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NOISE  作者: 坂津狂鬼
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狐狩り-9

特に描写が下手ですいません

「チッ、腕が一本消えたぞ」

「俺が撃ち抜いたからな。消えるのは当然だろ」

「俺の腕だぞ! 何してくれてんだよ!」

「仕方なかったんだ。それより、さっさと他の腕(,,,)を動かせよ。標的が俺達に向かって動き出した」

小月の前方500メートル先にいる、男達がそう会話していた。

実は小月が相手にしていたのは一人ではなく二人であった。腕を操る人間と《何か》で射撃する人間。

小月はまだこの事を知らないでいる。

それは彼らにとっては好都合であり、小月にとっては不都合である。


*********************************************


何となく、嫌な予感がした。

だけど立ち止まる暇なんて無い。早くシキのサポートに行かなきゃならないんだ。

予感程度で立ち止まってる暇が無かった。

だから、

「ッ!?」

両方の足首を掴まれる失態を起こしてしまった。

砂の中から、さっきと同種の腕が生えてきたのだ。

数は2つじゃない。

俺の周りに何十何百もの手がいきなり一気に生えてきたのだ。

囲まれた。いや、それどころじゃない。

俺の周りに生えている腕と、さっき俺が引き抜いた腕は酷似している。同じ物なんだろう。

同じ物品、という事なら危惧する必要は無い。

だが、俺がいるのは裏の世界だ。

『同じ人間から何本も腕が生えてきて、それは着脱可能で、遠隔操作できる』なんていうのも不可思議じゃない世界だ。

もしも、同じ人間から、という方なら危惧しなければならない。

何故なら、俺の能力は一人に一日6回までしか使えない。そして腕に対しては一度力を使ってしまった。

同じ人間の物なら、あと5回しか力を使えない。

掴まったままだと、《何か》の射撃を喰らう。

離させても、周囲に大量にある手がまた掴みにくる。

そうして力をその場しのぎに使い続ければ、いずれは《何か》の射撃を喰らってしまう。

そして、黑鴉はこの場では使い物にならない。

油断した・・・なんて言葉で済ませられる状況じゃない。

くそっ!! 《何か》については掴め掛けていたのに、今度は手の方が俺の邪魔をするのかよ!!

奥歯を噛み締めていると、手が俺を前へと引っ張ってくる。

最初と同じ手段だ。このままだと《何か》の射撃を胸に喰らってしまう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・・・・最悪だ」

本当に最悪だ。

思いついた策があまりにも、希望的観測過ぎる。

俺が頑張ったって、少ししか結果に干渉出来ない策しか思いつかないなんて、本当に最悪だ。

俺は両足を手に引っ張られながら、取り敢えず願ってみる。

どうかこの手が同じ人間の物でありますように、と


*********************************************


「素直に諦めたのかな?」

「さあな。何にしろ、俺のやる事は変わらない。それより、さっきみたいな異常行動をするなよ」

「離したあれの事言ってる? あれは俺にも何で起きたか分からないんだよ」

《何か》を射撃している男は、隣にいる腕を操る男を見下したような目で見て、

「次やったら、どうなるか、分かっているか?」

「俺の思う通りに一瞬動かなくなったんだよ。それは俺の責任じゃない」

脅してはみるが、腕を操る男はそう言い返したきり、喋らなくなってしまった。

(まあ、俺のやる事は変わらないか)

