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NOISE  作者: 坂津狂鬼
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盆休み-12

なかなか先へと進んでくれない。

何故ならこの回はバトルがないから。

この最悪の状況下で俺が唯一出来る事。

「アリサさん。逃げて下さい」

主人公ヒーローじみた台詞だな。俺がこの台詞を言っているんだから笑いものだ。

でも、下手に残って二人死ぬなら、どちらかが逃げてどちらかが残った方が良い。

俺は扉に視線を移しながら言う。

「でも」

「いいから。早く」

早くしないと、怪物が暴れだす。

「だからァ、逃がさねェーッて言ッてんでしョうが」

爆風に押されたように、扉が俺達に向かって突進してくる。

俺はとっさにアリサさんを庇うように押し倒し、どうにか直撃を免れる。

直撃は免れたが、何かが背中を引き摺った感覚はある。

幸い、悲鳴を上げるほどではなかったが、涙がでそうな痛さだった。

心の底から主人公ヒーローでない事を実感しそうだ。

「あちャー。一気に押しちまったからァ、少し上に浮いちまッたか」

怪物の残念そうな声を聞き、俺はまた立ち上がる。

アリサさんを外に出すには、もうこの部屋を抜けてもらうしかない。

だが、抜けるにしても、出口には怪物が片手をブラブラさせながら立っている。

・・・・・・・突破しないと。

「おッ、さッきと違ッて好戦的な目だねェ」

「出来れば、そこを退いて欲しいんだが」

「無理ィ。そこの女を殺さんといけェない」

「それは、残念だ」

「どォいう意味だァ?」

「俺が犠牲になってでも、アリサさんを逃がすつもりだから。このままだと俺が死んじまう」

俺が真実を告げると、怪物はニタリと笑い、

「いィねェ。そォいう、自分の格の位が分かッてる人間は、オリャ、好きだよ」

片手を上げ、宣告する。

「場所ォ、映してェやる。そッちの方が楽しそォだ」

一瞬、上から叩き潰される感覚があった。

何が起きたかは、当然わからない。

でも多分、感覚で言うと、圧迫される感じ。

一体、これは何だ?

そんな事を考えていると、床が崩壊した。・・・・・・・・・・・・・・って、え?

崩れ落ちる瓦礫の中で、俺は思う。

このままじゃ、確実に死ぬよな。

あれよあれよという間に、真下にある部屋の床が見えてきた。

状況が分からないけど、こりゃ、ヤベェー。

俺は目を瞑って、取り敢えず生きてる事を、死んでてもシキが生き返らせてくれる事を願う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・あれ?

俺は目を開け、現状を確かめ―――――?

何でだ? 何で俺は、無傷で立っている?

アリサさんは?

「アリサさん!」

「平ェ気だ。騎士道精神溢れる、お前さんの為に生かしてェおいた」

取り敢えず出した俺の声に、返ってきたのは、アリサさんの声ではなかった。

俺は声のした方向へ、体ごと向ける。そこにいるのは怪物だ。俺に余裕なんてものは無い。

全力でいかなきゃ、瞬殺だ。

「騎士道精神より、偽善心のほうが俺にはしっくりくるね。そっちの方が格好良いだろ?」

俺は不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

まあ、実際は、顔の筋肉が引き攣って、強制的に笑わせられてるだけなんだけどな。

「おいおい。自分を小物だと考えちまッたら、ダメだぜェ」

「小物じゃなくて、雑魚ってか? 確かにその通りだな」

今は出来るだけ、時間を稼ぐ。そうすれば生き残れるかもしれないし、そうしなければ寿命は着実に縮む。

確実に、時間を稼ぐ。俺はただそれだけを全力でやればいい。

拳と拳のぶつかり合いなんて、俺には不釣り合いだ。

相手との対話。こっちの方が俺向きだ。

「なあ、二つ訊いていいか?」

「何だァ?」

「一つ目は、何でアリサさんを狙う」

「仕事だからなァ。表であれェ裏であれェ、仕事をしなきャ、食ッていけないだろォ。それに」

怪物は片手を横に向け、

「この力だッて、使ッてやらなきャ可哀想だろォ?」

壁が何かに貫かれると同時に、そう言う。

今のが、この怪物の持ってる能力?

床や天井を崩壊させて、自分の速度を増し、扉を吹き飛ばし、壁を貫き、多分だけど、俺達二人と自分を無傷で瓦礫の崩壊と重力から守った。

これが、コイツの能力?

本物の怪物じゃねぇーか。

壊して守って、コイツの能力の方が俺よりよっぽど主人公ヒーローじみてるじゃねぇーか。

「・・・・・・・・・」

「んァ? 二つ目の質問はまだかァ?」

怪物が律儀な性格でよかった。

驚嘆していた俺に、寿命を延ばす時間を与えてくれたんだから。

「二つ目は――――」

今度の質問は、正直な話、きっかけ作りのための質問だ。

寿命を延ばす為のきっかけ。対話を長引かせるきっか。

相手を止めるきっかけの質問だ。

「お前、他人の女性の血を飲んだこと、あるか?」

雑音拒絶パーソナルノイズの事かァ」

雑音拒絶パーソナルノイズ。7月28日、俺がシキの血を飲んで手に入れた能力。

その能力は様々で、血を飲む時に強く拒絶したものが間接的に能力に関係するらしい。

ちなみに俺の能力はさっきから言ってる通り、相手の行動を少しだけ歪める力。

しょぼい能力である。

まあこの怪物が俺と同じく雑音拒絶を持っているなんて事はないだろうけど、話のきっかけには良い話題だった。

だが、怪物から返ってきた答えは俺の予想のものとは違った。

「そうかァ。俺が雑音拒絶だって事は、バレたかァ」

へぇー。あの怪物って、雑音拒絶だったんですね。

一体、どういう力なんでしょうか?

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