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NOISE  作者: 坂津狂鬼
21/66

夏祭り-2

カオスじゃなくて・・・・・何だろ?

集合時間、午後7時。

俺達3人は、集合時間の5分前に来たのだが、もう殆どのクラスメイトが来ていた。

みんな早いなー、と感想を抱いている俺である。

縁日はちょっと遠い所にある大きめの神社で行われる。

まだ日が沈んでないため、光などが灯っている屋台は無いが、客はもう結構いた。

本当に皆、来るのが早い。こっちなんてシキを着付けるのにも時間がかかったし、シキが上手く歩けなくて、さらに時間がかかったっていうのに。

「あと、来てない奴は誰だ?」

クラスの誰かが言った言葉に、

「古瀬の野郎だな」

軽く周囲を見渡した俺が答える。

アイツがもしこの場にいたら、真っ先に俺―――の近くにいるシキに近付くはずだ。

そういう奴だからな、アイツは。

「何だ。古瀬だったら措いて行っても平気じゃん」

クラスの女子が言った良識的な言葉にクラスの皆が賛成して、それぞれの散策時間が始まった。

「それじゃ秋音。10時にここに集合って事で」

「・・・分かった」

俺は義妹と離れる。そうしなければ、クラスのバカ男子共が声をかけ難いそうだ。

「それじゃ、シキ。お前も小遣い渡すから一人で―――」

「何だ、アレは!?」

はしゃいだ声でシキが俺の台詞を妨害する。

シキの目線の先には、白い入道雲のようなものを棒に纏わせた物を持ってる女児がいた。

「あれは綿菓子だな。甘くてふわふわしてる触感だ」

「じゃあ、アレは?」

シキはリンゴ飴を持った少年に指を指す。

「あれはリンゴ飴。生のリンゴに飴をからませた食い物だ。まあ、俺は食ったことないけど」

「じゃあ、アレは?」

シキは今度は屋台に置いてあるチョコバナナを指す。

「あれはチョコバナナ。結構美味いぞ。バナナをチョコで浸してあるんだけどな――――」

「あれが食いたい!」

シキは子供のようなテンションでチョコバナナを指しながら言う。

「だから、小遣い3000円やるから自分で買ってこい」

「何でだ?」

「何でって、そりゃ・・・・・・」

お前と話している場面を古瀬に目撃されると、縁日が鮮血の飛ぶ戦場に変わっちまうからだ。

って説明しても、シキには通じないだろうな。

どう言い訳をしようか・・・・・。

「取り合えず、一人で回ってくれ。俺はちょっと用事があるんだ」

「嫌だ」

シキが問答無用で断ってきた。

珍しい。コイツってそんな奴だったか?

「ん? 小月・・・か?」

俺がシキの態度に驚いているうちに、後ろから声を掛けられた。

・・・・・・・どうやら、もう何もかもが遅いようだ。

「よう、古瀬。夏休みは何か面白いことがあったか?」

俺は後ろを振り向きながら、軽い調子で言う。

「いいや。反対にお前は何か面白い事があったようだな」

俺の背後にいる人物は・・・想定通り、古瀬聖ふるせさとしだった。

黒髪黒目の純血日本人である彼は、一級フラグ建築士の資格を持っているとの噂がある。

まあ、詳細説明をするのが面倒なので簡単に言ってしまえば、古瀬は俺の強敵しんゆうだ。

「自分の舌を噛んで黙るか、お前が舌を引き千切られて黙るか。どっちが好みだ?」

「お前が舌を噛み千切って死ぬのが好みだ」

俺と古瀬は軽い挨拶を交わし、

「ところで小月。お前の隣にいるは誰だ?」

古瀬が先制攻撃を仕掛けてきた。

くそッ。今回は圧倒的に俺が不利だ。攻撃をする槍も無ければ、防御する盾すら無い。

逃げるか? いや、敵に背中を見せるなど日本男児の恥だ!

