出会い-5
読者が少なくて、助かります。
「見つかんねぇーな」
「・・・・・お前はさっきから何を捜しているんだ?」
それは本来ファミレスでダラダラとしているはずだった時間を予算の問題で中止得ざる終えなくなったので、暇潰しにうちの義妹を捜しているんですよー。
この台詞を5回は言った。
「なら、何でこんな場所を探しているんだ」
「まあ、一般的な待ち合わせ場所から当たるのが普通でしょ」
でも、全く見つからないな。駅周辺も目印になりそうな物がある場所も結構捜しつくしたのに、一向に見つからない。
「だから、何故一般的ではない場所ばかり探しているんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
俺はシキの顔を見て、自分の表情も体も思考も、全て止まってしまった。
「普通、こんな人通りの激しい場所で待ち合わせなんてしないだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どうやら、俺の捜していた場所はどれも今どきの待ち合わせ場所では無いらしい。
「・・・・・・・・・じゃあ、一体どこら辺が一般的な待ち合わせ場所なんでしょう」
「樹海や廃墟だろ。まあ、大まかに言ってしまえば人気が無い場所だろうな」
前言撤回。俺は至って常識人、シキは至ってアホ。
「シキ、そんな場所で待ち合わせるなんて、今どきチンピラしかいないぞ」
「そのチンピラを相手がくる前に蹴散らすのが面白いんじゃないか」
「お前は義務教育をやり直せ」
「お前こそ、幼稚園からやり直せ」
「俺はそこまでバカじゃない」
「なら、どの位バカなのかな?」
「ギャルゲーで出てくるヘタレ並みに、俺はバカだ」
「ギャルゲー?」
あ、そう言えばこういうネタが通じない奴だったな。
なら、どう言い換えようか・・・・・・・・・・・・。
ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ・・・・・・・・・・・いや、別にヘタレじゃなくていいはずだ。優柔不断とか、鈍感とかで例えればいいんだ。
となると――――。
「ハーレムを築いているのにそれに気付かずに自分はモテないとか言ってる鈍感主人公のようなバカだ」
「それは相当なバカだな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
「ハーレムとかの単語は分かるんだな、お前」
「それは……アタシの周りの人間におかしな知識を大量に持っている人間がいてな。アタシが暇だと言うと小さな本を色々渡してきてな…。それを読み切るまでアタシを監視し続けるんだ。しかも、アタシに渡す本は全て続刊が出ている物ばかりなんだ」
「それは…………大変だな」
「ああ。大変なんだ………………」
うわ、変な空気を作っちまったよ。どうしよう。
「えーと、…………そうだ! この近辺に廃墟があるんだ。そこに捜しにいこう」
「本当に、大変なんだ……………………………」
「ほら行こう、今すぐに行こう。俺の義妹が待ってるぞー!」
シキの襟首をまた掴みながら俺は勝手に歩き出す。
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さて5分も経つと人は冷静になるもので、今や俺はシキに襟首を引っ張られながらもナビゲートしていた。
さっきのまでの威勢はどうした、と問いただされそうな俺の態度の急変に対し、シキが何も言ってこないので、自分の心中の中で振り返る。
ここの近辺に廃墟が一つだけある。建設途中で放置された5階建てのマンションだ。コンクリートが剥き出しになっていて、階段と柱があるだけだ。
チンピラの溜まり場でも幽霊が出るなどの噂も無く、ただ普通の、俺の元お気に入りの場所だった。
2年前までは。
「・・・・あれか?」
シキの声につられ俺は一旦前方を見る事にする。
「・・・・ああ。あそこだ」
上が大きな青のビニールシートに覆われていて、風が吹くたびに、ビニールが捲れ、中の灰色の壁と床が一瞬だけ現れる。
紛れも無い、俺の2年前までのお気に入りだった場所だ。
ただ2年前、兄貴がココで殺された。
死因は不明。出来れば俺が殺したなどの事実があったらいいのだが、残念ながら自殺なのか他殺なのかすら分からない。だけど、兄貴は自殺なんてする人間じゃない。身体に外傷は無く、死後硬直すらしなかった。
異常な死だった。なにか世界の理から外れた死に方だった。
ともかく俺のお気に入りの場所は、兄貴の死によって奪われた。
だから、俺の手元には、今、何も無い。何もかも、奪われた。
全て、アイツに。アイツさえ、いなければ俺は、未来の自由すらも、奪われなかったのに。アイツが、この世に、存在したから、顕現したから、居座ったから、俺は、オレは、おれは。
「小月」
シキの声に、俺はハッとなってしまった。
一体、俺は何を考えてるんだか。そんなの逃げる言い訳にしかならないというのに。
「どうしたんだ?」
この発言の後、先に自分の思考に区切りを着けておいてよかったと思う破目になる。
「逃げるぞ」
「は? お前いきなり――――――」
直後、俺の視界がぐるりと180度変わった。当然、左右に。
すると、俺の目がおかしくなったのか、俺の頭がおかしくなったのか、ともかく、黒い炎(?)がまるで虎の形を成し、俺に向って、多分正確には俺達に向かって、飛び掛ってくる。
だが、俺には虎に驚いている暇など無い。
俺の襟首を握ったまま全力で走り出したシキにより、俺の頚動脈には結構な圧力が掛かってくる。
「死ぬッ!! 死ぬってッ!!」
「ああ。このままでは死んでしまうな。お前が足手纏いで」
「―――――・・・・・・・・・・」
俺は、シキの言葉に、言い返すことが出来なかった。多分、直前の思考が邪魔してるんだろう。
「冗談だ、気にするな」
そんな俺の様子を察したのか、シキが笑いながら言う。
だが、俺はそんな言葉一つでコロコロと気分が変わるほど感情豊かではない。
「今からお前をアレに向って放り投げる。お前は一切動かずに、流れのままに動け」
「は!? お前、いきなり何言ってん――――――ッ!!」
俺の視界がぐるりと180度変わった。当然、上下に。
まあね・・・・・・・・・結果は出ていないけどね、まあ、落ちたんでしょうね公立校。絶対に。
なんかもね、どうでも良くなってきたんですよね、全て。
次回更新日、2月25日です。はい。




