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ハーヴェイ・サテライツ  作者: 毛糸
一章・Ⅱ【大会と種目】
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七話「意味とありがとう」

 徐々に、体の傷が癒えていく。

――サテライツは人工衛星。ハーヴェイは力ある者。コレに共通するのが私たち。人工衛星の電波から生まれた力ある者。決して「存在外の集合体」なんかじゃない。同じようで違うの。だって……――力を持ってるんだもの?

――お兄ちゃんは、私たちと同じ。

 あの少女が言った言葉の意味が深々と胸に突き刺さる。ハーヴェイサテライツという生き物。それはきっと、俺のことなのだろう。

 だから、俺にはリミッターが使えなかった。人工衛星で生れた「人じゃない生き物」なのだから。

――その子がテメェを仲間だとか同じだとか言ってたのなら……、テメェも同じ人工衛星で生まれた生命体って事じゃ……?

 木崎の言っていた事は鋭かった。俺は、人間じゃない。人間のようで違う。心臓を一突きしたあの少女と同じ生き物。ハーヴェイサテライツ。

 類は類を呼ぶ。同じ生き物のあの少女は、俺に警告する為に現れたのだろうか。

 俺は――人じゃない。

 人じゃないから、今俺は立っている。人じゃないから、立ち上がって金髪の男を睨んでいる。普通なら病院送りの怪我なのに、俺は人じゃないから生きている。

「お……おい。アヤメちゃぁん?ななな、なんだよコイツ?怪我してねぇ!いや、してたのにしてねぇ!」

「うっせーよ。さっさと殴れよ。殴ってみろよ。殴って俺を殺してみろよ?」

 一歩、一歩。近付いて行く度そいつは後ろへ下がっていき、五歩歩いた時。ポケットから玉いれに使う白い玉を出して振りかぶる。

――おにぃちゃん。強く投げるんだよ?強く、強くね。そうすれば、機械なんかよりも強い力になるんだ。

 何かが脳裏を過ぎり、憎しみを込めて、強く投げる。

 右手から離されたソレは、人がやったとは思えない速度で風を切り、ビュォ!という音を立てて真っ直ぐに金髪の方向に飛んでいく。

「うそだろうそだろおい誰か助けてくれよ!何でリミッターが使えないんだ!?おい!答えやがれバケモノ――」

 ドゴンッ!! 凄まじい物音と同時に、砂埃が宙を舞った。

 ソレが治まると、金髪の男は腰を抜かし、ガクガクと顎を震えさせているのが分かった。

 それを伺ってから、一言。

「おいお前。降参したほうがいいんじゃねーの?」

 男は黙って土下座をした。



***



 念の為体の調子を見てもらおうと保健室の中で見てもらったが、なんとも無いらしい。安静にしろといわれていたが、落ち着かないのでベットからゆっくり起き上がる。

――どうして金髪君の体に当てなかったの?

 脳裏に過ぎる言葉に「当てる必要ないだろう?」とだけ言えば、もう返事が帰ってくる事はなかった。その声の主がこの前襲ってきた少女だとは言うまでも無く分かった。そんなのが脳裏に聞こえてきて奇妙じゃないのか?と聞かれれば案外そうでもない。人間じゃないからだろうか。

「はぁ」

 結局その後、木崎に大声で怒られて(理由が本当に分からない)、豊ヶ原が泣き喚いて(理由が本当に分か以下略)、試合にならなかったので中止になり、上位二名をクジで決めるという担任の大胆な後発により絶滅危惧種フリョーと椎名君という生徒が準決勝に進む事になった。二人共やる気が無さそうだったのは言うまでも無い。

 でも、これで良かったと思っている。木崎が案外普通に接してくれたし、豊ヶ原もごく普通だったし。てっきり軽蔑されたりするんじゃないだろうか?と思って聞いてみたけど、「経汰は人間よ。私がそういってるんだから間違いないわ。もし違っても、そんな事で軽蔑するわけ無いじゃない。むしろクヨクヨ悩んでいる経汰に軽蔑するわ」という答えが返ってきたので礼を言った。

 ちなみにあの金髪フリョーには適当に優勝すると言っただけらしい。むしろ俺をボコボコにするとは思って無かったらしく、謝ってくれた。


 そんなこんなで、馬鹿みたいに張り切った学年序列決定戦は幕を閉じる。

 ドラマのように主人公が活躍する事はなく、それでいて何処か不思議な大会だった。

 保健室から出て、自分の教室の前まで向かう。

 一年二組の自分のクラス。ドアに手をかける。

 皆は、こんな俺を受け入れてくれるんだろうか?

 張り巡らされていたカメラから見ていただろうから、きっと知っているはずだ。

 でもまぁ……嫌われてもやって行けるだろう。どうせ三年だし……。

 そんな事を考えながら震える手でドアを開ければ、想像とは逆の光景が広がっていた。

 悩んでいた自分がアホらしく感じてしまう光景が。


『経汰、おめでとう!』

 黒板には、汚い字で「MVP里堆」と大きく書かれていて、木崎を中心に鳴るクラッカーと拍手。笑顔の皆は、俺を優しい眼差しで見てくれている。


「ありがとう」

 頬から流れる涙は、思い出として胸に焼きつき、離れないだろう。


ご愛読有難う御座います。

本日二度目の更新、毛糸です。


学年序列決定戦を無理に終わらせました……。最初から早く終わらせる気でいたのですが、長く続きそうになってしまい……終わらせざるを得なくなりました。

でも結構まとめれた気もしないでも無いのですが……(笑)

今は次の話のプロットを作成中ですので、もっと確りした話を作ろうと思っています。


それでは、有難う御座いました。

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