「知り合いだ。可愛いだろ」

「・・・・・開き直ったか」

槍も盾も無いなら、捨て身の攻撃しかないだろ。

あとでシキに何て言われようが、今はコイツと戦うためだ。仕方が無い。

まあ、それに嘘は言ってないからな。平気だろ。

「あれぇ? なんでお前は夏休み中に出会った美少女を家に措いてきたんだぁー、古瀬くぅん?」

「だから、お前と違って俺は誰にも出逢わなかったって言ってんだろうが」

よし。これで連続攻撃は避けられた。これ以上の追撃は出来ないが、ひとまずこれでよしとする。

「それより、お前は何をどうしたら、そんな娘と出会ったんだよ?」

「知り合いだ。可愛いだろ」

「いや、質問に答えろよ」

くっ!! 絶体絶命。最悪だ。

このピンチを一体どうやって切り抜けたら――――ッ。

「小月、行くぞ」

俺のピンチを察してくれたのか、それとも俺が世界の裏側について喋るとでも思ったのか、シキが俺の手首を掴み、強引に歩き出した。

「お、おい。ちょっと――」

と口では躊躇いながらも、俺の脚はシキの進む方向に歩を進めている。

誰だって、戦場からは抜け出したいだろ?



「・・・・・・おい、小月」

しばらく歩いてから、シキが俺に話しかけてきた。

何だ? チョコバナナを買えと言いたいのか?

それならもう店を通り過ぎちまったぞ。

「その、あの・・・・・・」

もじもじとシキが口籠る。

なんか、今日のシキは少しおかしいぞ。俺、なんかしかた?

「その・・えーとぉ・・・・あれが食べたい!」

シキが指を指した屋台の商品は、たこ焼きだった。

・・・・ヤバい。こりゃ、今日のシキは

完全におかしい。

「お前あれ、甘くないんだぞ?」

「そ、それべも食べたい!」

それじゃぁ、仕方が無いな。本人が食べたいって言うんだから。

俺は屋台でたこ焼きを一つ注文した。

もしかしたらシキが残すかもしれないので、俺の分を頼まなかった。

一箱6個入りのたこ焼きを持ってシキの元に行く。

「ほれ、買ってきてやったぞ」

「あ、ありがとう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は思わず絶句した。

シキが俺に礼を言ったのか? あのシキが?

奢って貰っても礼を言わないシキが、これごときで礼を言ったのか?

「・・・? ん」

呆然と立ち尽くす俺に、シキは手を差し出す。

さっさと渡せという事だ。うん、これはいつものシキだ。

俺はシキにたこ焼きの入ったプラスチックの箱を渡す。

シキはすぐさまそれを開け、中に入っていた爪楊枝をたこ焼きに刺した。

「熱いから火傷しないようにな」

「うん」

シキは短く返すと、ふぅふぅ、と軽く息を吹いて冷ましてから口の中に入れる。

いや、熱いのは外じゃなくて中身なんだけど・・・・・・・。俺が今更忠告を発したところで遅いに決まってる。

「あふぅッ!!」

シキは口を「ほ」の形にしながら手を当てる。

「あふぅい、あふぅいふぉ、ふぉふぅひぃっ!!」

熱い、熱いぞ小月!! と言いたいのだろう。一切言葉になってないけど。

「我慢して、食え」

俺は呆れた様にそう言う。だって俺にはこれしか言いようがないだろ?

シキはしばらく、ほぅほぅ、言いながらたこ焼きを噛む。

そして呑み込んだ後、

「何だこれは!? 中は熱いし、甘くないし!!」

「ああ、だから俺は忠告したんだ。甘くもないし、火傷をしないように気を付けろって」

荒ぶるシキに対し俺は静かに言う。

わざわざ人が忠告してた事を無視するからこうなるんだ。人の話はちゃんと聞け。

シキは奥歯を噛み締めると、

「小月、口開けろ」

「はぁ? なん――――」

俺の口の中にたこ焼きをブチ込みやがった。

俺の反応は、まあわざわざ記述することもないだろ。

熱いに決まってるんだから。

なんかイチャイチャしやがってる。

ムカつくなー。ブチ殺そっかなー、主人公。

夏祭り終わったら、覚悟しておけよ。

・・・・・・・・あ、ヤベっ。ネタバレというか伏線を――。

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