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ハーヴェイ・サテライツ  作者: 毛糸
序章【お兄ちゃんとアノ女】
4/18

四話「其々の視点と心臓悲劇」

***



――存在外の集合体。それは、リミッターが発明されてから起こりうる事となった。

 リミッターの電波は無数の人工衛星から間接的に繋がっており、その分常に微弱な電波を張り巡らしている。そして存在外の集合体、それはこの微弱な電波から生まれる「ポルターガイスト」のような事である(実際にもイレギュラーやポルターガイストと呼ばれている)。張り巡らされる電波の錯乱によって机などの日常品が自動的に動いたり、空気中に黒い気体が生まれたりもする。この現象は、決して 科学では詳細を語ることができない。

 科学では、解明されていない。



***



 錯覚なのだろうか?

――現在この視界に移る光景は。

 教室の左側に張り巡らされたガラス窓から夜の光がゆったりと差し込んでいる。月明かりが妙に眩しく感じられる中、教室の中心にヤツは居た。

「おにぃちゃん」

 禍々しいオーラを纏ったような雰囲気と表情。ギタギタに裂けるような笑み。そして、その姿と反比例するような長い黒髪は翡翠のような美しい光沢を作っている。

――右手に黒い玉。

――左手に尋常じゃない大きさの鎌。

 5才女のような外見と黒いボロボロのワンピース。

 人生経験の薄い俺には全てが受け入れられない状況だった。多分、濃くても受け入れられないだろうが。

「おにぃちゃん?どーしたの、そんな顔して?」 へへへ、と笑っている。

 俺は言葉を出す事もしず、ただ少女の鎌からツーっと滴る赤い液体を眺めている。

「血……」

「どーしたの?おにぃちゃん。顔が怖いんだよー、エレン怖いよー」

 ソイツは馬鹿にしているように、身長では下の差を縮めるように、上からモノを言った。

「誰……の――だ……」

「え?聞こえないよ?エレン何も聞こえな――」

「誰の血だよって聞いてんだクソチビッ!!」

 持っていた学級日誌を強く地面に叩きつけ言うと、その上に乗っかっていたカギがジャラリと床を滑った。三年二組の札を包むプラスチックにヒビが入る。

「お、怒らないでよ」 目に涙を浮かべた暗黒少女。

「――……うぐ、ぐずぁ、うぅ」

「うるせぇよ。誰の血だって聞いてんだ。お前が誰だかは知らないけど、名乗る前に質問に答えろよ、――その鎌の血は誰の血だ?」

「うぐ、ひっく、あう、う……ぐぅ、ふ、ふふ、ふふふふふふふ」

 怪訝どころではない。ソレを越えた闇、漆黒の表情が少女を包み、その口で――


「――さぁ、誰のかなぁ?」

 宣戦布告の烽火を上げた。

「――解った。お前が如何しても言わないってんなら、倒した後に聞いてやるっ!!」



***



 僕が職員室で見たのは異常な光景だ。

 石則先生から渡されたパソコンのディスプレイには学校の地図が載っていた。そこの三年二組に「NI/100@P」とかかれた丸い反応があった。この時点で異常だと思う。

 NIというのは「No」「Identity」の略称系で、日本語で言うならノーアイデンティティ。意味は、存在理由が見つからない、というもの。これは「存在外の集合体」つまりポルターガイストの事を表している。

 その次のスラッシュ100というのは、そのポルターガイストのレベル。全部で120レベルある中の100は相当なものだ。どれくらいかと言えば、爆発が起きたりその場所なら殆んどの空間が淀んで見えるくらいのポルターガイストレベル。

 そして最後、@~という文字。これはそのポルターガイストの種類を指す。このアットマークのPは……Person。

 つまり――人だ。これは、人のポルターガイスト。危険度100の人間が生まれている、という事を示していた。


「川上先生ッ!!」

「はっ、はい!?」

 考え事をしていたら後ろから呼ばれてしまい、僕は背筋を伸ばして答えた。

「ちょっとコレを見てくれ!今分かったんだが――」

「な、なんですか?」

 後ろを振り向けば、さっき慌ててノートパソコンを見せてくれた石則先生が居た。またパソコンのディスプレイを此方に向けてくる。

「ここだよ、この「NI/100@P」って部分、良く見てくれッ!!!!」

「……?」

 暫く、とはいっても一分ほど睨めっこすると……。

 ん?何だコレ?エ?え?エぇ?……三年二組の地図の中に居る「NI/100@P」の周りに円を書くように薄い@が沢山……。


沢山。 沢山沢山沢山沢山沢山沢山沢山……。


 その@の横には、必ず「O.E」の英文字。意味が解らない……?

