狐狩り-12
駄文なのはいつも通りです
「がっ、……はっ………げはぁ……」
何回目であろうか?
痛みで意識がぶっ飛びそうなくらいやられた事しか覚えてない。
顔が砂に埋もれ、視界は黒一色。
上から何度も叩き潰されている気はするが、確かめる手段は無い。そもそも確かめる気力が無い。
「がぁッ……、っ………ッ…………」
ヤバい。とうとう声も出てこなくなった。肺にはもう吐き出す空気も無いのか。
これは俺死ぬかもな。
「止めろ! 小月は関係ない!」
シキが叫ぶ。声はまさしく悲痛そのものだった。
「関係なイィ? 冗談言うナァ。言ッておくが、向カッてきたのはお前ラだぞ。それを関係ナイとハァ、バカかお前?」
ムカつくくらいの正論である。
今俺が地面に伏せて叩き潰されているのは、紛れもない俺のせいである。
ヒロイズムにも似た……いや、ただの俺の感情的な行動のせいでこうなっている。自業自得とはこの事をいうのだろうか?
バカにもほどがある。最悪だ。
「…………頼むから……………小月を、見逃してくれ……」
シキは言った。震えた声で。言葉で。
…………………………………………………………………最低最悪だ…。
本当に、最悪だ。
「……マァ分カッてるとは思うけど、死神を殺して凡人を見逃したら、凡人が殺しに来る。反対に凡人を殺して死神を見逃したら、死神が殺しに来る」
面倒臭そうに怪物が喋る。でも多分、そういう図になると思う。
シキが殺されたら、無謀と分かってても俺は怪物を殺そうとする。
俺がこのまま殺されたら、無謀と分かっててもシキは怪物を…………殺そうとするかもしれない。
結局、怪物が言いたい事は一つ。
「テメェら、ココで仲良ォく死ぬんだよ」
口調から察せられる、簡単な事。怪物はここで俺とシキを殺す。
どうせ後々殺しに来るんだから、いっそココでまとめて殺してしまおう。
こんな風な理由だろう。
適当なものだが、怪物にはそれを至極簡単に実行できる力を有している。おそらく俺の知ってる中でも最強の力であるシキの炎すら近付けさせない力。
死すら近付けさせない、圧倒的な力。
それを有している怪物は、それこそ有言実行。宣言通りに俺達二人を殺すだろう。
さて、どうしよう?
俺には、怪物に対抗出来る力は無い。それどころか動く身体が今は無い。
シキに何かを期待するのは酷な話だろう。せめて俺を見捨てて怪物に刃向わない、て約束でもしてくれたらいいんだけど……。
シキのプライドがそれを許さないだろう。
怪物に対抗できる手段も、どちらかが逃げて生き延びる可能性も絶たれた。
最下最低最悪な絶望的状況の完成ってわけだ。
本当にどうしようか。
「せめてもの希望ダァ。一緒にこの世を去っちまえ」
怪物の無情な声。宣言通り、一気に殺すんだろう。手段は分からないが。
どこからか、誰かが歯噛みする音が聞こえる。
俺自身のだった。
クソッ、なんで俺には力が無いんだよ!
「それジャ、死ね―――――――――――」
怪物の声は最後まで聞こえなかった。
遮られたのだ、誰かの携帯のバイブルで。
俺のではない。シキは………持ってるかもしれないが、多分違うだろう。
何故なら考える間もなく、答えが出てきたのだから。
「んァ? 何だよ、何か用カァ?」
怪物の言葉は、始めは着信した主に言ったのだと思ったが、どうやら違かった。
「ァあ? バカだろ。死んどケェ、クズ」
着信したのは怪物だったようだ。
「ァ~、はいはい。分カッた分カッた」
気怠そうに言うと、怪物は大きく嘆息を吐いた。
「おい、クズ共。急用入ッたからコイツらお前らで処理しとケェ」
……………………事態が把握出来ないが、もしかして。
助かったのか? 俺達。
「んァ? アァ、そういヤぁそうだな。死神が居たんダッたな」
「ゃぁッ!!!!」
シキの声にもならない声が聞こえる。
………………………おい。
お前、シキに何をした?
「いいカァ? 死神を方を先に殺れよ。そこに伏せてる奴ァ後回しだ。それジャ、頼むぞクズ共」
…………………怪物の気配が消えた。アイツはどっかに行ったんだ。
今の台詞からして、シキはまだ生きている。
クズ共……………多分、狐狩りの対象だろう。怪物も狐狩りの対象に含まれてるんなら、7人か。
でも、そんな事は全てどうでもいいんだ。
怪物は、シキに何をしたんだ?
一体、何をした?
確かめようと顔を上げようとする。だが、上がらない。上がれない。思う通りに動かない。
クソッ!! 何で動かないんだよ!
何で、何も出来ないんだよ!
何で、無力なんだよ!
これじゃシキを助けられない、これじゃ自分が生き残る事が出来ない。
なんで、俺には力が無いんだよ……………………………。
クソックソックソックソックソッ!!
このまま何もできずに死ぬのかよ。
それは………、
嫌だ。絶対に嫌だ。
怪物何どっか行ってんのwwwwww




