日常
ま、これはアソンロジーだ、と宣告しておきますよ。
立案 澄葉照安登
「なあ、シキ」
「黙れ」
俺は蒼い炎で燃やされた。
「ふげぁやぁぁァァァァァっ!!」
地面に伏せた俺を見下すように視線を向けたシキは、
「今から一言でも喋ってみろ。殺すぞ」
そのまま俺の頭蓋に足を乗せ、忠告する。
コイツは何を怒っているんだ?
8月16日のこと。
俺は溜まっていた夏休みの宿敵に手を付けた。
情けない話だが、暇であった義妹の手を借り、サクサクと宿題をやっていると、シキが乱入してきた。
「何だ、それ。面白そうだな」
乱入したシキを止めるための説得の時間は無駄だなと判断した俺は、そのままシキを放置して宿題をやり続けた。
意外な事にシキは頭が良かった・・・・・なんて俺にとって嬉しい展開は起こってくれなかったが、なんであれ、借りれる手が一つ増えれば作業効率も良くなる。
午後の3時になり、宿題の大半は終わった。あとは徹夜して読書感想文を完成させれば終わりの状態になったのだ。
これは義妹とシキのお蔭だろう。まあ礼をしたいと思っても金がないから何かを奢る事が出来ない。
なんせ俺の所持金は20円だ。来月までこれで乗り切らなきゃいけない。
そこで義妹が言った。
「・・・なら、私が適当に買ってくる。何がいい?」
「ケーキ!」
俺が考えるより早く、閃光のようにシキが即答した。
でもまあ、デザートと答えると思っていた俺には少し意外な答えだった。
限定するなんて。そういえば、いつかの時、ケーキ屋に寄ったことがあったな。
その時に気に入ったものでもあったのか?
「・・・分かった」
そう言って、秋音は家を出て行った。
~~~30分後~~~
義妹が買ってきたケーキは合計7つ。
チョコケーキにモンブラン、レアチーズが二つにショートケーキも二つ。
シキは目を輝かせながらテーブルの上に並べられたケーキを見る。
多分この意気だとこうなるだろう。
シキ=3、義妹=2、俺=1.
まあ、妥当な配当だ。仕事量だと義妹のほうが多いけど。
どちらにしろ、俺は一つだけ。
まあ、取ったもん勝ちみたいだから早めに取っちまおう。
「・・・あ、私はショートケーキとモンブランだから」
そう言って、義妹は二つを取っていった。
「あ、俺もショートケーキ」
そう言って、俺はテーブルに置かれた残り一つのショートケーキを取ってい――――
「ふにゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
・・・・・・誰かが、奇声を上げた。
一体誰が?
ちなみに俺じゃない。義妹は奇声を上げる理由がない。
「・・・・・・シキ?」
俺は恐る恐る尋ねるが、シキは一切喋らない。
「なあ、シキ」
「黙れ」
俺は蒼い炎で燃やされた。
「ふげぁやぁぁァァァァァっ!!」
地面に伏せた俺を見下すように視線を向けたシキは、
「今から一言でも喋ってみろ。殺すぞ」
そのまま俺の頭蓋に足を乗せ、忠告する。
コイツは何を怒っているんだ?
その後、俺は右人差し指―――以外の全部の骨を砕かれ、蒼い炎で修復された。
しっかりとした手当をすれば、生命力でなんとかなるらしい。
つーか、陥没した骨とぱっくり折れた脊髄にちゃんとした手当が出来るのか?
まあ、直ったんだからどうでもいいが。
一体、シキは何を怒っているんだ?
俺はショートケーキをフォークで切り、刺し、口の中に運んで―――――、
「・・・・・何か用ですか、シキさん?」
いく様をじっと睨みつけてくるシキに俺は一応尋ねる。
「いや別に」
「なら、こっち見るの止めて貰えます? 人に見られながら食うのはちょっと気分が悪いっていうか――」
「それはよかった。ちょうど小月の気分を悪くさせる方法を考えていた所なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・怒ってます?」
「怒ってない」
・・・・・・・・・あ! もしかして!
「もしかして、実はショートケーキが食べたかったのに全部取られて拗ねてぎぇれぅぅぅがぁぁァぁぁっ!!」
「おかしいな。さっき黙れと言ったはずだぞ」
シキは俺をその蒼い冷徹な瞳で睨み付けながら、燃やし続ける。
うん。このままだと俺死ぬわ。
「最後の遺言を聞いてなかったな」
シキはそう言うと、蒼い炎で燃やすのを止め、俺に問う。
「さあ、何を言う?」
・・・・・・・これは。
これは多分、金の斧とかのあれだ。
金の斧と銀の斧、どちらですか? と訊かれている状態なんだ。
ここで正直に答えなければ・・・・・死、あるのみ。
俺は慎重に考え、答えを導き出す。
「味見する?」
直後、俺は蒼く輝いていた。
・・・・・・・ミスった。最悪だ。
次回は本編です。