出会い-6
この世に神はいた模様です。
7回裏、ピッチャー、シキ。バッター、なんか黒い虎。
ピッチャー、振りかぶって・・・投げた!
バッター、弾くように球(俺)を打った!
という風な実況を心の中で現実逃避のためにやってはいたのだが、俺はあまり野球などのスポーツを見ないので、あまり乗れなかった。
それはともかく、俺はシキに投げられ、黒い虎に弾き飛ばされ、結局のところ、廃墟の中にいる。
いやー、幸いだったのはビニールシートがクッション代わりになった事だろう。そうでなかったら剥き出しになっているコンクリートに体を強打して、最悪、死んでいたかもしれない。
さて、どうしよう。
一体俺はこれからどう行動したらいいのだろうか?
外には、さっきまでいた黒い虎はもういないようだから、きっとシキは無事なのだろう。少し残念だ、無事でなければいいのだ。あの野郎、俺を投げやがって・・・・・一体、どんな腕力の持ち主だ?
まあ、ともかく俺はシキと合流すべきなのだろうか?
おおよそ義妹はこんな黒い虎が出てくる場所なんかにはいないだろう。
つまりは俺の気分の株を大いに下落させる無駄足だったわけだが、考え方を楽観的に変化させてみよう。
いっその事、ここでシキと別れる。
そうすれば、俺は・・・・・・・まあ、無駄な出費をすることも無いし、投げられる事も無い。
それにシキはおかしい、存在的に。人一人片腕で投げたり、どうやったかは知らないが、トラックを運転席の外から急停止させるし、食う量も半端じゃない。
物騒で不気味なシキから離れられる最高のカードを俺は今、掴んでいるんだ。
それを今ココで使わなかったらどうするんだ。
この廃墟の出口だったら全て覚えているし、黒い虎が出てくる事は知らなかったが、廃墟のどこに何があるかも知っている。
今すぐに、ココを抜け出して――――――――、
「キミは、逃げる、のが、大好き、だね」
背後から聞えてきた声に、俺は咄嗟に振り向いた。
が、そこには誰も居なかった。
「当たり前、だよ。キミには、キミの様な、軟弱な、人間には、姿は、見えない、ように出来ている」
「・・・・・・・・・随分とメンタルチックな存在だな。鬱になると現れるのか?」
俺は虚空に向かって話しかける。こんな冗談じみた事に付き合うなんて、俺もどうかしている。
「キミは、どうかなんて、して、ないよ。ただ、どうかしてない分、姿が、見えないし、どうしても話しかけて、しまう」
「意味が分からないな」
「キミは、お兄さん、とは、違う、からね」
「・・・・・・・・・・・・兄貴の事を知っているのか?」
俺は無駄だと分かっていても、質問してしまった。知らないほうがおかしい程の有名な存在の事を知っているか、なんて質問は無駄以外の何物でもない。
「知って、いるよ。解読者、張空陽介。2年前、ココで、殺された、事に、なっている、人物、でしょ」
「殺された事に・・・・・・・・・なっている?」
姿も見えない、声だけの存在が言った言葉を、俺はオウム返しして言う。
あくまで兄貴は死亡しただけだ。自殺とも他殺とも分からない。
なのに、殺された、と声は言った。
されには、なっている、と意味深長な台詞まで付いてやがる。
「・・・・・・・・・・・どういう事だ?」
俺はしばらく間を空けてから問う。
「世の中、には、キミ、の、知らない、世界、が、ある、と、いう、事、だよ」
音声を合成したかのように、途切れ途切れになる声は、そう言うと静かになる。
・・・・・・・・・・・消えたのか?
