8月22日‐1
もう知らね。どうにでもなれ
……………ぅ……うぅ……んぁ?
ココは、どこだ……………?
俺は確か………………何だっけ?
何してたんだっけ?
………………………まるで憶えてない。
何かに根こそぎ取られた様な感じだ。
取り敢えず、まずは白い天井が見えるココはどこだかを確かめる事が先だな。
俺は体をゆっくり起こそうとして、
「ゥバッ!!」
腹の辺りにきた重い衝撃にまたゆっくりと沈んでいく。
………ぅ………………うぇー。
吐く、絶対に吐く。っていうか誰だ腹殴ってきたの!?
俺は確かめようと勢い良く体を起こし、
「ェッ!!!?」
顔面を鷲掴みにされて勢い良く強制的に沈められた。
頭痛ェ!! 一瞬息出来なかったぞ!
「やぁー、起きた? 小月君」
冷徹で笑顔な鬼がそこにいた。
それはどこか記憶の片隅に……っていうかほぼ恐怖で記憶のど真ん中に呼び出されてきた人物にそっくりだった。
鑑優斗。俺が師匠と呼んでいる人物だ。
そして、ある少女に異常なまでに肩入れしている人物だ。
さて、吹っ飛んでいた記憶が急速に戻り始めた俺は、ある少女に対して何かヤバい事をやった記憶が一つだけあるような、ないような…………。
「起きてんの? 死んでるの? 死にたいの?」
ヤバい、師匠がガチ切れしてる!
鷲掴みした頭に圧力かけて、俺の頭蓋骨をクラッシュしようとしてる!
っていうかクラッシュする!!
「生きたいですから離してください師匠!」
「えぇー? 聞こえなぁーい」
この人、本気で俺を殺す気だ!
「すいませんでした! 許してください!」
「それを僕に言ったって、意味ないでしょぉー」
「でも師匠に言わないと俺あと10秒以内に死ぬじゃないですか!」
「それもそうだねぇー。このままだと僕がシキに怒られちゃう」
この人の行動理由の中心にはシキしか居ないんだな。自分の損益とか配慮しないんだな。
「なら、この一発で許してあげよぉー」
「ふゃぁ!!!!」
頭蓋から手が離れたと思った瞬間、へそに強烈で凶悪な拳がめり込んだ。
俺の体はくの字に曲がり、胃の中の物が口から出そうになった。っていうか俺の胃、潰れてないよな?
ともかく体は動かないし、言葉も発せられない。
今、一時的にではあるが何も出来ない状態になった。
まあ翻訳すれば、俺は今師匠の話を聞くしか出来ない状態になった。
「シキがねぇー、泣いて帰ってきたんだよ」
すいませんでした。
一応言葉として出てくれないので、心の中で思う事にした。
「何があったんだぁー、って思ってたら、君がぶっ倒れてたんだよ」
黑鴉の効力だろう。なんせ相手を昏倒させる一撃必殺だからな。
力に唆された俺に銃口を突きつけたんだ。俺にも効果が及んだんだろう。
「それで組織、あ、君も一度行ったことがある所ね。今は支部とか無いから」
潰されかけた組織ですもんね。
「君は今、組織の建物の治療室にいるんだよぉー。僕の作った黑鴉は強力だからね」
何ですか? 自慢ですか?
でもまあ、威力はその身で実感してる。本当に強力だ。軽く反動で飛ぶくらいに。
っていうか、つまり俺、今ベットで寝かされてるのか。叩きつけられる感触しかないから分からなかった。
怪物に遭って、捻じ伏せられて、怪物や魔神の言葉を無視して力に踊らされて、自分でケリをつけて、ベットで寝かされてる。
なんか少し滑稽なような気がする。特に力に踊らされた部分が。
「シキから色々聞いたよぉー。だから聞くけど、何で魔神の力を借りた?」
「それは………」
あれ? もう声が出るようになってる。答えなきゃいけないのかな?
「それは?」
師匠が問い質してくる。
だから俺は深く考える。
俺はあの時、何故力を欲したか。
それは、怪物に捻じ伏せられ、シキが殺されそうになったからだ。
「本当に?」
言葉を発する前に、師匠が俺に確認する。
全員同じだ。
怪物もハリゾラコヅキも鑑師匠も、俺に同じように問い質してくる。
本心は本当にそうなのか、と。
何でだろう。俺の本心がそれほど重要なのか?
「君、実はシキを怖がってない?」
「……………はぁ?」
俺がシキを怖がってる?
………いやまあ、暴力振られたり蒼い炎で燃やされたりで多少恐怖してるかもしれないけど。
「小月君、シキの事をこう思ってない? 表の世界では子供っぽいのに裏の世界になると人形っぽくなる、て」
………ドンピシャですよ、師匠。
まさしく俺のシキに対する認識そのものです。
「でもねぇー、僕はまったく変わってないと思うんだよ。表の世界と裏の世界で、シキが変わってるとは思わないんだよ。だって考えてみぃー。僕とか小月君でも知り合いと初対面の人間に対する反応とか対応とかが違うだろ? シキもそれと同じじゃない?」
「……確かに、そうかもしれません」
何故か同感してしまった。
シキが初対面やら知り合いやらを気にするタイプじゃないとは思うけど、対応を分ける事ぐらいの配慮はするだろう。
でもだとしたら、何で表と裏でシキが別人のように思えるのだろうか?
例えば、自分の友達がどこかで活躍してたり、そういう場面を見てる時、少しいつもと別人に見える事がある。
それと同じ原理か? シキが裏の世界でそう見えるのは?
いやでも、どこかで活躍してる場面を見てたりしてたら別人に見えるが、話してる時はいつもと同じに見える。
でも俺は、話していてもシキが人形じみた雰囲気を纏っている様に思っている。
少し、ズレてる。原理から少しズレてる。
その原因は、多分、シキじゃなくて俺にある。
俺の本心に、ズレの原因がある。
「だからねぇー、僕はこう言いたいわけ」
俺がすっかり師匠の事を忘れて考えていると、師匠がいきなり言い出した。
「小月君、実はシキの事、怪物みたいで怖い?」
文句なら受け付けますよ。っていうか俺が文句をつけたいくらいです。
この前更新しない何チャラ言ってたのにもう更新してんじゃねぇーかよ!
なんだよ、この終わり方。さっさと続き見せろ。
まあ俺だけが思ってる事だから、別に気にしないですけど。
更新の方は、正直、数少ない読者の皆様に謝らなきゃいけないような………。