8月22日-6
悪ィが、ここから先はクソ文章の一方通行だァ!
…………………………………………………。
………………………………………。
……………ここは?
「あ、起きた?」
「………師匠、ここは?」
視界に映った人物の顔を見て、尋ねる。
「憶えてないか? お前が雑音拒絶を手に入れた場所だ」
だが、尋ねた人物とは違う奴から答えが返ってきた。声からして園塚だろう。
何で俺はこんな所に………………って思い出すまでも無いか。
俺は無茶を承知で体を起き上がらせる。シキの炎で燃やされたんだ、起き上がるのは無理かもしれない。
だが、俺の予想に反して、体はすんなりと起き上がった。
………あの野郎………………………………………………ッ!
わざわざ丁寧に加減しやがったのか。
「……シキは?」
「オトア君に苦戦中」
鑑師匠が簡潔に状況を述べる。
だけど俺は、その発言が気に掛かった。
「…………オトア君? 師匠、知り合いなんですか?」
「んー、親友の養子っていう関係ね」
「なんとも微妙な関係ですね」
「まぁー、彼が裏の世界に関わる前まで、少しばかり遊んでやったりしてた程度の関係だからね」
怪物―――――オトアが雑音拒絶を手に入れる前までの関係って事だろう。
って事は、もしかしてオトアが力を手に入れた理由は………その師匠の親友とかが関係してるのか?
「あ、勘違いしないように言っておくけど、オトア君が力を手に入れたのは実妹が殺されたのが原因であって、僕の親友とは関係は無いよぉー」
………のん気な調子で言ってくれるが、その話は暗いぞ師匠。
確かオトアは言っていた。世界を拒絶してこの力を手に入れた、と。
実妹が殺された。確かに人によっては世界を拒絶するに値するだろう。俺はむしろ実兄が死んで、喜びかけたくらいだが………。
まあ、しかし。
そんな事、今はどうでもいい。
「シキの居場所は……シキは今どこにいるんですか?」
今はオトアなどの事より、シキが優先だ。
「教えられると思った?」
対して、師匠は現実を俺に突きつけてくる。
「正直、君が行っても状況に何の変化も無い。それどころか、ただでさえ窮地に立たされてるシキを更に追い込むことになるかもしれない。魔神という力は君の中にあるけど、君はそれを扱えない。まさか黑鴉と雑音拒絶だけで応戦できるとは、思ってないよね?」
「さらに言えば、お前はシキの炎で燃やされて上に、オトアに叩き潰されたダメージも完全に回復してはいない。今のお前の体調はとてもじゃないが万全とは言えない」
むしろよく動けている程だ、と最後に付け加えた園塚。
まったく酷い大人二人である。ある人は言ったんだぞ、少年よ大志を抱け、って。
だがまあ、実際、大志を抱いたところでどうにかなる問題では無い。
俺じゃ、シキのサポートどころかピンチを招きかけない。それ程に力が無い。
いや、この場合は相手に力が有り過ぎるのか。
ともかく、俺にはオトアに対抗する力も、シキを支える力も無い。唯一有るのが魔神の力。
だが、それは俺には到底扱えない。努力や忍耐で扱えるものではない。規模が違い過ぎる。凡人に扱える規模なんかでは到底無い。
頼みの綱は黑鴉。だが、それも零距離でないと効果を発しない。
空間を歪める相手に対して、零距離など不可能に等しい。
さらには俺自身の体調までもが問題に上がってきた。
狐狩りの最中にボコボコにされたダメージは完全回復してないそうで、さらには、ついさっきシキの蒼い炎で燃やされた。
ダメージは体に残ってて、生命力も減少している。
今俺が普通に喋ったり、起き上がれたりしてるのはシキが加減してくれたお蔭だろう。だからといって、無理を出来る状態ではない。
これでもか、というぐらいに突きつけられた現実。詰みと言ってもいい状況。
だから、
「シキは何処ですか」
どうした?
たかが、それだけの話だろ?
自分に力が無くて、相手に物凄い力があって、こっちが力に頼ったら暴走して、力に頼らず武器とかに頼っても力の差は埋まらなくて、ついでに体調は最悪。
だから仕方が無い、って諦めろ?
そんな事出来るか、ボケ。
「張空。お前はもしかして自殺志願者か?」
園塚の野郎が問うてくる。
「シキを見殺しにするくらいなら、自殺した方が良いとは思ってます」
まあこの場合は他殺になっちまうだろうけど。
わざわざ園塚に合わせて、言い返してやる。今の俺の気持ちは変わらない。
俺はシキの傍に居たい。
ただ、それだけ。
「そうか。なら、いい自殺スポットを教えてやる」
そう言って、園塚は俺に紙切れを渡してくる。
何だ、わざわざ有名な樹海でも調べてきたのか?
「そこに行けば、空間を歪める怪物か【蒼い死神】辺りがお前を死に誘ってくれるよ」
だからそれは他殺って言うんだって。
内心でツッコムと同時に、園塚に嫌々ながら感謝する。
これでシキの元に行ける。
「なら、ついでに良い自殺道具も持っていきなよ」
何だ、師匠。園塚の悪い冗談も分からないのか?
「小月君の為に完成させたようなものだからね、死ぬ前に使ってみてくれ」
「完成したって…………何がですか?」
失礼だが、師匠に何か作ってとか頼んだ覚えはない。
「あれっ? 言ってなかったかな、黑鴉はまだ試作品だって」
そう言うと、師匠は歩きだし、
「出来上がったんだよ、黑鴉が。僕の最新で最大の欠陥品が」
不気味な笑みを浮かべながら、俺を手招きした。
欠陥品は割とマジの自殺用具だから、どうやって繋ごうか。
つーかココから先の黑鴉はチートなんだよな。しょぼいけど。