出会い-1
人は夢を見る。
とある学者は夢を人の欲求の現れ、と言ったらしいが、もしその学者が生きているのなら一つ問いたい。
自分が毎回無惨に殺される夢は、一体何の欲求の現れなのかと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最悪だ」
連続2920回目の悪夢から目覚めた俺は、通算2555回言った寝起きの一言を吐き捨てた後、布団から出る。
今日は7月27日。人が地球を虐め過ぎた為なのか、俺の部屋は蒸し風呂を直火で焚いたような暑さを保ちながら、更にヒートアップしていた。決して俺が地球を虐めた訳では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なくもないか。
は~、暑い。汗でTシャツがビショビショだ。最悪だ。
俺は、Tシャツを脱ぎ捨て、学校の制服に着替える。何故、学校の制服に着替えたかは言いたくない。つーか、大体予想はつくであろう。ほ、が付く学生生活の最悪の敵の一つであるもののせいだ。
俺はワイシャツのボタンを閉め終わり、脱ぎ捨てたTシャツを持って部屋を出る。
俺の住処は3LDKのマンションの一室。家族全員が住むには狭いであろうが、両親は海外に居て、兄貴が2年前に死んだ今、義妹と二人で暮らすには丁度良い広さだ。
部屋を出て、短い廊下の途中にある洗面所に行き、洗濯機にビショビショのTシャツをぶち込み、そのまま廊下の突き当たりに在るドアを開く。
そこはまあ、リビングとダイニングとキッチンが合わさった部屋だ。
「・・・起きたの?」
「何で疑問詞を付けるんだよ」
部屋に入った途端に聞えてきた声に、文句をつける。
起きたの? って、俺が起きた事は珍しい事か?
そう思いながらも、俺はテーブルに着く。
すると、目の前にトーストとハムエッグとコーヒーが置かれる。
「今日は普通なんだな」
いつもはこれの10倍は出てくるのに。
「・・・・・・・・ちょっと寝坊したの」
分が悪そうに答える声に、俺はこう思ってしまった。
じゃあ、いつもの量はわざとなんだ。嫌がらせなんだ、と。
まあだが、普通は俺の好きなものだ。普通の朝飯を堪能しよう。
俺はトーストを齧りながら、考えを変える。
先程から俺と会話しているのは義妹の張空秋音。金髪に灰色の瞳。7年前に両親が突如帰ってきて『今日からこの子はウチの子になります』と訳の分からない宣言と共に紹介された少女だ。
俺はこの少女について、性別と容姿と年齢と誕生日のことしか知らない。
何が好きか、何が嫌いか、誰が好きか、誰が嫌いか、生まれた場所は何処なのか等、俺は義妹のことを一切知らない。
まあ、もしかしたら普通に血の繋がっている兄妹もこういう風なのかもしれない。
けどまあ、兄貴は色々義妹に尋ねていたから、全てとは言わないが、義妹について俺より知識があったのだろう。
仕方が無いだろう。俺はコミュニケーションが苦手な方だから、兄貴みたいに尋ねたりする事も少なかったし、何より俺が兄貴に何か勝てた事なんて無い。
だから俺が義妹について知らない事は仕方の無いことだ。
「・・・・・・・・最悪だ」
「・・・? 今日で補習は終わりなんだから、別に最悪じゃないでしょ」
意味が分からずに返答した義妹の言葉は俺の耳には入らない。
と言いたいところだが、完全無視は流石に可哀想なので真実を言ってやる。
「補習が終わる。夏休みを楽しもうとする。夏休みの宿題というなの地獄が待っている。イコール、最悪だ」
「ああー。そういう事」
義妹は納得したように言い、その態度を見ながら俺はコーヒーを啜る。
味は苦い。まるでこの先の俺の夏休みの過ごし方でも語っているような味だ。
でもまあ、気落ちをしても仕方が無い。
俺はトーストとハムエッグを口に放り込み、コーヒーで喉に流す。結構危険な裏技だ。
「じゃあ、行ってくる」
「あ、今日私、用事があって夕方まで家に居ないから、鍵持って行ってね」
「わかった」
俺が席を立つと同時に聞えてきた声に対し相槌を打ちながら、俺は部屋を出る。
廊下を通り、再び自分の部屋に入り、投げ捨てられたように床に置いてあった鞄を手に取り、俺は玄関まで行く。
あー、ダルい。面倒。行きたくない。
学校に行くときにどうしても思ってしまう三つの事を取り合えず頭の中からすっ飛ばし、俺は靴を履いて玄関のドアを開ける。
これが、俺の目の前に死神が現れる日の朝の事だった。
毎度毎度、文章が下手ですみません。
この小説は、相当な事(受験で落ちるなど)が無ければ消える事はありません。
文句があるなら感想欄に。