夏休み-8
ちょっと夏休み-8は書くのが面倒なので、勘弁して。
「そろそろだ。気を引き締めろ」
「・・・・シキ、俺にその台詞は無用だぜ」
俺は能力を得た。だが、どういう能力だか分からない。
という理由でさっきまで園塚とシキにタコ殴りにされていた俺だが、今は、最初に銃口を向けられた場所にいる。
ココで敵の殲滅部隊を迎え撃つそうだ。
ほぼシキ一人の力で。
だから、俺には無用ってわけだ。・・・・・・・・・・・・・・自分で言ってて悲しくなるよ。
「いいや、小月。お前には生きていてもらわなければ」
「・・・・・何でだ?」
「帰りにデザートが食えなくなる」
即答で返すな。もうちょっと引っ張れよ。
はぁー。・・・・・・・・・・・・まったく、
「なら、お前も気を引き締めろ」
「・・・・・何でだ?」
「帰りにデザートを奢れなくなる」
「・・・・・・・・・・・・バカか、お前は」
「ああ、そうだ」
俺もシキも物凄いバカだ。少しは人に気を遣え。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そして、しばらくの沈黙が過ぎ、
「来たぞ」
二人だけの防衛戦が始まった。
俺の真正面で大きな爆発が起こる。
衝撃波により、俺は少し退いたが、シキは一歩たりとも動かない。
場馴れ、っていうやつなのか?
俺がそんな事を思っているうちに、爆発による煙に紛れて、複数の影がこちらに近づいてくる。
「小月。お前が手出しする必要は―――」
「ない。分かってる」
シキの忠告を俺が引き継いで言いながら、両手をぶらぶらと挙げる。
まったくシキは、俺が手出し出来る程の力を持ってると勘違いしやがって。
どんなに足掻いたって、俺が何かを助ける事なんて出来るわけがない。
「ならいい」
シキはそう言うと、こちらに来る複数の影に向かって掌を向ける。
すると、影が蒼い色を発し、絶叫と共に倒れていく。
【蒼い死神】の、シキの力。生物の生命力を自在に操る力。
それによって生命力を根こそぎ削り落とされた殲滅部隊の人間たちが次々と倒れ伏していく。
さっきまで蘇生のために使われていた力が、今度は殺人のために使われていく。
・・・シキに似合わない。
なんて思いはしないものも、やはり、少女が操るには少し大き過ぎる力だ。
・・・・・・・・・・・・・・・って、あれ?
「なんか数が増えてないか?」
シキの蒼い炎に燃やされ、倒れ伏す敵の数が増えるのは当然だ。今も尚、シキは新たに燃やし続けているのだから。
だけど、幾らなんでも。
「こっちに来る影の数が5倍レベルで増えるのはおかしくないか?」
「・・・・確かに、そうだな」
シキが少し苦しそうな声で答える。
それはそうだ。シキは今、ゲームでいうシューティングをやっているのと同じだ。
しかもただ単純に一定量で、数や速さが増すのではない。
敵を倒せば倒すほど数が5倍に増えていく。
気付けば今は、1秒間に30人単位で燃やし続けている。
「なあ、シキ。裏の世界でそういう能力を持った奴は知らないか?」
「知るか」
短い即答だった。
「小月、今暇か?」
「ああ」
短い即答をした。
「なら、突撃をかけろ」
「は?」
「人影が増えるのには、何か理由があるはずだ。だから、突撃して、調べてこい」
「いやいやいや、無理でしょ! 絶対に怪我するじゃん!!」
「唾でもつけておけば、自然と治る。ついでにアタシの力で直してやるから」
「そんなので俺が行くほど――――」
「臨死体験でもこの場でするか? ん?」
「喜んで行ってきます!!」
俺はすぐさま煙が巻き立つ方へと全力ダッシュした。
したくねぇーもん。臨死体験。
だが・・・・・・・・このまま、無理です、なんて戻ったら殺される。謎を解明するぞー、なんてノリでこのまま行っても殺される。
はぁー、最悪だ。
俺はそんな事を思いながらも、脚を動かし続けた。
今脚を止めたら、蒼い炎を纏いながら臨死しなければならなくなる。確実な死だけは避けたい。
そんな事を思っているうちに、煙の中に突入した。
俺は一旦、そこで足を止め、手で口や鼻を隠す。一応煙の中だからな。
それにしても、何も見えない。
灰色の壁に覆われているような気分になる。
と、そこに蒼の光が俺の上で灯る。
きっとシキの炎だろう。
蒼い光はそのまま俺の元へと落ちてきて、炎に包まれている物の正体を現す。
・・・・・・・ッ!?
これは・・・・・・・・・・俺がヤバい!