何だ……、コレは……。何だ……なんなん……ん?……――まさかッ!?


「ふざけないで下さいッ!!何の悪戯ですかコレはッ!!!!!」


「悪戯……なんかではない……――事実だ」

 生まれて初めて大声を出した。

 職員室の大騒ぎがぴたりと止まる。

 ……。こんなの、あってはならない。絶対に、確実に、あってはならない。

「なんで……どうして……、何故この学校に戦争と匹敵する程悲惨な英字があるんですかッ!」

 O=オール。全ての物質が発生している場合に現れる英字。

 E=エラー。人工衛星の操縦が不能な意味を指す英字。

 「存在外の集合体」が発生するのは沢山の人工衛星から繋がるリミッターが存在するからである。という事は、そのリミッターを悪用する事で電波的に繋がっている人工衛星をハッキングすることも可能。

 だからこれは、ハッキングした人工衛星を操って電波を操作し、「@O」つまり全てのポルターガイストを出せる力を作った、と言うわけになる(何度も言うがポルターガイストは人工衛星から繋がる弱い電波で稀に発生するため、操られるとその稀が常になってしまう)。


 要約すると「人工衛星の電波で生まれるポルターガイストを自在に発生させれる」という事だ。

その@が囲んでいるのは「NI/100@P」。三年二組に居るポルターガイストで生まれた人間。 

 つまりは、そこに居る人間が「ハッキングの犯人」であり、「人工衛星の電波を乱した張本人」であり、「存在外の集合体(ポルターガイスト)を自在に出来る事になった超人」であり、「今世紀最大の危険生物」だった。


「これじゃまるで……この三年二組にいるポルターガイストで発生した人間が《神》みたいなモノじゃないか」


恐怖でそれ以上は口……いや、脳自体が思うように機能しなかった。



***



私と苅野さんはあの時聞いていた。偶然職員室で出会って偶然話しかけられて偶然気が合って偶然そこで話し合っていた時、二人の生態系担当の教師が慌てて会話をしているのを、聞いてしまった。

「こ、これって、まさか――」

「あぁ、存在外の集合体……――イレギュラーだッ!」

「で、でも、ここの反応……って、まさかッ!!」

「そうだ。調べた所だが、三年二組の教室のカギがまだ返されてない!誰かが残っているという事だ!そして、この反応場所は」

「――三年、二組……です」

ソレを聞いた瞬間、心が不安になった。苅野さんと話をして、三年二組に誰がいるか解ったから……。い、いや、違う。別にアイツの事なんて如何も思ってない。……と思う。

でも、そんな事思う前に私の足は動き始めた。暖かいから職員室の隅っこで隠れて話をしてた私が。

先生の騒ぎにまぎれて職員室を出た。

リミッターを解除して、通常よりも感情的になっているのを押さえるように学校の階段を上がろうとした時、そこには苅野さんが既に立っていたんだ。

苅野さんは言った。

「一人で何処行くのかなぁ、あははははぁー。――私だってとっくに心臓を捨ててるんだよ?――木崎さん」

生体系の先生が取り乱すほどのイレギュラー、つまりポルターガイストが起きてる。それは助けるために怪我するかもしれない。

だから私はその時言った。

「心臓は言い過ぎかもね?」

二人で心が通い合い、二人であの三年二組に残っているあのバカを助けるつもりだった。


だったのに。

――神様、教えてください。


――何で……。


――どうして……。


「し、心臓は大袈裟って……はは………………――違うんだね」


――どうして、こうなるの?


三年二組の教室で悲劇は起きた。

読んでくれて有難う御座います。


今回の失態は、詰め過ぎた事と行き成りすぎた事。

今回の成功は、これて次回が面白くなってくれるかもしれない事。


ホント、急展開ですが次回も読んで下さる事を願います。

愛読有難う御座いました。





存在外の集合体、AIM拡散力場と殆んど変わらない気が。

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