「違う、よ。考える、時間を、与えた、だけさ」
俺の思考は、完全に読まれている。まあ、先程から分かっていた事ではあるが。
「例えば、シキ、という少女。彼女だって、キミの、知らない、世界の、住人だ」
「シキが・・・・・・・?」
俺は少し考え、納得してしまう。あんだけデザートを食う人間が、俺の常識内のうちに収まるわけが無い。
「例えば、秋音、という少女。彼女だって、キミの、知らない、世界の、住人だ」
「・・・・・・まあ、そうだろうな。まず、俺が義妹について性別と容姿と年齢と誕生日しか知らないからな」
「それは、・・・・・・・・・、義兄として、どうなの、かな、・・・・・・・」
姿も見えない奴に呆れられる俺達、兄妹の関係って、一体・・・・・・・・・・・・・・・。
「つまりは、お前は俺が知らない世界があると教えて、どうする気なんだ?」
俺は前述の会話を全て無視し、話を進める。いい加減、そろそろ逃げないとシキに見つかるかもしれない。
「簡単に、言えば、これから、キミを、その、知らない、世界に、引きずり込む、と、宣言して、いるんだよ」
随分と簡潔にまとめてくれたのは嬉しいが、内容がどうも俺にとって好ましく無い事態を巻き起こそと宣言しているに過ぎない事が問題だ。
「どうやって巻き込むんだよ。一応言っておくが、俺は平穏、平凡、平和な生活を常日頃思い続けているから、大してお前の誘いは嬉しく無いぞ」
「そんな事は、キミの、お兄さんから、聞いたよ」
「・・・兄貴が俺の事を話すとはね。今、アイツは何処だ? さっきからの口調だと居場所を知っているんだろ。今すぐに殴りに行きたいから、場所を教えろ」
「今、場所を、教えても、ゲームの、最中だから、立ち入る事も、殴る事も、出来ないよ」
「ゲーム・・・・・・・・・・?」
俺が疑問詞を頭に浮かべていると、声は、俺に嫌がらせがしたいんだろう、バカにするように答える。
「優秀な、キミのお兄さんは、劣等なキミと、違って、忙しいんだよ」
その台詞を聴くのは、兄貴の知り合いの人達以来だ。結構心に響く。最悪の意味で。
「何も、言い返さない、のかい」
過去の傷を軽く抉られ、無言で無意識のうちに過去の事を思い出していた俺に対し、声が問いかける。
「なら、更に、言わせて、貰おう」
声は一旦間を置くと、先程からの一々間を空ける口調と違い、俺に何かを吹き込むように台詞を言い続ける。
「キミのお兄さんは優秀だった。それは他人とは比べようも無いレベルで。世界で彼以上の才能の持ち主はいないんじゃないかと呼ばれるほどにね。だけど、それに比べてキミはどうだ? 比べようも無い鬼才の兄と相対するようにキミには一切の才能が無かった。でも才能が無いからといって努力をすれば凡人以上にはなれただろう。だけどキミは努力をしなかった。一切の努力をせずに堕落したように生きてきた。だけど才能を言い訳にして努力を怠ったキミにもちゃんと怠る理由はあった。それは兄だ。いくら努力しても誰にも褒められない。それどころかキミと兄を比較するんだ。何で兄はあんなに優秀なのに弟のキミはそんなにも普通なのか。こんな具合にね。でも酷く普通なキミでも分かっていたはずだ。基準がおかしかった事に。兄という基準点がおかしい事に。でも酷く酷く普通なキミは誰にもそんな当たり前の事を言わなかった。いや言えなかった。そんな事を言っても基準点は兄が存在する限り変わらないのだと気付いていたから。そこでキミは普通よりも下につく事にした。人が呆れる程に劣等になれば、二度と優秀な兄と比べられる事は無いと思ったからだ。そしてキミの思惑は成功し、失敗した。兄の死という不幸な言葉と共に。今度はどんな風に比べられたんだろうね。兄の代わりにキミが死ねばよかった、キミなんて生きていも価値が無い。きっとキミは色々な人からこんな事を言われたんだろうね。それでキミは更に堕落した。堕落して堕落して嫌になった。自分が才能に劣り、努力を怠り、人生を堕落させていく事に。嫌になったんだ」
酷く酷く酷く長い、長文は確実に俺の心を痛め傷付け抉り潰していった。
故に、この長文の終わりを告げる静寂にすら、俺は気付けなかった。
いや、多分、俺の頭の中には、姿も見えない奴の言葉一つ一つが廻り続けて、感覚器官が活動を停止でもしてしまったんだろう。
「ぅが、ゎぁ・・・・・・・・・・・」
呼吸をしようと思ったのか、それとも反論でもしようと思ったのか、ともかく俺の声帯が無意味に振るえ声が出る。
だが、それが言葉になる事は・・・・・・・絶対に無い。
何故なら、その時の俺の思考はかき混ぜたビビンバのようにグッチャグチャになっていたからだ。
「なら、キミに、選択肢を、与えよう」
姿が見えない奴の口調は元に戻るが、俺はその変化にすら気付けない程に、混乱(?)していた。
「彼の駒になるか、駒にならずに死を選ぶか」
声は、その台詞を最後に、聴こえなくなった。
俺はその場に立ち尽くす。
思考がまとまらない。今がいつなのかワカラナイ。過去の事や台詞が鮮明に思い出される。それを思考が邪魔をする。
何でだ? 何で俺は生まれてきたんだ?
