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ハーヴェイ・サテライツ  作者: 毛糸
序章【お兄ちゃんとアノ女】
3/18

三話「黒い何かと死の予感」

***



 異常なまでの暗闇だった。

「――殺さなきゃ」

 そこに紛れる一人の少女は(ささや)いた。暗闇で見えない細い手足は体操座りをしている。

「殺すの……」

 古代文字を読み上げるようにカタコトとして、魂を吸われたかの様に無感情な声。

「ふふ。それじゃあ……行くよ」

 裂けるような笑みには純粋さを微塵も入れない。何処から見ても悪の表情。

「待っててね」

 5歳児のようなその少女は小さく呟く。

「――お兄ちゃん」

 刹那、少女の身体は虚空へ消えた。



***



 授業中、縦肘を付いてぼーっと授業を聞く。

 今日一日は色々あった。3時間目終了直後、女に襲われて(勿論肉体的な意味で)俺の周辺はダンボール化。その次の4時間目には隣の天然女子に声かけられて勘違いされる。そして昼休みは無駄にドキドキしてしまい、その後の5時間目はハーヴェイやサテライツについての説明を聞いて、現在6時間目も終了に差し掛かっている。

「はぁ」

 帰ったら寝たい。とってもとっても眠りたい。さっき放課十五分の仮眠をとったにも拘らず眠いのだ。精神的にも肉体的にも酸素を消費しすぎた。ちなみに眠くなるのは酸素が少なくなってるかららしい。

 6時間目は生体物理だ。教室で気軽に出来る《力の変更》を用いた対ハーヴェイモード戦闘時対策法。一度リミッターを解除すれば力を自在に調節できるけど、出しすぎると体が壊れる恐れがあるらしい。それについての対策法と攻撃のガードの仕方を一人の男子生徒を実験体にして黒板前でやっているが、俺には見る必要がない。

 なにせ、俺がリミッターに触れるとソレの電源が切れてしまうのだから……。ケータイに磁石を当てるのと同じ原理で、触れると消えて離すと元に戻る。つまり、俺は力の変更以前に変更する機械を持てない。故、学んでも意味が無い。

 あれ……じゃあこの時間俺寝ててもいいよな?うん。寝よう。

 目を(つむ)れば、割と直ぐに意識が遠のいた。



***



――おにぃちゃん。

「――ッ!?」

 背筋の凍るような感覚で目が覚める。不意に周りを拝見(はいけん)するが、誰も居ない。

「……授業終わったのか」

 ぼそりと呟く。窓側からは夕暮れの景色が(うかが)えて、誰も居ない教室を黄昏(たそがれ)に染めていた。俺の席は黒板を前にして一番左の上から四番目。その場所から見る教室の景色は俗に言うロマンチックというやつだ。ここに女の子が居ればすっごく嬉しい限り――、

「おはよぅ!」

「――ッ!?」

 本日二回目のビクゥ!

 背中をトントンと二回叩かれ、誰も居ないと思っていた自分の心境を打ち殺した。冷汗が出る前に咄嗟(とっさ)で後ろに振り返ると、

「……――あ、苅野(かりの)」 「せいかーいっ」 ソイツは人差し指を立てながら元気に言い出した。

 右半分が夕日に染まっていて栗色のボブヘアーが更なる光沢を生み、それがキラキラと星のように……うん、要約すれば可愛いって事だよバカヤロウ!(ツンデレ気味に)。

 いや、美男子ならまだしも俺がツンデレ風に言うと汚れるだろうが。まぁとりあえず、

「何で居んの?」 「寝顔を見つめてた」 ドキッ!

「あ、今ドキっとしたでしょー?」 からかいの目線が「憎たらしい」と書いて「可愛い」と読める子だ。

 し、してないって!と嘘をつくと「ホントかなぁ?」と言われたので、本題(というか疑問)を尋ねる。

「可笑しいだろう。なんで俺が寝てるのに苅野までココに居るの?ひょっとして苅野も寝て――」

 言い終わる前に、苅野は純粋な笑みを浮かべながら、

「いやぁー、私日直ですし」

 心拍数上昇中につき体内温度も上昇した。言い返そうとするが口が(もだ)えて言葉が出ねぇ。

「あっ、い、いや、その……それもからかいの一つですか」

「いえ、コレはマジにごぜぇまっすー」 

 良く見ると左手には黒板消しがあった。そして、苅野が今座っている机には学級日誌が置かれている。

「え、ま、え、えええ……。もしかして、こんな時間まで俺起きるの待ってたとか」 「うん」

 即答だった。

 ソレを聴いた瞬間に苅野の株が上昇する。

「ご、ごめん……」 素直に謝らないとな。

「いえいえ、気持ちよく寝てたみたいだからさー、起こせなかったんでっす。逆に起こさなくてゴメンナサイですよー」

 苅野は笑顔を崩さずにニコニコと言ってみせる。

「あ、うん。別に俺はいいけど……ホント、ごめん」 席を立って、ペコペコお辞儀。

「あーさっちん」

 何かを言いたそうに、人差し指で頬を掻いているので「え?」とだけ言うと、

「ゴメンよりアリガトだよー、やっぱり」

「あ、そうだね。ゴメン」

「アリガトですよ」

「あ、うん。起こしてくれてありがとう」

 苅野は「それでよしっ!」と親指を立ててウインクをした後、「では、拙者(せっしゃ)は退散する!」とか言いながら光の速さで教室から出て行った。

 ふと辺りを見上げると、黄昏だった教室の景色は何時の間にか暗くなっている。時間の流れが春になりかけていると思った。二月の終わり頃。


「いや、まて。日直の仕事してけよ」

 学級日誌の側においてある教室のカギは、薄く夜光を反射させる。



***



「こ、これは――ッ!?」

 先ほどまで生体物理の授業をしていた石則(いしのり)先生が職員室の席に戻り、隣で大きな声をあげる。

「如何したんですか?石則先生」

 隣に座っている同じく生体系担当の僕は静かに声をかけると、

「不味いぞ……。キミ、生体心理担当だろう?なら解る筈だ。ちょっとコレを見てくれないか!?」

 バッ!と勢い良く小型ノートパソコンを渡され、そのディスプレイに目を通すと、


――そこには、あってはならない反応があった。


「こ、これって、まさか――」

「あぁ、存在外の集合体……――イレギュラーだッ!」

「で、でも、ここの反応……って、まさかッ!!」

「そうだ。調べた所だが、三年二組の教室のカギがまだ返されてない!誰かが残っているという事だ!そして、この反応場所は」

「――三年、二組……です」

 僕が呟くと、石則先生は掌で机を叩き大声を張り上げる。

「救急隊と警察を直ちに呼んでくれ!これは大事態だ!たしか、授業中に黒板を見た所日直は苅野だったはず!彼女はソレほど力の能力が無い、下手したら――死ぬッ!!」

 職員室中の先生は大騒ぎで動き出す。何かの祭りがあるように、何か災害があったように、真剣な眼差しをしていた。

――その中に、紛れる様に。


――二人の女子生徒が職員室を出て行ったように見えた。

 僕が後を追うように職員室を出るが、そこには誰も居ない。


誰も、居ない。

読んでくれてとても感謝しています。

低文章力で表現+テンポに無駄がありますが、必死に執筆しているか細い毛糸です。

内容をちょっと続きモノ風にして、本編に突入させてみました。

ラスト、まさかの急展開はちょっと焦りすぎた感があります……。


それでは、愛読有難う御座いました。

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