夏休み-6
今回は短いです。
そして伏線を一切回収してませんし、伏線をはってすらいません。
「言った通りだろ。決して見ていて気分がよくなるものではない」
「確かにな」
取り調べ室では、あの後8回、死人蘇生が行われた。
園塚が8回も取り調べ中に殺してしまったからだ。
その度に無残な死に方をし、その無残な姿のまま生き返った奴には同情するしかない。
この死体を捨ててくる、と言った園塚は死体を肩に担ぎながら取り調べ室を出て、どこかへ行った。
今は俺とシキの二人で取り調べ室にいる。
「なあ、シキ。その力を使うたびに、お前に何か負担が掛かるとかは――」
「一切無い。何の代価も支払わずに、あの力を無造作に使える」
シキの声は少し重かった。
「あの蒼い炎は? 俺を燃やす時にも出たけど」
「アタシの力を使う時の・・・媒体のようなものだ。対象物を決定するサーチライト程度に思っておけ」
「・・・・・お前、前からあんな事をさせられてたのか?」
あんな事とは、当然死人蘇生の事である。
「いいや。ああいう風に力を使うのは、3度目だ。滅多にやる事じゃない。組織が潰れかけている今だからこそ、やっている」
3度目で滅多にやる事じゃない、か。俺には多く感じる。
「大体、アタシの力は一つだけだが、使い方によって対極に位置する。殺人と医療みたいにな」
・・・・・・ああ。
つまりは、いつもは殺人兵器として組織に使われているが、こういう時は死人蘇生のために使われるわけか。
クソッタレ。
「小月。お前はもう帰れ」
シキはそう告げ、俺は無言で返す。
「園塚は例外だが、ここにいる人間は優しい奴ばかりだ。銃口を向けたのも園塚が命令したからだろう。帰り道を訊けば、分かり易く答えてくれるはずだ」
淡々と言うシキに対し、俺は一言も発しない。
考えていたんだ。シキの事を。
【蒼い死神】と呼ばれる少女。組織の構成員。生物の生命力を自在に操る事が出来る力を持つ少女。
彼女は、一体どんな気持ちで、死人を蘇生していたんだ?
楽しい・・・訳がない。
嬉しい・・・はずがない。
面白い・・・なんて冗談じゃない。
きっと多分、辛いとか、苦しいとか・・・・・・・もしかしたら、それらの感情と離れるために何も考えずに行っているかもしれない。
無感情で無感動で無関心な心情にして、機械のように、ただ言われた通り動いているのかもしれない。
そして蘇生が終われば、嫌悪感や罪悪感に囚われる。
世界の理を壊す行動をした事に。
そんな状態で、彼女は今、俺と話しているのかもしれない。
まあ、こんなの、あくまで俺の勝手な妄想だけどな。
けど、少し、彼女を独りにさせておくのは酷なように感じた。
「・・・・・・・・待ってる、俺は」
そうシキに告げた俺は続けて、
「それで終わったら、帰りにデザートでも食いに行こう。俺の奢りで」
自分勝手な妄想で自分勝手な言動した。
偽善的な俺の思考がこう提案してきて、俺はそれを言っただけ。
決してシキに気を遣ってなんちゃいない・・・・・・・などと言ったらツンデレになってしまう。
「・・・・・・・」
シキは唖然とし、しばらく黙り込む。
そして、
「・・・勝手にしろ。ただし、アタシは今日は機嫌が悪いからよく食うぞ」
「そうなると、先に銀行に寄る必要があるな」
俺は取り調べ室を出る。
まあ、本当はこの話で回収するべき伏線があったんですが、回収するのはまたの機会にします。
次は少し進めないとなー。