必要ないなら、元から生まれて来なければ良かったのだ。
よく言われる台詞で、生んでくれと頼んだ覚えはない、という台詞があるが・・・・・・・俺は果してそれを言える立場か?
親にとっては、こんな子が生まれてくるなんて予想の範囲外だったに違いが無い。いくら育て方を工夫したところで、元々劣等物なのだから、意味が無い。
生んでくれと頼んだ覚えどころか、こんな奴生まれてこないでくれと願われてたに違いないんじゃないか?
ああ、止めろ。止まれ。こんな事二度と考えないようにしようとしてきたんだ。
俺が劣等で兄貴が優秀な事なんて分かりきっている事だ。比べている時点で間違いなんだ。
分かってる。分かりきってる。俺は兄貴に到底及ばない。
いや、それどころか対極の位置に存在しているといってもいい。優秀の頂点と劣等の頂点の兄弟。皮肉にも程があり過ぎる。
ああ、最悪だ。最悪だ最悪だ最悪だ。もう全て嫌だ。消えろ。
あ、ああ、あああ、ぁふぁ以来v間おいdgは言おうj間尾家rjhg大雄mj季語ふぁhjがj来いfじゃ居俺が追いmヴィ尾久frは得おgjfヴァおいrhjがgふぃうqtgか追いgfjクィアgフォアいrmが、緒fぢアhといアkf打塩フェ尾家rwgじゃ負いfも会いsdgふぃ緒アjfvzkjskldjhふぁおいkflザジェwtf路いアqmフォいアh蹴りオアkfp時954j98gtf5非くぁ緒fg4q89htrjふぁJFオア十ふぃお合うtr98合うイフォアj8手4じゃ緒jフォアjhfぁkjgfは・あklgじゃ緒pjgフォいア経rタqhy894jとい4jぁjkldふぁ:;f・アgフォい顎vじゃイオfgタfkじゃhふぃおあjふぁjf・アふぁ緒gfじゃ緒pg:ア¥gf・あlgfじゃlgfじゃlふぃゴアr4絵gmフォいアfl;ア・ふぁlfgはおfは。jf、あおいふぁlふぁkぇjふぁうぃおえ4fgたmヴぉいふぁv・zv、z。zgぢあjごあい。gfd。
「小月!」
シキの声によって現実に引き戻された俺は、一体今まで何をしていたか、ワケガワカラナクナッタ。
「・・・・・平気か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺を投げたお前が心配するなんて、お前の方こそ平気か?」
俺はシキに向ってそう言い、周囲を見渡す。
記憶が途中で朧になっているが、大体の事は憶えている。
「なあ、シキ」
ココに来るまでに誰か見なかったか? と質問しようと思ったが、俺が姿を確認できていない時点で居たかどうかすら不明だ。俺が勝手に鬱になっていただけかもしれない。
「あの黒い虎、どうやって倒した?」
だから俺は違う質問をぶつけた。ちょっとした疑問と確認のために。
「ちょっとした裏技を使ったんだ」
「そうか・・・・・・・・・」
やはり、というか教えてはくれなかった。
『例えば、シキ、という少女。彼女だって、キミの、知らない、世界の、住人だ』
姿も見えない声の言った台詞を思い出す。
俺の知らない世界、か。興味は無いが、声は俺を巻き込むとまで言っていた。ある程度の警戒をしておかないとな。
「小月、お前、何でそんな事を訊く」
「そりゃ気になるだろ。黒い虎も、その倒し方も」
シキの質問を適当にあしらいつつ、俺は取り合えず、外に出るための行動に出る。
にひっ!
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というようなテンションで書いたため、内容は無茶苦茶になっています。
謎も回収できません。
という事で、回収しません。ばら撒くだけばら撒いて、あとは放置しておきます。
もう知るか。どうでもいい。どうとでもなれ。




