夏休み-3
あれ? なんか読者が増えてるような・・・・・・。
ま、気のせいかな。
シキはそう言うと、またテレビの方に視線を戻す。
・・・・・何のためにこっちを向いたんだ、お前は。
「まず、世界の構成から説明する」
俺の意見や疑問は一切聞く気がない、と先に宣言するような独りよがりな喋り始めだった。
まあ、余程変なことを言わない限り口なんて挟む気は無いけどな。
「世界は嘘をついている」
「どこぞの小説のあら筋だよ・・・・・・・」
あ、ヤベ。口挟んじまった。
「世界の9割は、残りの1割に嘘をついている。嘘といっても簡単なことだ。常識という嘘なんだからな」
「・・・・・意味分かんねぇーよ」
「世界には、オカシナコトが溢れてる。この言い方が、どんな人間にも一番伝わる」
世界にはオカシナコトが溢れてる・・・・・・・・・・・・・?
例えば、ファミレスでデザートを異常な量食うとか片手で人間を投げるとか、そういう事か?
でも、それだとあくまで個人の隠し事で、世界ぐるみの嘘とは言えないような・・・・・・・・・。
「考え方を広げろ。世界にアタシみたいに異常な隠し事をしている人間が沢山いる、という風にな」
・・・・・・・ああー。
つまり、シキみたいな怪物が世界には溢れているけど、そいつら怪物はそれを隠しているって事か。
ん? でもそれだと、
「オリンピックとかってどうなってるんだ?」
世界単位でやる運動会ことオリンピックは、結構な国が参加してる。
代表者はそこまで多くないけど、その代表者を決めるまでに予選があって、その予選には結構な選手が参加してるだろうから・・・・・・。
オリンピックは実は世界単位でやる怪物の運動会だったのか、って話になるような気がする。
「説明聞いてたのか? 通常は隠しているんだ。競技の時だって、それは変わらない」
「じゃあ、いつ変わるんだよ」
「自分の命が危うい時、怪物と出会った時」
それは・・・・・・確かに。
シキは黒い虎が出てきた時に俺を投げたわけだし、デザートは・・・・・餓死寸前だったとかなのかもしれない。
「ところで、何でそんな話を俺にするんだ」
「お前が裏側にきたからだ、小月」
シキはこちらを向き、
「お前は不運な偶然のせいで、裏側に無意識のうちに足を踏み入れた。その状況をしっかりと理解してもらうためにわざわざ説明をしている。いいか、小月。一度でも世界の裏に足を踏み入れた人間は一生世界の裏に縛られ続ける。いかなる事があってもだ」
忠告するように、静かに言いつけた。
何故だか、俺はこの台詞を聞き逃す事が出来なかった。別に背筋に悪寒が走るとかそういうんじゃない。
ただ、誰かの実体験を語られているかのようだった。
それは多分、―――――――。
「白髪の少女、あれの事がまだ記憶に残っているか?」
俺が無駄な考えを起こしてるうちに、シキは話題を少し変えてきた。
今一番、俺が興味があることに。
「アイツは、一体何なんだ?」
白黒の俺の精神世界で出逢った白髪の少女。
あれは自身の事をハリゾラコヅキとは答えたものも、その前に一応と付けた。
さらには、俺の聞き間違いでなければ、シキはアイツの事を魔神と言った。
一体、白髪の彼女は何なんだ?
「あれは、魔神だ」
「魔神って何だ? ゲームとかで出て来る魔神でいいのか?」
「それについては、また別の機会にしてくれ。それを説明するのにはアタシは不適任だ」
シキはそう言いながら視線を少し逸らす。
「魔神と言われたあの白髪少女は、約8年前に失踪した」
8年前・・・・・・ちょうど俺が悪夢を見始めた時だな。
「まあ、正確には死亡だが」
「死亡!?」
失踪と死亡。どう考えたって割合あわねぇーぞ。
「ああ、死亡だ。だが、実は失踪だったんだ」
「・・・・・・死体が偽装だったのか?」
「いいや、死体はしっかりとあった。ただ精神と魂が無かったんだ」
「精神と魂?」
「幽体離脱っていうやつだな。体を無傷で死なせてしまう代わりに、精神と魂はしばらくは無事なわけだ」
体を無傷で・・・・・・・・・・・・・・確か、兄貴は身体に外傷が一切なくて、死後硬直すらしなかった。それはもしかしたら、精神と魂は無事で、実は死んでなかったから・・・・・なのか?
ともかく、魔神の死に方と兄貴の死に方が似てる・・・はず。
「その魔神の精神と魂は見つからなかったのだが、昨日、お前の精神の中でアタシが見つけた」
昨日、という単語ついでに言っておくと、実は今日は俺とシキが出逢った次の日なのだ。
「お前は、爆弾を抱えている」
「は?」
シキの・・・多分、比喩表現に俺が唖然とする。
意味分からない。爆弾?
「魔神は、世界の裏では指名手配犯と同じくらい危ないものだ。それを身の内に抱え込んでいるお前を、爆弾を抱えてる、と表現しないでどうする」
「それは・・・・・最悪だ」
「確かに、最悪ではあるな。いつ爆発するか、どういう風に爆発するかが分からない爆弾を抱え込んでいるからな」
いや、俺はそういう意味で言ったんじゃ・・・・・って言っても無駄か。
「一応、保護してくれるような組織はある。アタシからも頼んでみるが・・・・・お前は本格的に裏に足を踏み入れることになる」
「それってどのくらいヤバいんだ?」
「テロ組織に入るくらいにヤバい」
それは、確かにヤバい。
でも、なんか話のノリでわかるけど、強制だよな。俺に拒否権はなさそうだ。
「でもまあ、闇討ちされるよりはマシだろうな」
「保険感覚で入っていい組織でもないぞ」
「構わないさ」
別に俺にとっちゃどうでもいいことだ。
それに、俺になにか仕事をさせるとしても雑用程度だろうからな。
「組織に頼んどいてくれ。魔神を抱えた凡人が、組織に救いを乞いてきた、て」
どうでもいいことなんですけど、この小説って面白いですか?
正直言って、面白くないわけじゃないんですけど・・・・・・ねぇ?
程度の面白さだと思うんですよ。
まあ、正直な話、書くのが少し面倒になったんでこんな話題を振ったんですけどね。