俺は落ちてきた蒼い炎で包まれた物を掴み、上に投げる。
「シキ! ここら一帯を焼き尽くせ!!」
俺はそう叫ぶと、煙の外に出ようとする。
そっちの方が、巻き込まれた時に臨死体験する時間が短くなる可能性が高い。
と、俺が出ようとする直前、煙ごと包むように蒼色の壁が出来上がる。
アイツ・・・・・ッ!! 俺ごと燃やす気か!?
俺は顔を両腕で隠しながら、蒼い壁に突っ込む。
クソッ! 確かに焼き尽くせとは言ったがよ、いくらなんでもこれは酷いだろッ!
蒼い壁を突き抜ける時に、一気に何かが殺がれる感覚に陥った。
何が削るだあの野郎! 削られるより殺される感覚だぞ。死ぬかと思った。
一気に体から力が抜けたためか、俺は重心を崩し、転がるように前に進む。
「これでいいのか?」
蒼い壁から出てきた俺に対し心配の一言もないのかコイツは。
「いいわけないだろッ!! 危うく死ぬかと思ったぞ!!」
「ならばいっその事、死ねばいい」
コイツに情は無いのか!?
「何を見つけた?」
シキは唐突に俺に質問をぶつけてきた。
多分、気になるんだろう。
「本体は見ていない」
「なら、出直せ」
「鬼かお前はッ!」
本当に、コイツは・・・・・・・・・・・。
「園塚に見せてもらった寄生虫。あれとまったく同じものが降ってきたんだ」
「・・・・・・それは本当か?」
シキは凄く重い声で問う。
なんだ? まずいことなのか?
「ああ」
俺が短く返すと、
「早く戻ってこい」
シキが意味の分からない事を言い出した。
いきなり何を言ってるんだ、コイツは?
「シキ、お前一体何を――――」
「いいから早く戻ってこい!!」
シキが本気で怒鳴っていた。
「あの寄生虫にはアタシの力は通用しないんだ!!」
それが意外過ぎて、次の言葉が聞こえなかった。
「ッ!!」
だけどその代り、何も考えられない状態だったため、後ろからの殺気に気付くことが出来た。
反射的に俺は前に飛び出す。俺の後ろから、破壊音が聞こえる。
後ろに振り返ると、人型の触手が大量にある生物がいた。
何だよ、アレ?
俺は慌てて立ち上がり、距離を取る。
「何だよ、アレ」
「お前がさっき言っていた寄生虫だ。もっとも、完全覚醒の前の状態だがな」
シキの近くまで来たので、俺はシキに尋ねた。
そういや、今は静かに答えてるけど、さっきは何で怒鳴ったんだ?
いや、今はそんな事どうでもいいか。目の前の敵に集中しないと。
「アレに、アタシの力は通じない」
「・・・・・それはつまり、アレは生物じゃないのか?」
「いいや。殺しても殺しても復活してきてしまうだけなんだが、アタシの力にとってそれが一番厄介だ」
不死身の化物っていうことか。寄生虫のくせに生意気な。
そして、不死身の化物がシキにとっては分が悪いから、園塚はシキに殲滅部隊の撃退を担当させたのか。
「つーか、園塚が化物を殺すんじゃなかったのか?」
「・・・・・・・・もしかしたら、園塚たちと対峙する前に殲滅部隊と対峙したのかもな」
「っていう事は、元々俺達の仕事は無かったっていう事か」
「そういう事になるな。無駄な労力を使わされた、腹立たしい」
相当機嫌が悪そうだ、シキの奴。
「どうする? 逃げるか?」
俺はシキに訊く。
まあ、一応、不死身の対策とかは思いついたけど、シキが逃げるっていうのならそれは言わずにおこう。
「嫌だ、と言ったらどうする?」
シキは疑問形で返してくる。
つまりは、引く気は無いって事か。シキらしいような気がする。
「サポートでもしてやる」
「それは・・・・・心細いな」
「絶対に使う言葉間違って・・・・・・・・ないか」
確かに俺がサポートしてたら心細いな。自分でもそう思う。
シキは俺の肯定の台詞を聞いた後に、
「・・・嘘だ。十分に心強い」
少し笑ったような気がした。多分俺の気のせい・・・って事にしておこう。それが一番いい。
「なら、不死身の対抗策を教えたいんだが・・・その前に一つ確認していいか」
「何をだ?」
「本体を殺せば、終わりなんだよな?」
「そうでなかったら、園塚はココからの脱出を最優先にしている」
つまりは、あの不死身野郎をぶち殺せばいいわけだ。
「何かいい策でも思いついたのか?」
俺の顔を覗きながらシキが尋ねてくる。
「シキ、いい事教えてやる」
そんなシキに俺は一つ、告げる。
「この世に生き返る生物はいても、死なない生物はいないんだ」
思いつかないわけじゃないんです。書けないんです。