は着実にシキに向かい、まるで見えない怪物が獲物を追い込むかのようだった。
「ッ!! くそっ!」
シキは掌をオトアに向け、前方に広く大きい蒼い炎が現れる。
目的はオトアに対する攻撃ではない。シキを覆い隠す目隠し。
シキの炎はオトアに通じはしない。それはあくまでも攻撃的な意味でだ。
攻撃でなければ、通用する可能性はある。
例えば、今のような目隠し。
これならば蜃気楼による回避など関係無しに、オトアに通じる。
しかし、何故このタイミングで?
いや、そもそもタイミングの問題では無い。
おかしいのだ。目隠しを使う事自体。
オトアに有効な攻撃方が有るわけでもない。それなら相手に目隠しを使う目的は一つ。
逃げる為
この場から逃げる為に目隠しをしたとしか思えない。
状況も丁度いい。
オトアの放った攻撃のせいで、シキの周りは瓦礫の山となるだろう。
シキがその下敷きになる事は無いだろうが、追うのはほぼ不可能。
逃げるのには丁度いい。何もかもシキが逃げれる様に状況がなっている。
しかし、本当に逃げるのか、シキが?
時間稼ぎを第一目的にしている人間が、逃げるのか?
だが、逃げないとしたら何故炎を放った?
「あチャー、これはメンドォだ」
オトアはそんな疑問を全てぶち壊す。
それもとても簡単な方法で。
言ってしまえば、目隠しはあくまでオトアが蜃気楼によって炎をかわしている事が前提にある作戦なのである。
つまり、オトアが蜃気楼以外の方法でシキの炎に対抗すれば、効かなくなってしまう。
例えば自分の身の周りの空間を歪めて、透明な鎧を作ってしまうとか。
「なッ!?」
「逃げんのはダメだヨォー、【蒼い死神】さん」
蒼い炎を突き抜けてやって来たオトアにシキは驚き、動きが固まってしまう。
その大きな隙をわざわざオトアが見逃してくれる訳が無い。
シキの腹部辺りに掌を向け、シキの身体を吹き飛ばす。
再度、壁に激突したシキは今度は肺から空気を出す間も無く、オトアに頭部を掴まれ、頭から地面に叩きつけられる。
「逃げヨォとするなんて、根性無くナッたネェ」
オトアはシキから手を離し、今度は体を蒼い炎の中へと蹴り飛ばす。
シキは、もうすでに声を発する力が尽きかけていた。
今まで視覚上の壁となっていた蒼い炎が消え、死にかけで俯せているシキの姿が露わになる。
「アッ、ソォいう事。だからわざわざオレの動きを止めようと」
蒼い炎が消えた直後、オトアが納得したように声を出す。
「確かに、ソイツをオレが気付く前に何所かに隠したカッたよナァ」
オトアの言葉に、シキは苦々しそうに顔を歪める。
シキは逃げる為では無く何かを隠そうとする為に、オトアの動きと視界を一時的に奪おうとした。
その何かはシキにとって大切な者で、こんな危ない場所に居てはならない者だった。
「別に、ソイツから仕掛けて来なキャ、オレは何もしネェッての。ま、ココに来たって事は仕掛ける気は充分有るんだろうけどナァ」
オトアの言う通り、ココに来たからにはオトアに対して何らかしかの仕掛けをするのだろう。
無駄な抵抗であれ、有効な策であれ。
何かを仕掛ければ、オトアはシキの大切な者に牙を剥く。
シキはそれが分かっていたから、隠したかったのだ。逃げて欲しかったのだ。
なのに、シキの大切な者はココに来てしまった。
これだけ盛大にオトアが破壊音を撒き散らせているのだ。居場所なんてすぐに分かったのだろう。
「……………何で、来た………」
シキが小さく弱々しく呟いた。声を出す力など残っていないにも関わらず。
オトアは猫を被ったように、いきなり静かになった。状況を楽しんでいるのだろう。
シキを助けたくてココに来た者。その存在のせいで余計にシキは傷付いた。
それについて、その者がどう罪悪感を感じるかを楽しんでいるかのようだった。
「…………………来るな、と言ったはずだ」
小さかった声は少しずつ大きくなっていっていた。
怒りによってだろうか? 絶望によってだろうか?
どちらにしろシキの声は、呟きから言葉に昇格し始めていた。
ココに来た、シキにとっては招かれざる者に対しての言葉には昇格していた。
そして、シキは苦々しそうにその者の名前を呼びながら尋ねる。
「何で来た……………小月」
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お詫びとして、次は一気に2話更新します。………順番を間違えないように。
数少ない読者の方々には大変失礼な事をしてしまった可能性があるので、
一応、すいませんでした!
ちなみに次の更新は、夜の9時から11時の間です