夏休み-2
「あ、そう言えば。シキに訊きたいことがあるんだ」
満漢全席を食い終わり、吐き終わり、夏休みの宿題でも先に消化しようかなー、と自室に向かう直前。
俺は思い出したようにシキに話しかける。
「ん? 何だ?」
人様の家だというのに、床に寝そべりながらテレビを見ているシキ。
せめて、こっちに顔を向けて話せ。
「あの白髪の―――」
「回答を拒否する」
・・・・・・・・・・・・せめて最後まで聞け。
「じゃあ、あの黒い―――」
「分からない」
・・・・・・・・・・・・ぶっ飛ばしてもいいか?
「じゃあ、あの蒼い炎は?」
・・・・・・・・ん? 今度は最後まで言えたぞ。
「あれはアタシがやった」
相変わらず視線をテレビに向けたままのシキは簡潔な言葉でまとめてくださった。
でも、言ってる意味が分からない。
「アタシがやったって・・・・・・・・・・お前、超能力者か?」
冗談交じりに俺は言うが、
「それよりもっと凄い。言い表すなら、神だ」
シキは俺よりももっと冗談が上手いらしい。
「ふざけてるのか?」
最近これが口癖になってきてる。
「冗談だと思うなら、確かめてみるか?」
シキは俺を挑発してくる。
けど、普通に考えてみろ。人を片手で投げるような奴の挑発なんて、受けたら損をするのが目に見えてるじゃないか。
だから、俺は断ろうと口を開く。
「そうか。確かめてみたいか」
だが、俺の声帯が震える前に、シキが不気味な独り言を呟く。
コイツ・・・・・・・・・・・・・・・・・人に喋らせる前にケリをつけるつもりだ。
「おいシキ、やめ――――ッ!!」
俺が喋ろうとすると、全身が蒼色に燃えた。
白黒世界の最後の時と同じだ。
「どうだ? アタシが冗談を言っていないことを理解できたか?」
誇らしげに言うシキに対し、
「いや、まあ・・・・・・理解は出来た」
俺は平然と言う。蒼い炎で燃やされてるというのに。
っていうか、熱さを感じないぞ。どういう事だ?
「命の炎、っていう言い方が一番分かりやすいと思う」
「・・・・・・・・・・命の炎?」
それってつまり・・・・・・・・・・・・・・・寿命とか命の残量っていう意味か?
「分かり易く説明する」
シキはそう言いながらも、未だに視線はテレビに向いていた。結構酷くね? 俺を燃やしてる犯人はお前なんだぜ。
「小月の生命力を蝋燭として、蒼い炎が蝋燭で燃え続けてる。さて、どうなる?」
蝋燭で火が燃え続けてるんだから、いずれ蝋燭が全て溶けて、炎が燃え尽きて・・・・・蝋燭が、俺の生命力なんだから・・・・・・・・・・・ッ!!!!
「このままだと、俺死ぬじゃん!」
「正解」
気楽そうにシキが答える反面、俺は結構ビビッてた。
いや、だって、ビビるだろ普通。死ぬんだぜ、このままだと俺。
それを分かってなのか、俺の反応に満足したのか、俺を燃やし続けていた蒼い炎が消え去った。
「アタシは、生物の生命力を削り落とす事ができる。まあ、あくまで生命力だから、時が経てば回復するんだがな。取り合えず、アタシは生命力を削り落とす事ができる。対象物に関係なしに」
生命力・・・・・・・・・なんか響き的には、尽きたら死亡って感じがするな。
「まあ正確に言うと、アタシは生物の生命力を自在に変更できるんだがな」
「んー・・・・・それはつまり、、、、、どういう事だ?」
「殺すも生かすもアタシ次第、ていう事だ」
「・・・・・・・なんか、死神みたいな力だな」
「ああ、アタシは別名【蒼い死神】とも言われたことがある」
シキはそう言うと、その蒼い瞳にやっと俺の姿を映し、
「どうせ、アイツに遭ってしまったんだ。もう裏からは逃れられないだろう。アタシが説明してやる、世界の裏側を」
書くのが怠い。じゃなくて、考えるのが怠い。
ああ、世界は何でこんなにも退屈んなんだ。
はぁー、出会いが欲しい。