夏祭り-3
これで夏祭り編は終わりです。
その後、熱いからという理由でサイダーを1本買い(俺用に買ったサイダーをシキが一度飲んでお気に召さなかったため)、焼きそばを食い(これは単純に俺用だ)、お面を買い(これは単純にシキが欲しいと言ったので買ってやった)、射的をし(シキがやりたいと言ったため。ちなみに一発も景品に当たる事は無かった)、なんやかんやとブラブラ歩いているうちに、待ち合わせの10時になってしまった。
俺達二人は先に待ち合わせ場所に来て、2分位後になって、義妹が現れた。
「ちょい、秋音。話がある」
シキにその場で待ってるように言いつけ、義妹を呼び出す。
俺が義妹を名前で呼んだ時点で警戒すべきところを、何の警戒も無しに付いて来る様が少しばかりムカついた。
「・・・話って何?」
「んー、いや、大した話じゃないんだけど」
と俺は嘘を吐き、
「シキに何を吹き込んだ?」
単刀直入に質問する。
シキの異常さは、誰かに何か吹き込まれたような感じだったからな。シキに吹き込むとしたらコイツしかいない。
「・・・別に何も」
いつもの口調と間合いで言いやがるところが尚更ムカつくな。
「よし、分かった。正直に話さなければ―――」
「・・・話さなければ?」
「お前の服を制服以外すべて燃やす」
さすがに制服まで燃やすと、学校に俺が疑われるからな。
「話すか? 燃やすか?」
一応、二択はやってやる。俺にも良心というものがあるからな。
「・・・話します」
義妹は素直に自白を始めた。
「つまり、シキが俺にお礼を返したいとお前に相談したわけだ」
「・・・はい」
「そしてお前はこう言ったわけだな。『あの愚兄に礼を返したって何もいい事は起こらない。だから返さなくたって良いんじゃない』と」
「・・・はい」
まあ、その程度の台詞なら俺は怒りもしない。言われなれたからな。
「だけどお前は浴衣を選んでる最中にシキに吹き込んだんだな?」
「・・・はい」
「なんて吹き込んだ? 一言一句正確に言え」
「・・・『そう言えばこの前、愚兄にお礼を返したいって言ってたじゃない。その事で少し思いついたんだけど。あの愚兄と一緒に縁日を巡るなんてどう? そう、それでその途中で少しお礼を言えばいいの。ありがとう、とか』って言いました」
うんうん。よーく、分かった。だからシキは無理にたこ焼きを食べたいと言い、それで買ってきた俺に礼を言ったわけか。
あれはシキなりの(吹き込まれた)礼だったのか。
でも・・・だからと言って、この義妹には罰が必要だよな。
「・・・・・・あ、そう言えば。盆休みに田舎のジジィ共に里帰りしろって言われてたなー」
「・・・え?」
そうとう動揺した、え? だった。
それもそのはず、義妹は田舎にいるジジィ共が大の苦手だ。
そこに行くことで、今回は勘弁してやろう。
「シキ、待ったか?」
義妹が文句を沢山俺に言ってきたが、それを綺麗に無視して俺は待っていたシキに話しかける。
「全然」
シキは短く返す。声色的には、もう帰りたい、と疲労の色をさしている。
まあ、こんな人混みの中、無理して俺と歩いていたんだから仕方が無い。
あ、そうだ。
「ちょっと最後に何か買ってくるわ」
「なら、アタシも行く」
俺が勝手に歩き出すと、シキもその後に付いて来る。
別にもう付いて来なくていいのに。礼も言っただろうに。
・・・・・・あれ? そういえば何で、俺に礼なんか言ったんだ?
俺、そんな大層な事、したか?
ま、どうでもいいか。
「おっさん。それ、4つ」
「あいよ」
屋台のおっさんに品を注文してしばらく待つ。
「確かこれは・・・」
「チョコバナナ。最初に説明したろ。今日、お前甘い物食ってないから最後に。それに全員分買うしな」
「だが・・・・・何故、4つなんだ?」
シキは不思議そうに首を傾げる。
それは、当然――――、
「はい、チョコバナナ4つ」
俺は料金を先に払ってから、チョコバナナを受け取る。
「ほら、シキ。2つ持て」
「分かった」
シキの両手はそれぞれチョコバナナで埋まってしまった。
「ほら、もう先に二つ食っていいぞ」
「いや、それだと」
「お前が持ってるやつはお前の分だ。俺と義妹の分は俺が持ってる」
俺はそれだけ言うと、シキより先に義妹の元に戻った。
後ろでシキがどんな表情をしてるか分からないが、喜んでくれたら、本望だ。
ほのぼのしてましたね。ムカつきますね主人公。ぶち殺したいです。
まあ、あれが張空小月なんだからしょうがないですけど。
次は帰郷です。田舎の海で遊びます。(嘘です)
ところで、浴衣の描写はいれたほうが良かったですか?
入れて欲しい方は感想欄に書いてください。
小月目線で中途半端な説明になりますが、付け加えることが出来ます。