男は掌を小月のに向け、《何か》で射撃する。

だが、小月の体はいきなり前のめりになり、また《何か》をかわしてしまう。

「また、か」

「俺のせいじゃないからね。勝手にそうなったんだから」

呟きは隣にいる腕を操る男にも聞こえたらしい。

責めるつもりで言ったわけでも無いのに言い訳を聞かされ、《何か》を射撃する男は若干気落ちする。

「・・・俺の射撃は次発まで10秒かかる。そう何回もぶっ放せるわけじゃないんだが」

「分かってる。ちゃんとに足止めするさ」

前のめりになった小月は、そのままの勢いで前に走り出していた。

どうにかして前に行きたいらしい。近距離に至れば黑鴉が使えるからであろう。

そんな彼の両足をまた手が掴み、そのまま引っ張り出す。

いきなり両足を掴まれたため体勢を崩したが、小月はどうにか上半身を起こす。

5・・・4・・・3・・・2・・・1。

片方の男が掌を向け《何か》を射撃する。

だが、また小月の足を掴んでいたはずの手が離し、前のめりになり《何か》をかわす。

いつの間にか距離は相当縮まっていた。

500メートルあった距離が、今では200メートル近くまで縮められていた。

小月が前に向かって走っていた事と手が前に向かって引っ張っていた事が原因だろう。

夜で視界が暗い状態だ。標的がわざわざこちらに近付いてくれるのは喜ぶべきだろう。より確実に狙えるから。

だが、相手も無駄に近付いてくるはずが無い。何か策があるんだろう。

接近させ過ぎては、こちらが倒される可能性がある。

「さっさと動きを止めろ!!」

思わず腕を操る男の方を見て怒鳴ってしまう。

「分かってるって! そうカッカなさるなよ」

走って、ただ前に直進してくる小月の両足をまたまた手が掴み、引っ張る。

今度は二つだけではない。片方の足を10本の手が掴んでいる。これならば小月の能力も通用しない。

いや、そもそもこの手に対し、小月はあと1回しか能力を使えない。

何故なら彼の予想通り、腕は男の体の一部であるからだ。

一人に対し、小月の能力は6回までしか使えない。

《何か》を射撃する男ならばあと6回は使えるが、腕を操る男に対しては残り1回しか使えない。

もう小月はこの腕を振り切る事が出来ない。

普通は。

ここで小月の能力について少し考えてみよう。

小月の能力は相手の行動を少し歪める力だ。受動的で回数制限が有り、動きを止めたり、動かす向きを変える事しかできない能力だ。

能力としては実にしょぼい。凡庸性も実に低い。

だが、使い方によっては、凶悪な能力になる。

例えば、盆休みにあったパーティの時、小月は銃の軌道を能力で逸らした。

あの時はただ上へ逸らしただけだったが、考え方によっては小月は銃の軌道を思うのまま操ったことになる。

つまりは逸らす事が目的だったため、小月は上に軌道を変えたが、その気になればシキに向かって軌道を逸らす事も出来たと考えられるのだ。

簡潔に言おう。

小月の能力は、使い方によっては、6回まで銃などの軌道を思うのまま操る事が出来る。

(今度こそ当てなければ!!)

《何か》を射撃する男が小月に掌を合わせようとする。

その時、ここがもう少し明るければ、小月が笑うのが見えたかもしれない。

男の掌は何故か小月では無く、隣にいる腕を操る男の頭に向けられる。

「おいおい、向ける場所が違うよー」

腕を操る男は声を震えさせながら言う。

対して、《何か》を射撃する男はこう叫ぶ。

「逃げろ!!」

だが、それは不可能。

動き出そうとした脚が不自然に止まってしまったから。

射撃音は無い。だが音はあった。

《何か》が当たった物は消滅してしまうようになっている。

だから、腕を操っていた男の首から上が無くなり、頸動脈から鮮血が噴出する音だけがなっていた。

小月の足を掴んでいた手が自然と次々離れていく。

全てが離すのを待ってる時間など、小月には無い。

姿勢を低くして、なるべく速く走る。

小月と男の距離は残り150メートル。

50メートルを未だ6秒代で走れない小月が全力で走り続けても20秒以上は掛かってしまう。

最低限、あと2発は《何か》の射撃を受けなければいけない。

小月の能力で外させたり、本人に向ければいいのだが・・・・・。

(やっぱ、そう簡単にはいかねぇーよな・・・・・・)

男はあらかじめ小月に掌を向ける。小月の能力が何だか気付いたためだろうか。

小月もそれを承知で真っ直ぐ前へ走る。

ジグザグに走るなど、面倒な事はせずに黑鴉で決めるつもりなのだ。

だが、黑鴉は零距離でしか使えない。

距離は残り100メートル。

もうすぐ、一発目の射撃がある。どうやったってまだ黑鴉が届くはずが無い。

どうしても黑鴉で決めたいのならこの一発目はどうしてもかわさなければならない。

(・・・・面倒だが、仕方が無い。ただ少しずらすだけなら簡単だしな)

小月はそう自分の中でケリをつけると、ほんの少し横にずれる。

男はすかさず掌を軌道から逸れた小月に向けようとしたが、向けられず、そのまま《何か》を射撃してしまう。

一発目はかわした。これで10秒間は《何か》の射撃は出来なくなってしまった。

小月は《何か》に対して大よその推測はついていた。

射撃の時間制限が有る事は、引き抜いた腕を盾代わりに使ってから、体内時計で計り続けていた為、知っている。

そして、《何か》のもう一つの特性も。

小月は必死に走る。知っていても実用できなければ、ただの大バカだ。

シキのサポートに行くのも、遅いより早い方が良い。

着々と距離は詰まっていく。

残り50メートル。

もうそろそろ、二発目の射撃がくる。

だが、ここまで来れば、あとは小月の策通りに事が動く。

男はあらかじめ掌を小月に向けている。

小月もさっきのように横にずれたりはしない。そのまま全力で真っ直ぐと進む。

が、射撃の直前。小月は少しスピードを落とし着ていたパーカーを脱いだ。

そしてそれを自分の前に、正確には男の掌の直線距離上に放り投げる。

パーカーが《何か》に射撃される。

空気に溶けるようにパーカーが消え、小月が真っ直ぐに向かってくる。

《何か》は当たればそれを消滅させてしまう恐ろしい物だが、一切貫通性が無い。

何かを盾代わりにしてしまえば、簡単に射撃は防げてしまう。

男と小月の距離は残り50メートルもない。

幾らなんでも、50メートルを10秒で走るほど、小月の脚は遅くない。

小月は一応高校生である。平均以下の運動神経ではあるが、運動音痴というわけでは無い。

小月はズボンと腰の間に挟んである黑鴉を手に取る。

零距離まであと少し、残りは10メートルというところだろうか。

ラストスパートと言わんばかりに、速度を増す。

男は一歩二歩と後ろに下がるが、そんな少しの距離で何秒も稼げるわけが無い。

黑鴉の銃口が、男の腹を突く。

そして、


バンッ!!!!


乾いた銃声(?)が夜の浜辺に大きく鳴り響く。

小月は反動で軽く後ろに飛ばされ、男は大きく後ろに飛ばされた。

そして波の音が静かにその場を包み込む。

・・・・・・・・・決着はついた。

ね? 悲劇の夜なんてなかったでしょ?

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